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2023年7月29日 (土)

文科省の新体制 学校教育の一体改革に準備を急げ

永岡桂子文部科学相は28日の閣議後会見で、文部科学省の幹部人事(8月8日付)を発表した。他省庁より1か月遅れの人事となった理由について明らかにしなかったが、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の解散請求問題が影響したとみられる。

藤原章夫・ 初等中等教育局長が事務次官に昇任するのをはじめ、旧文部系の省審議官や総合教育政策局長も交代。とりわけ初等中等教育関係での大幅な異動となる。

新しい布陣に期待したいのは、停滞した学校教育の一体改革に向けて準備を急ぐことだ。

現在は中央教育審議会を中心に、指導内容・指導方法の改善とそれを支える教職員集団の養成・採用・研修の充実方策を両輪とした「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実」の論議が行われている。さらにデジタル学習基盤の在り方や教員勤務・処遇改善も加え、次期教育課程の在り方にもつなげていく――そんな方向性を、伯井美徳・文科審議官(同日付で辞職)が明らかにしていた(日本数学検定協会・学習数学研究所サイト『SAME』「キーパーソンに聞く教育改革」2023年06月08日)。

これは外ならぬ、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI、議長・岸田文雄首相)の提起に沿うものだ。2022年12月のCSTI教育・人材育成ワーキンググループ(WG)中間まとめに応答する格好で翌23年1月の中教審初等中等教育分科会に「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会」設置を要請したのも、当時の伯井初中局長だった。内閣府出向中にCSTIのWGを仕掛けたのは、2度の学習指導要領改訂に携わり財務課長も経験した合田哲雄・現文化庁次長だ(拙著『学習指導要領「次期改訂」をどうする ―検証 教育課程改革―』参照)。

現状では、必ずしも各会議体が連動した議論を行っているとは評し難い。これは、関係各課に「変える余地を残しておきたい」(中教審関係者)という意向が働いているためとみられる。

伯井審議官が示唆した通り24年秋にも学習指導要領の改訂を中教審に諮問するとなれば、あと1年余りしかない。児童生徒の多様性とGIGA端末の活用を前提とした学校教育制度の構築はもとより、カリキュラム・オーバーロード(教育課程の過積載)にも対応した「学習内容の重点化」(特別部会「義務教育の在り方WG」論点整理)を図るためには今から水面下で準備を進めることも不可欠だ。

しかし現段階では、そんな気配はみられない。直前まで詰めを先延ばしするのでは、結局は個別改革の継ぎはぎになって中途半端にとどまる恐れすらある。

少なくとも24年3月に文科省「今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会」が論点整理をまとめるまでに、一体改革に対する一定のめどをつけておく必要があろう。残された時間は、そう多くない。

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2023年7月29日 (土) 社説 | 固定リンク
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