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2021年10月 4日 (月)
教師の人材確保策 これも期待薄の論議だ
文部科学省が、中央教育審議会「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会の審議まとめ案「『令和の日本型学校教育』を担う新たな教師の学びの姿の実現に向けて 」の意見募集を実施している(30日まで)。先に論じた通り基本線は「最悪」なままだから多くの批判が集まることを期待したいし、財務省もぜひ概算要求の研修履歴管理システム調査研究費をゼロ査定としてほしい。
今回論じたいのは、そのことではない。審議まとめ案の部会長一任を取り付けた9月27日の中教審特別委員会に示された事務局資料「優れた人材確保のための教師の採用等の基本的考え方」である。3月の諮問は「『令和の日本型学校教育』を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について」だから、やっと本丸の議論で第一歩を踏み出したというところだ。
事務局資料では、教師の人材確保をめぐる現状と、それに対する「主な論点例」が示されている。例えば「学校現場における経験を重視した養成・入職モデル1」の論点例では「教職課程で学ぶ学生が、学習指導員等として学校現場を経験しながら、従事先の学校教職員や所属する大学の教職課程の担当教職員、同じ活動に参加する他の学生などからのフィードバックを受けつつ、理論と実践を往還した学びを深めることが有効と言えるのではないか」としている。単独で見れば結構なのだが、教職課程全体の見直しや実習先の学校での指導体制が整わなければ教員養成自体のブラック化を招きかねない。
もっと問題なのは、「社会人等の登用を促進するための免許・採用の在り方(教師以外の学校関係職からの教職への転換)」の論点例だろう。「多様な人材を教職へ呼び込む観点から、教職課程を履修していない(在学途中に教職への志を持つようになった)現役学生も含めて、まず学習指導員等として学校現場に関わりを持つ職に採用された後、特別非常勤講師などで必要な知識経験を積み、それらの経験を加味して、免許状を取得し、教職に転換することも考えられるのではないか」としている。
確かに多様な人材を登用する流れは、1月の答申を持ち出すまでもなく既定路線化されている。しかし、これは教員に憧れを抱く社会人や学生を無償ないしは薄謝の有償ボランティアとしてブラック職場に招き入れようとするものではないか。しかも安易に免許状を餌するのでは、教員の質の低下も心配になる。
学校現場をブラック扱いとは、およそ教育専門ライターの書くことではないのは重々承知している。ただ、世間からそう呼ばれてもおかしくないほど現場実態は悪化しているのも事実だ。おまけに教員免許更新制の「発展的解消」に伴い研修が教員の「手かせ足かせ首かせ」(9月27日の特別部会での委員発言)になっては、現場がますます息苦しくなろう。
もちろん現時点では「主な論点例」が示されただけだし、全体の制度設計いかんでは良案に化ける可能性がないわけではない。それでも更新制の先例を思うと、部分最適どころか部分最悪が重ねられて全体最悪に陥りかねないと危惧する。
それよりも求められるのは、教職に自発性・創造性を取り戻させることではないか。中教審、というより文科省事務局の持って行き方に危うさを覚える。
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2021年10月 4日 (月) 社説 | 固定リンク
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