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2025年12月 4日 (木)

【池上鐘音】統計の意識

▼大学進学率に使用される18歳人口(3年前)の集計から、特別支援学校中学部の卒業者を除いていた――。毎日新聞が1日付朝刊トップで特報すると、木原稔官房長官が同日午前の会見で「技術的な問題」と説明。松村洋平文部科学相は2日の定例会見で記事を書いた記者の質問に「不快な思いをされた皆さんにはおわびしたい」と述べ、見直しを指示したことを明らかにした▼記事では有識者の「行政担当者の自覚なき差別意識のようなものが見え隠れする」というコメントを引用していたが、若干の違和感を抱いた。文部科学省には「前例」があったからだ▼2008年に学校基本調査の詳報をピンチヒッターで執筆していた時、どうしても大学・短大進学の計算が合わなかった。原課に問い合わせたところ、高卒の入学志願者から通信制課程が除かれていることが分かった。08年度で1万人を超えており、これを加えて再計算すると全体の合格率を1ポイント押し下げるほどだった▼確かに昔は統計上、除外しても影響はない数値だったのだろう。しかし当時はサポート校の登場を契機に、通信制からの進学者が増加していた。進学目的で積極的に通信制を選択する中学生もいる現在なら、なおさらだ▼かつての盲・ろう・養護学校も、18歳人口が多い時代には無視できる数字と判断されたに違いない。しかし特殊教育から特別支援教育に移行した今、文科省も受け入れ側の大学に発達障害を含めた合理的配慮を求めている▼問題は統計調査がそうした時代の変化についていけなかったことだが、無理からぬ事情もある。旧文部省でも調査統計の担当課は格が高くなかったから、課長が異動で初等中等教育局や高等教育局の重要ポストに異動しない限り変化には気付けない。今は参事官付(室)であり、課ですらない。おまけに政府の基幹統計(旧指定統計)は調査方法を変えるにも総務省との調整が必要で、勢い前例踏襲が続くことになる▼いずれにしても調査報道で問題が明らかになるのは、いいことだ。そうでないと担当者ですら、問題の所在に意識することもない。もっとも「結果がおかしい」と難癖をつけて統計改革を訴える政権もあるから、注意は必要だが。

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