国立感染症研究所における研究データの取扱いに関する基本方針
令和3年4月8日
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1.目的
この基本方針は、国立感染症研究所(以下、「感染研」という。)が、研究のデー タの取扱いと利用について述べるものである。 感染研は、感染症を征圧し、国民の保健医療の向上を図る予防医学の立場か ら、広く感染症に関する研究を先導的・独創的かつ総合的に行い、国の保健医療 行政の科学的根拠を明らかにし、また、これを支援することにある。
これまで感染研は、公的資金等にもとづいて、政策に科学的根拠を提供するため の調査、研究としてデータ収集・解析を行い、感染症に関する公衆衛生分野・生 命科学分野に関して研究結果を公開している。これら感染研が保有している研究 情報を、人類共有の財産として広くかつ利用しやすいデータとして公開すること が、当研究所に課せられた最も重要な使命の一つと考える。 この使命を達成するために、ここに基本方針を定める。
2.対象となるデータ
感染研の研究実施の過程、あるいはこれらの活動の結果として収集・生成される 情報で、電磁的方式で記録されたものとする。ただし、予備的分析の結果や草 稿、個人的なコミュニケーション等の記録及び契約等により別に定めのある場合 は除く。
感染研は、以下に該当する研究データを公開する。
- 1)感染研の職員等が職務上得た研究成果物等のうち、論文に付随する研究デー タ、研究成果報告書類、データベース等として公表するもの。
- 2)1)の研究成果物等で公表されていないもののうち、公益性が高く、利活用 可能性等の価値があると所長が判断するもの(調査データ等)。
- 3)感染研外部の者が作成した研究データ等であって、契約等に基づき感染研が 権利を所有し、1)または2)に該当するもの。
その上で、公開猶予期間終了後のものから、優先度をつけて公開する。但し、個 人情報保護の観点や、産業技術情報の保護その他の観点から、公開は適当でないと 判断する下記のデータについては、公開の対象外、またはアクセス権の制限、アク セス範囲の限定等の制限措置をとるものとする。当該データの開示については、開 示請求ごとに個別に審議対応するものとし、必要な安全管理対策等を施した上で妥 当であるものと認められたもののみ公開あるいは提供するものとする。
- 機微な(個人)情報を含むデータ
- 著作権、特許権、商業利用等に制約を課せられたデータ
- 公的機関、国内研究者のみに開示対象を制限すべきデータ
- その他、所長が指定したデータ
3.対象となるメタデータ
非公開であっても保有していることの情報開示をするために、メタデータは上記 の公開の対象、非対象に関わらず、永続的識別子の付与及び国際標準規格に準じた メタデータを作成し公開するものとする。但し、国家安全保障に係るもの等存在自 体が機微なもの及び所長から具体的に指定のあったものについては、メタデータも 非公開とする。
4.データの保存・管理・運用・セキュリティについて
感染研は国際的なリポジトリ・レジストリ標準規格に準拠したデータの品質と適 切な管理につとめる。データ保存はクラウドサービス等も活用しながら、真正性、 見読性、保存性の維持、データの改竄、削除からの保護につとめる。 なお、 感染研は、技術の進歩等によりその保存・管理が不要と判断する場合、保 存・管理する研究データを廃棄することがある。
5.データの公開形式について
現状では公衆衛生分野・生命科学分野において国際的な標準データ形式が全ての 領域において定まっているとはいえない。相互運用性を前提として、原則として非 独自フォーマットで公開するものとする。
6.データの帰属・利用条件
データの知的財産権は別に定める場合を除いて、感染研に帰属する。利用条件 は、別に定める場合を除いて本基本方針策定時点で FAIR 原則(Findable、 Accessible、Interoperable、Reusable)の理念に準拠して提供する。 データの引用については、学術論文の投稿規程等で定められた様式で引用するこ とを利用にあたっての条件とする。
7.データの公開期間
感染研は、可能な限り速やかにデータ公開につとめる。ただし、公開猶予期間が指 定されているものについては期限経過後の公開とする。公開期間は期限を特に設け ないものとする。 また、データは公開を打ち切る場合がある。
8. 免責
感染研は、公開データの利用に関して生じる損害についての一切の責任を負わな い。