「令和5年度 ダム工学会 技術開発賞」
小野田幸生(現 豊田市矢作川研究所)
堀田大貴 (現 建設技術研究所)
末吉正尚 (現 国立環境研究所)
中村圭吾 (現 流域水環境研究グループ)
受賞日:令和6年5月16日(木)
贈賞組織名:一般社団法人 ダム工学会
賞の対象:令和5年度 ダム工学会 技術開発賞対象の研究者
技術開発賞は、ダムの調査、試験、設計、施工または維持管理等において、創意工夫に富む技術を開発、実用化し、ダム技術の発展に著しい貢献をなしたと認められた本会会員である個人または本会会員を含む団体に対して授与する。
露出高は、石礫の天端か河床地盤面(または、砂面)までの高さを表し、付着藻類の種組成やアユの採餌環境に影響を及ぼすとされている。 また、露出高は河床の砂、小礫の流出入により増減する。 本技術は、露出高を土砂供給による河床環境の変化を定量的に予測・評価する指標として活用し、ダム領域の総合土砂管理に資することを目的とするものである。このとき、露出高の観測には潜水目視が必要でコストがかかるという課題があったが、露出高を河床粒径分布等 から簡易に予測する本モデルを開発したことで現場に適用しやすい技術となった。 現場への普及を目的として、本モデルは自然共生研究センターのホームページにも公開されている。
河床表層の状況を把握する従来の手法は、主に①河床材料の粒径を目視によって把握する方法や②河床表層の一定量の土砂をサンプリングし分析する手法であった。 ①は粒径分布の平面的な広がりの把握に留まること、②:は河床表層下の状況まで把握するものであること等の理由により、河床環境を利用す る生物にとって重要な河床表層の三次元的な凹凸の状況を直接的に指標するものではなかった。 今回指標として提案した露出高は、河床の凹凸を指標する鉛直方向の数値情報であり、新規性・独自性を有する指標である。現場実装としては、すでに島根県斐伊川の 尾原ダム下流等、現場の河床環境評価に適用されている。 本技術で開発したモデルは、この指標を現場の河床環境評価により導入しやすくする効果がある。