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くらし

スマホと子どもの脳の深刻な関係 「学力が大きく低下する」驚きの結果

川島隆太(東北大学教授・医学博士)

2025年10月07日 公開

宮城県仙台市教育委員会と学術協定を結ぶ東北大学加齢医学研究所では、子どもたちの学ぶ意欲を高める方法を探るため、長年にわたり大規模なデータ解析を行ってきました。対象となったのは、仙台市の公立小中学校に通う全児童・生徒の学力や生活習慣に関するデータで、その蓄積は14年分に及びます。

本稿では、そのうち小学5年生から中学3年生までを対象とした調査データから判明した、スマートフォンの使用時間と学力の関係について、書籍『本を読むだけで脳は若返る』より解説します。

(注記)本稿は、川島隆太著『本を読むだけで脳は若返る』(PHP研究所)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

本とスマートフォンは、情報をもたらすという面ではメディアとして同じ機能を有しますが、それを使う人の脳の活動の仕方が全く異なります。読書は脳の全身運動になりますが、スマートフォンは脳を抑制するような効果があって、まるで対極の存在です。

結論を先に言えば、読書のメリットを知り、スマートフォンのデメリットを知ることが、今の社会、特に子どもの教育ではとても重要になっていると、私は考えています。もう一歩踏み込んで言うと、スマートフォンの使用時間を減らし、読書の時間を確保することが、私たちの脳、とりわけ子どもの脳を守ると考えています。

スマートフォンやタブレット端末(以下、「スマホ・タブレット」と表記)を使うと脳の活動を抑制してしまうのではないか。このような危機感を覚えたのは、仙台市の全公立小学校・中学校に通う7万人以上の子どもたちの調査データを解析していたときです。

この調査では学力だけでなく、生活習慣についてもアンケートで調べています。娯楽に費やす時間の長さに関しても質問していて、以前はテレビを見る時間やゲームをする時間を尋ねていました。かつては、子どもたちの主な娯楽がテレビやゲームだと考えていたからです。

しかし、子どもたちの習慣が変わって、ゲームをゲーム機でするのではなく、スマホ・タブレットで無料ゲームを楽しむようになりました。同様に、テレビ番組やそれに代わる動画コンテンツも、テレビではなくスマホ・タブレットで視聴するようになりました。

この変化を受けて、私たちは2018年度からスマホ・タブレットの利用に焦点を当てた調査研究を始めることにしました。実際にデータを解析してみると、驚くべきことがわかりました。

解析した対象は、小学5年生から中学3年生の約3万6000名です。小学4年生以下を対象にしなかったのは、当時、小さい子どもたちはスマートフォンなどを長く使うことはないだろうと考えていたからです。現実にはある程度いたのかもしれませんが、私たちは高学年になってから長時間使うだろうと考え、小学校の高学年から中学生を対象としました。

[画像:スマートフォン使用時間、家庭学習時間と学力の関係]

解析した結果は図5─1です。このグラフの見方なのですが、まず家庭学習を「全くしない」「30分未満」「30分〜1時間」「1〜2時間」「2〜3時間」「3時間以上」の6群に分けて、次に、それぞれの群においてスマホ・タブレットの1日の使用時間を「1時間以上」と「1時間未満」で分けています。棒グラフの高さは偏差値の数値を示しています。対象の教科は、国語・算数・理科・社会の4教科です。

このグラフを見て最初に気づくのは、全体的に右肩上がりだということです。やはり、家庭での勉強時間が長いほど成績が良いことがわかります。次に、スマホ・タブレットの使用が1時間以上の子どもたちと、1時間未満の子どもたちとの学力には、大きな差があるということにも気がつきます。

驚くのは、端末の使用が1時間未満(機器を所有していない場合も含む)の子どもたちは、全く勉強しない群でも偏差値50、つまり平均点に届いていることです。

その一方で、スマホ・タブレットを1時間以上使う子どもたちが平均点に到達するのは、家庭学習を「1〜2時間」している群から上です。

「2〜3時間」の群を見ても、スマートフォンの使用時間が短い子どもたちはかなり良い点が取れているのに、1時間以上使っている子どもたちはほぼ平均点しか取れていません。家庭で毎日2時間も3時間も勉強するのはとても大変だと思いますし、かなりまじめな子どもたちだと思われますが、学習効果がうまく出ていないのです。

[画像:スマートフォン使用時間、家庭学習時間、睡眠時間と学力の関係]

どうして、スマホ・タブレットを1時間以上使うと、学習効果が得にくくなってしまうのか。私たちが考えた仮説の一つはこうです。スマホ・タブレットの長時間使用は、間接的に子どもの睡眠時間を短くして、結果的に睡眠不足によって学力の伸び悩みが生じるのではないか。つまり、スマホ・タブレットの間接的な影響を疑ったのです。

文部科学省のデータなどから、睡眠時間の短い子どもは学力が低いという傾向があるとわかっています。そのことを踏まえて、改めて睡眠時間を加味した解析をしました(図5─2)。

