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日本銀行は、円滑な資金決済を確保することを通じて、金融システムの安定に貢献することを、その目的の一つとしています。この目的を達成するための政策が信用秩序維持政策(プルーデンス政策)です。
金融システムは、経済主体間における資金やリスクの移転・配分を行うための仕組み全体を指し、様々な金融機関や金融資本市場、決済システムから構成されています。企業などの経済活動に必要な資金は、金融機関や金融資本市場を経由して供給され、経済取引に伴う資金決済の多くは、金融機関を相互に結ぶネットワークを通じて行われています。
経済が安定的に発展し、「お金」の受払いや貸し借りが安心して行われるためには、そうした資金決済・金融仲介機能の担い手である金融機関がリスクを適切に管理し、安定的に経営を行っていく必要があります。万一金融システムが揺らぐことがあれば、金融政策の波及メカニズムに支障をきたすおそれもあり、金融システムの安定は、物価の安定を実現していくうえでの重要な条件ともなっています。
日本銀行は、「金融システムの安定」を図るため、日本銀行と当座預金取引を行う金融機関の業務運営や各種リスクの管理状況、自己資本の充実度などの的確な把握に努めています。具体的には、当座預金取引先である金融機関との契約に基づき、当該金融機関に立ち入って行う考査や、金融機関から提出された各種経営資料の分析や役職員へのヒアリングを通じて行うオフサイト・モニタリングという手法を用います。
日本銀行は、こうした活動を通じて得られた情報を踏まえ、必要に応じて金融機関にリスク管理や経営管理の改善・高度化を促します。
また、金融高度化センターによる各種セミナーの開催や調査・分析資料等の公表など、リスク管理・経営管理手法の改善やビジネス環境の変化への対応に向けた金融機関の取り組みを幅広く後押ししています。
資金繰りに問題が生じた金融機関に対し、資金供給を行う先が他にいない場合、日本銀行は、一定の条件のもとで、「最後の貸し手」としての機能を発揮します。当該金融機関に必要な資金を供給することで、個別金融機関の支払不能などの影響が、不安心理や取引関係を通じて他の金融機関や金融市場、決済システムに次々と連鎖・波及し、金融システム全体が機能麻痺に陥ることを回避します。
マクロ・プルーデンスとは、金融システム全体のリスクの状況を分析・評価し、それに基づき制度設計・政策対応を図ることを通じて、金融システム全体の安定を確保することをいいます。日本銀行は、こうした分析・評価の成果を「金融システムレポート」などにより公表し、金融機関等との対話に用いているほか、実際の政策運営にも役立てています。
また、海外の中央銀行や銀行監督当局と連携・協力し、国際金融システムの安定確保にも取り組んでいます。具体的には、国際金融システムに潜むリスクや脆弱性の捕捉、国際的に合意された規制の着実な実施とその影響評価、各国の監督手法に関する情報共有などに取り組んでいるほか、気候変動が金融システムに与える影響を巡る国際的な議論にも積極的に参画しています。
いずれも、日本銀行が「信用秩序の維持に資する」という役割を果たしていく観点から、金融機関の業務運営や各種リスクの管理状況、自己資本の充実度などについての実態を把握するために行う調査。このうち、考査は、当座預金取引先である金融機関との契約に基づき、当該金融機関に立ち入ったり、リモートで行う調査であり、オフサイト・モニタリングは、金融機関から提出された各種経営資料の分析や役職員へのヒアリングを通じて行う調査になります。
金融高度化センターは、考査・オフサイトモニタリングと並ぶ金融機関との対話チャネルとして、経営やリスク管理の高度化のほか、気候変動問題への対応、SDGs/ESG金融、地域活性化支援やデジタルトランスフォーメーション(DX)等、金融機関が直面する経営課題への取り組みを支援しています。