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2021年11月16日 (火)

教員免許更新制の発展的解消 「官製研修」の時間保証が大前提だ

中央教育審議会の「『令和の日本型学校教育』を担う教師の在り方特別部会」が15日、審議まとめを行った。今回も、会合終了後1時間たたずに渡邉光一郎・特別部会長(中教審会長)が末松信介・文部科学相に報告するという周到ぶりだ。

了承された審議まとめの基調は、当初示された案文と基本的に変わらない。当時論じたように、成文としては最悪だ。会合には審議まとめに関する「皆さんからの10の質問にお答えします」と題する資料案も提示されたが、これで本当に現場が混乱せずに実施できるのか、依然として不安が残る。文科省には慎重な運用と説明を求めたい。

この日の会合では、新たに設置する基本問題小委員会に向けた「検討の方向性」と題する案も示され、了承された。これに関して永田恭介・副会長(大学分科会長、筑波大学長)が「どうしても視点が管理とか制限の論調に見え、縛っているというかガチガチな感じと取れる」と口火を切ると、複数の委員が賛同した。管理・制限と言えば、審議まとめの論調そのものではないか。もっと早く発言してくれていたら全面書き換えの余地もあったのでは、と思わなくもない。

審議まとめの修正に関して、一つだけ評価すべきことがある。「職務としての研修は勤務時間内に行われることが前提」だと明記された点だ。いわゆる官製研修なのだから、当たり前と言えば当たり前ではある。

しかし現在、校内研修の時間確保にも苦労しているのが現状だろう。ましてや「教師の意欲と主体性」(審議まとめ)に応じた個人研修となると、おぼつかない。

審議まとめは、学校管理職の在り方の見直しやマネジメント能力の向上も今後の検討課題だとしている。勤務時間内の研修を捻出することが、管理職のマネジメントのみに負わせられるとしたら問題だ。

文科省は、研修機会の確保のための条件整備に本気で取り組むべきである。それとセットにならない限り、いくら審議まとめの運用や説明の仕方を工夫したところで現場を縛るものにならざるを得ない。働き方改革が大前提だと言うが、現状のままなら働き方改革に逆行する結果を招こう。

考えてみれば初任者研修を除いて、研修の条件整備は戦後ずっと遅れてきた。官製研修は長らく明日の授業に役立たない高説ばかりで、力量向上は常に教師個人の努力に任されてきたのが実情だったろう。近年やっとワークショップ型などの研修も行われるようになってきたが、それも教育委員会などの工夫の範囲内だ。

今後スタートする小委では、ぜひ突っ込んだ議論をしてもらいたい。今回の教員免許更新制をめぐる審議まとめのように拙速で事務局案を追認するただけなら、現場をますます苦しめるだけだ。


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2021年11月16日 (火) 社説 | 固定リンク
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