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2025年6月15日 (日)

改正給特法 衆院修正から抜本的定数改善に

改正教員給与特別措置法(給特法)が11日、参院本会議で可決・成立した。改正案を巡っては「これでは『定額働かせ放題』は解消されない」という批判が根強いが、そもそも定額働かせ放題の解消を目指した法案ではなかったのだから仕方ない。

それでも、いちるの望みはある。衆院で自民・公明・立憲民主・日本維新の会・国民民主の5党共同により、法案が修正されたことだ。このうち中学校35人学級は既定路線だから、法的裏付けができた以外はどうでもいい。注目すべきは、1カ月時間外在校等時間の削減策が列記された点にある。

改正法附則新3条は、在校等時間を2029年度までに平均月30時間程度に削減することを目標に掲げた。昨年8月の中央教育審議会答申が掲げた「20時間程度」には及ばないかもしれないが、むしろ現実的な数値だろう。もっとも、そんな「現実」に近づくにも相当な困難が伴う。

同条では1教員1人当たり担当授業時数の削減2教育課程の編成の在り方の検討3教職員定数の標準の改定4支援人材の増員5不当な要求等を行う保護者等への対応支援6部活動の地域展開を円滑に進めるための財政的な援助7他に必要な措置――を行うと明記した。これを単に「30時間」のための措置にとどめず、すべて2と連動させた3につなげなければならない。

義務標準法では、学級規模ごとに「乗ずる数」の係数を規定している。国会論戦では、乗ずる数の改善を主張する意見も相次いだ。しかし文部科学省と財務省のプロパーにしか分からない小数点以下3桁の数字で増員しても、何に使われるかは自治体の裁量に任される。しかも毎回、係数をどう引き上げるべきかの攻防にさらされる。

いま検討すべきは、学級規模を基にした算定基礎そのものの抜本的見直しではないか。例えば小学校35人学級では、既に平均で▽不登校0.7人・不登校傾向4.1人▽学習・行動困難3.6人▽日本語課題1.0人▽特異な才能0.8人▽経済格差12.5人――という多様性が進んでいる。1学級1担任という形態自体が限界を迎えているのであり、持ち時数削減や教科担任制、1人1台端末の導入などで対応し切れるものではない。

次期学習指導要領を審議している中教審の教育課程企画特別部会(企特部会)が学校と児童生徒の「2階建て」で教育課程の柔軟化を検討しているなら、なおさらだ。通級や日本語指導に振り向けた定数を通常学級に拡張し、対象児童生徒の増加に伴って機械的に定数が増加するような算定方法にすべきである。

24年の年間出生数は70万人を割り、もはや少子化をとどめることはできないことが誰の目にも明らかとなった。外国ルーツの子どもを含めて「日本人」を増やすとともに、一人一人の能力を最大限に引き上げて「総和」を向上させなければ国は持続できないところまで来ている。そんな時代に備えた定数の在り方を、今のうちから検討しておく必要がある。

そのための足掛かりが附則新3条にある、と前向きに捉えたい。ただし、附則だけを根拠にするのではいけない。中教審では附則を出発点として、次期指導要領と連動させた本格的な条件整備論議に着手すべきだ。

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2025年6月15日 (日) 社説 | 固定リンク
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