この図を説明しますと、左側のグラフはスマホ・タブレットの端末使用時間が「1時間以上」の群で、右側が「1時間未満」の群です。横軸は、家庭での学習時間を6つに分けた群が並びます。そして、奥行きは睡眠時間の長さで分けた群です。1時間刻みで分けていて、一番手前が「5時間未満」、その次から「5〜6時間」「6〜7時間」「7〜8時間」「8〜9時間」「9時間以上」となっています

家庭学習時間の6群と睡眠時間の6群の掛け合わせになるので、合計36群に分かれます。棒グラフの高さは、先のグラフと同じく、学力テストの偏差値の数値を示しています。高いほど成績が良いことになります。

では、まず左側のスマートフォンなどの使用時間が毎日「1時間以上」の子どもたちから見ていきましょう。全体の傾向として右肩上がりではありますが、その度合いがあまり大きくありません。また、奥行き方向を見ると、手前になるほど低くなっています。

偏差値50、つまり平均点を超えている群はどこにいるでしょうか。1時間以上の家庭学習をしていて、睡眠時間が6〜9時間の子どもたちだということがわかります。つまり、この36群の棒グラフは、勉強時間が長いほど成績は良く、睡眠時間が短いほど成績は低いということを示しています。

ただ、一番奥の列を見ると、学力が少し下がっていることがわかります。睡眠時間が極端に長い子どもたちは学力が低くなっています。この傾向は以前から文科省のデータなどで指摘されているところです。一つの推測は、子どもの睡眠の質が悪い環境があって、長時間睡眠をとらないと身体がもたないというものです。

では、スマートフォンなどの端末の使用が「1時間未満」の子どもたちを見ていきましょう(グラフ右側)。大づかみで言うと、全く勉強をしない子どもたちと、睡眠時間が5時間未満の子どもたちを除いて、ほとんどの子どもたちが平均点を超えています。この解析結果には、正直、驚かずにはいられませんでした。

私たちは、この結果の因果関係を知るために、「パス解析」という手法を用いました。私たちが想定した経路(パス)は3つです。

1スマホ・タブレットを使うことによって学習時間が減って学力が低くなる
2スマホ・タブレットを使うことによって睡眠時間が減って学力が低くなる
3スマホ・タブレットを使ったことによって直接的に学力が低くなる

この3つの経路について調べたところ、統計的に一番影響が強く出た経路は3のスマホ・タブレットなどの使用そのものによる直接的な経路でした。この解析結果を見て、私たちはさらに驚きました。睡眠時間や学習時間とスマホ・タブレットの間には直接的な関係がなく、スマホ・タブレットを使うこと自体が学力を大きく低下させていたという関係が見えてきたのです。

このようなデータ(一種の疫学データ)を解析するときの注意点は、相関関係と因果関係を混同しないことです。この場合では、およそ3万6000人の子どもたちに対して、ある時点のデータを預かって解析しているので、睡眠時間や学習時間、スマホ・タブレットの使用時間などの関係は明らかにできますが、因果関係については何も明らかにすることはできません。

例えば、先に示した解析の場合では、スマホ・タブレットを使うことと子どもの学力には相関関係があることがわかります。しかし、これだけでは、「スマホ・タブレットを使ったから学力が下がった」とは言えず、もしかしたら、もともと学力が低い子どもたちは、生活習慣という環境、あるいはもって生まれた性質によってスマホ・タブレットが大好きなのかもしれません。わかりやすく言うと、卵が先かニワトリが先かという話であり、この種のデータではどちらが先かを決めることができません。

そこで、私たちは仙台市から公立小中学校に通う7万人以上の児童生徒の全員に背番号をつけたデータをいただき、別の観点からの解析をしました。この解析では「連結可能匿名化」という手法を用いました。個人を特定することはできないけれど個人の経年変化は特定できるというやり方です。そして、生活習慣の変化と学力の変化についての因果関係が見えてくるように解析しました。

結論から言うと、スマホ・タブレットを長時間使う習慣をもち続けた子どもたちは、学力が低い状態を維持していました。そして、スマホ・タブレットを「1時間未満」で抑えることができていた多くの子どもたちは、学力が高い状態を維持していました。さらに、途中でスマホ・タブレットをあまり使っていなかった状態からヘビーに使い始めた子どもたちは、その翌年から極端に学力が下がっていたことも確認できました。

逆に、スマホ・タブレットをヘビーに使っていたけれど、生活習慣を少し改めて利用時間が短くなった子どもたちは、翌年から学力が上がり出すという傾向が観察できました。ちょうどこの間に、仙台市は子どもたちにリーフレットを配布し、スマホ・タブレットと学力の関係を示しながら、その使用を控えたほうが良いと警告していました。そのメッセージを受け取って生活習慣を改める子どもたちが少なからずいたのです。

このような調査方法であれば、因果関係を明らかにできます。端的に言えば、スマホ・タブレットの使用が卵なのです。

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