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2012年7月 8日 (日)
高校教育〈2〉 早期卒業制度は相当の「覚悟」が要る
平野博文文部科学相が6月4日の国家戦略会議に提出した教育改革方針をめぐっては、高校の「早期卒業制度」創設案が事前に報道されるなど注目を集めている。その後に行われた中央教育審議会の高校教育部会では論点例も示された。しかし、導入にはさまざまな問題がある。
もっとも、早期卒業の対象をどのレベルに設定するかによって話は変わってくる。現行では高校中退扱いとなっている「飛び入学」者に卒業資格を与えるというだけなら、あくまでレアケースにとどまろう。しかし国家戦略会議の直前にまとめられた「グローバル人材育成戦略」では海外留学の促進とともに「国際的に誇れる大学教育システムの確立」として提言され、平野方針ではカッコ書きとして「大学への早期入学促進」とある。海外では飛び級が当たり前なのだから、「国際標準」に合わせようという発想は分からなくもない。国際競争に耐えうる人材育成強化のため早期にエリートを選抜したいという考えも、成り立つことは成り立つ。
ただその場合、2年ないし2年半で卒業できる「高校教育」とは一体何なのか、その存在意義が問われよう。現在は学校教育法および高校学習指導要領で定める目的や目標を実現するためには、3年間が必要だという建前がある。「国家及び社会の形成者として必要な資質」(学教法51条)には知的学力だけではなく、生活面や道徳面の指導も国民から期待されているのが諸外国との違いである。だからこそ高校部会では、「社会で生きていくために必要となる能力を共通して身に付けさせることのできる最後の教育機関」としての「コア」(課題の整理と検討の視点=案)を論議しようとしているのだろう。単に教科の成績だけで早期卒業を認めればいいという単純な話ではない。
もっとも、技術的には不可能ではなかろう。中等教育学校であれば5年間のうちに高校分74単位まで修得させることはできようし、高校でも定通併修を全日制にも拡大するなどして、いずれも修業年限の規定だけ変えれば後は校長の権限で卒業認定をすればいいだけだ。
しかし仮に国家戦略会議が高校早期卒業=大学早期入学を広く取ろうとするなら、事情は違ってくる。規制が緩和されれば、人はやすきに就くのが常だ。高校はさっさと終わらせて、受験に励みたいと思うのが人情であろう。高校生活が浮足立つのは必定だ。その結果、進学校ほど新たな生徒指導上の課題が生じるおそれも出てこよう。
受け入れる大学側の責任も問われる。単に優秀な学生が早期に確保できると手放しで喜べまい。現行入試制度の下でさえ、受験偏重のため論理的思考力に欠ける学生が増えているとの嘆きがあちこちで聞かれる。平野方針および「大学改革実行プラン」で示された大学入試改革をセットにする必要があるし、入学後も場合によっては早期入学者に特化した初年次教育が求められよう。
もちろん、そうでない割り切り方もある。制度は弾力化して、後は生徒や学生の選択に任せるという考え方である。たとえ高校生活が十分でなくとも、そしてその結果として大学で落ちこぼれたとしても、あくまで自己責任だ。機会の提供と結果の保障は別問題である――。ただそうなると、大学における不適応や中退の問題が今以上に深刻化する可能性がある、と言ったら心配のし過ぎであろうか。
一方で中教審では大学や高校の質保証が論議されており、今後は教育も相当変わることが要請される。早期卒業・入学がさらなる教育コストを増大させることは容易に想像できよう。
このように導入には、高校、大学、生徒・学生、行政、そして社会にも相当な「覚悟」が迫られる。それだけのリスクを負ってもなお日本の成長のために「国家戦略」として必要だという判断をするのなら、必ずしも反対はしない。ただ、それには「高校教育とは何か、何をするところか」の国民的論議と合意が不可欠だし、問題防止のための手厚い措置も講じなければならない。何より問題が起こったとしても、自らの選択の結果として引き受けるべきだろう。決して安易に考えられるものではない。
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【おことわり】記事中「定通併修制度を全日制にも拡大して」を「定通併修を全日制にも拡大するなどして」に修正しました。(7/11)
2012年7月 8日 (日) 社説 | 固定リンク
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コメント
渡辺さま
はじめまして、BLOGOS編集部です。ブログを拝見しまして、私どものサイトでエントリをご紹介させていただきたけないでしょうか。
ご連絡をいただけると幸いです。よろしくお願いいたします。
投稿: BLOGOS編集部 | 2012年7月19日 (木) 10時44分
BLOGOS編集部 御中
ご連絡頂き有難うございます。
お示しの件、了解しました。宜しくお取り計らい下さい。
(※(注記)同文を別途Eメール差し上げました)
投稿: 本社読管 | 2012年7月19日 (木) 11時12分