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2024年9月18日 (水)
「天笠検討会」論点整理(1) 指導要領の改訂諮問前から現場の声を
文部科学省の「今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会」(座長=天笠茂・千葉大学名誉教授)が17日の最終会合で、論点整理案を大筋で了承した。成案が出れば、いよいよ中央教育審議会に対する学習指導要領の改訂諮問が射程に入ってくる。
この「天笠検討会」は前回改訂(現行指導要領)に際しての「安彦検討会」(育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会、座長=安彦忠彦・名古屋大学名誉教授)に相当するが、違いも多々ある。安彦検討会が教育課程や学習評価の研究者9人で固め精緻な議論を重ねたのに対して、天笠検討会の10人は教育行政の研究者や教育長、教員出身の中教審会長へと幅を広げたことだ。
そうした委員の構成は、検討会の成果にも反映したと言えよう。安彦検討会の論点整理は学術的にも裏打ちされた提言であったため、かえって中教審ではそのままの形で受け入れられなかった。2014年3月の論点整理から諮問まで約8カ月かかったのも、次期指導要領にどう落とし込むか文科省内でも慎重な検討を要したためだろう。
これに対して天笠検討会は、委員や外部有識者のヒアリングを基に出し合った「論点」を「整理」したものだ。裏を返せば各論点は必ずしも突っ込んだ議論が行われたわけではなく、むしろ論点「羅列」に近い。安彦検討会のような文章ではなく、ほぼ箇条書きに終始しているところにもそれが現れている。
そんな検討会の性格は、中教審の審議にも影響すると予想される。今回は改めて行政的検討を行う必要なく、そのまま諮問の基にできよう。政治状況にも左右されるが、当初の予定通り11月諮問さえ見えてくる。それだけに前回と同様に教育課程企画特別部会が開かれるとしたら、生煮えの論点に一から議論を深めなければならないはずだ。
そんな各論点については今後、詳細に論じていきたい。まず注目したいのは、論点整理案に「中央教育審議会等における改訂の審議の最中においても、資料を学校や教育委員会にとって徹底的に分かりやすいものとしたり、審議状況をウェブサイト・動画等で積極的に発信したりするなど、改訂プロセス自体を通じて子供や保護者等を含む多くの関係者を巻き込み、学校や教育委員会と趣旨や内容を共有しつつ、浸透を図っていくことが重要」という一文が入ったことだ。
天笠検討会の論点整理は、現行指導要領の延長線上に次期指導要領を描くことを基調としている。しかし実際には趣旨やねらいが必ずしも正しく教育現場に周知されず、授業改善は「道半ば」だとみている。だから先のように、審議過程から関係者を巻き込もうとしているわけだ。
それを「浸透」の方策にとどめてはいけない。むしろ現場や学術界から積極的な提言を行って、次期指導要領に反映させる努力を行うべきだ。しかも諮問を待つのではなく今から、である。
本社が2年前に『学習指導要領「次期改訂」をどうする』(ジダイ社)を上梓したのも、そんな下からの議論が教育界こぞって巻き起こることを期待してのことだった。しかし現状では一部の意識的な人たちを除いて、多忙化に追われるほとんどの現場は口を開けて改革が「降ってくる」のを待っているだけではないか。
論点整理に従えば現場の裁量は拡大されるはずだし、示された以上に拡大する必要さえあろう。しかし現場が判断停止状態に陥っていては、ますます趣旨の実現に格差が拡大するだけだ。
幸いにも、前回改訂時の豊かな教訓がある。その反省を生かして今度こそ現場の主体性・創造性を生かし、子どもたち一人一人に将来社会で活躍できる資質・能力を確実に身に付けてもらうための指導要領づくりが求められる。正式に決まったものを後から批判したり、淡々と無批判にこなして自縄自縛したりを続けていては「日本の学校教育は更なる高みを目指」す(8月27日の中教審答申)ことなどできない。
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2024年9月18日 (水) 社説 | 固定リンク
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