2015年04月
2015年04月26日22:23
- カテゴリ
- 経済
日本経済復活の会でお世話になっている畏友、島倉原(しまくら・はじめ)さんが本を出しました。積極財政論の立場から、経済の長期停滞の原因と巨大金融危機の発生メカニズムを解明。アベノミクスが新自由主義に基づく誤った経済政策であることを論証しています。
「失われた20年」から脱する経済財政政策運営の処方箋として採用する内閣の登場が待たれます。
積極財政宣言 [ 島倉原 ]
積極財政宣言 [ 島倉原 ]
- タグ :
- #日本経済復活の会
2015年04月17日00:01
- カテゴリ
- 書評
1980年に「文藝賞」を受賞した『なんとなく、クリスタル』(通称『もとくり』)の続編で、昨年末発表された。主人公は女子大生「吉野由利」から、長野県知事や参・衆院議員を務めた「ヤスオ」に変わっている。著者とまがう主人公が50代になった「由利」たちと再会する私小説で、処女作の種明かしになっている。
『もとクリ』同様、小じゃれたお店や料理、ワイン、音楽が作品中にちりばめられ、「なんとなく気分のいい生き方」が描かれている。ただし、著者の政治家経験が社会への一層鋭い視点を与えている。例えば、子宮頸がんワクチンや消費税増税、TPP参加への批判的記述がある。浚渫(しゅんせつ)を行わない砂防事業や大量の移民政策に異を唱え、放射能汚染の深刻な実態を告発する。
作品の最大の特徴は、『もとクリ』同様の膨大な注にある。政治・社会問題に関する主張は、ここで語られている。消費税と放射能汚染の注は各1ページ強、「述べる人たち」に付された移民政策に関する注は約2ページを割く。
郵政事業への言及もある。「ヤスオ」が応募作品の投函を回想する場面で、次のようにつづる。
「ちなみに三公社五現業(*)と呼ばれていた当時、民営化後の今とは違って非集配局でも土曜日は"半ドン"(*)営業で窓口が開いていて、近隣住民から重宝がられていたのだった」
注"半ドン"には、「実は郵政民営化前の方が consumer orientedだった一例」とある。
驚いたのは、物語の終盤、私の敬愛するK衆院議員が登場すること。東北で大地震が起き、「与党会派を組んでいた老練な政治家」に連絡を試みる。「『自分はハトを守るタカだ』と語り、エルネスト・チェ・ゲバラ(*)の写真を事務所に掲げていることでも知られる元警察官僚の彼」と表現しているではないか。
東日本大震災直後、国民新党は官邸に「ヘリコプターによる支援物資投下」など「4項目の緊急提言」を申し入れている。発案したのは田中氏かもしれない。菅政権は採用せず、マスコミも一切報じなかったが。
『もとクリ』の最後は、未来に対する暗い予感で終わっていた。「私は、まだモデルを続けているのだろうか。30代になっても、仕事のできるモデルになっていたい」と「由利」に語らせているからだ。巻末の「人口問題審議会『出生率動向に関する特別委員会報告』」が追い打ちを掛ける。
しかし、今作品、通称『いまクリ』の最後は違う。少子化は予測以上となり、構造改革による貧困化が国民を苦しめている。それでも登場する女性たちは心地よい暮らしを楽しみながら、隣人や世界に対して「出来る事を出来る限り」やっている。これこそクリスタルな生き方ではないか。
「僕もまた、その光に向かって歩み出す」
末文である。目の前の薄暗がりを夜明けにするか、夕暮れにするか。われわれ一人ひとりの態度にかかる。閉塞感が覆う時代に、一筋の希望を抱かせる小説である。
『もとクリ』同様、小じゃれたお店や料理、ワイン、音楽が作品中にちりばめられ、「なんとなく気分のいい生き方」が描かれている。ただし、著者の政治家経験が社会への一層鋭い視点を与えている。例えば、子宮頸がんワクチンや消費税増税、TPP参加への批判的記述がある。浚渫(しゅんせつ)を行わない砂防事業や大量の移民政策に異を唱え、放射能汚染の深刻な実態を告発する。
作品の最大の特徴は、『もとクリ』同様の膨大な注にある。政治・社会問題に関する主張は、ここで語られている。消費税と放射能汚染の注は各1ページ強、「述べる人たち」に付された移民政策に関する注は約2ページを割く。
郵政事業への言及もある。「ヤスオ」が応募作品の投函を回想する場面で、次のようにつづる。
「ちなみに三公社五現業(*)と呼ばれていた当時、民営化後の今とは違って非集配局でも土曜日は"半ドン"(*)営業で窓口が開いていて、近隣住民から重宝がられていたのだった」
注"半ドン"には、「実は郵政民営化前の方が consumer orientedだった一例」とある。
驚いたのは、物語の終盤、私の敬愛するK衆院議員が登場すること。東北で大地震が起き、「与党会派を組んでいた老練な政治家」に連絡を試みる。「『自分はハトを守るタカだ』と語り、エルネスト・チェ・ゲバラ(*)の写真を事務所に掲げていることでも知られる元警察官僚の彼」と表現しているではないか。
東日本大震災直後、国民新党は官邸に「ヘリコプターによる支援物資投下」など「4項目の緊急提言」を申し入れている。発案したのは田中氏かもしれない。菅政権は採用せず、マスコミも一切報じなかったが。
『もとクリ』の最後は、未来に対する暗い予感で終わっていた。「私は、まだモデルを続けているのだろうか。30代になっても、仕事のできるモデルになっていたい」と「由利」に語らせているからだ。巻末の「人口問題審議会『出生率動向に関する特別委員会報告』」が追い打ちを掛ける。
しかし、今作品、通称『いまクリ』の最後は違う。少子化は予測以上となり、構造改革による貧困化が国民を苦しめている。それでも登場する女性たちは心地よい暮らしを楽しみながら、隣人や世界に対して「出来る事を出来る限り」やっている。これこそクリスタルな生き方ではないか。
「僕もまた、その光に向かって歩み出す」
末文である。目の前の薄暗がりを夜明けにするか、夕暮れにするか。われわれ一人ひとりの態度にかかる。閉塞感が覆う時代に、一筋の希望を抱かせる小説である。
ご支援のお願い
このブログでは、マスコミが伝えない社会の動きや事象分析を紹介したいと考えています。取材・執筆には時間と労力がかかります。 つきましては、当ブログの記事に賛同いただける皆さまに寄付を賜りたく、お願い申し上げます。少額でも助けと励みになりますので、ご理解とご協力をいただければ幸甚の至りです。
高橋清隆
郵便局からのお振り込み
【記号】13160
【番号】10900411
銀行からのお振り込み
【口座】ゆうちょ銀行
【店名】三一八(読み:サンイチハチ)
【店番】318
【預金種目】普通預金
【口座番号】 1090041
【口座名】郄橋清隆
高橋清隆
郵便局からのお振り込み
【記号】13160
【番号】10900411
銀行からのお振り込み
【口座】ゆうちょ銀行
【店名】三一八(読み:サンイチハチ)
【店番】318
【預金種目】普通預金
【口座番号】 1090041
【口座名】郄橋清隆
別館「和解の部屋」もよろしく
メールはこちらから
urepytanopy@yahoo.co.jp
livedoor プロフィール
donnjinngannbohnn
人気記事(過去)