ピラミッド群沿いの「幻の水路」をついに発見、ナイル川支流の跡
ピラミッド建設の「幹線道路」か、予想をはるかに上回る大きさ、古代エジプト
現在、ギザのピラミッドは、砂と岩ばかりの砂漠の景色の中にたたずんでいる。そこは、青々としたナイル川の岸辺から何キロも離れている。
だからこそ、姿を消した王国の壮大な遺跡という印象が強いのだろう。しかし、昔からずっとそうだったわけではないようだ。5月16日付けで学術誌「Communications Earth & Environment」に掲載された新たな研究 によると、かつてピラミッドはナイル川の大きな支流沿いにあり、たくさんの船がそこを往来していたという。
「この支流は、古代エジプトの幹線道路だったと考えています」と、米ノースカロライナ大学ウィルミントン校の地形学教授エマン・ゴネイム氏は話す。
幻の支流、アフラマト
現在、エジプトの西方砂漠と呼ばれる台地のふもとには、紀元前27世紀から前18世紀という1000年ほどの間に建てられた31基のピラミッドが並んでいる。これらのピラミッドは、今は干上がったナイル川の支流沿いに建てられたのではないかという説は昔からあった。これまでの研究でも、いくつかの場所で水路の痕跡が見つかっていた。
しかし、ゴネイム氏らは、その水路の一部を地図に描くことに初めて成功した。そして、その支流は予想よりもはるかに大きいものだったと明らかになった。(参考記事:「古代エジプトで愛されたナマズの話、最初のファラオの名前にも」 )
今回の論文には、衛星写真から今はなきナイル川の支流をゴネイム氏の専門的な目を通して発見し、その経路を地形学的に検証したことが記されている。
その結果、カイロから50キロほど南にあるリシュトという町からカイロ近郊のギザのピラミッドに至るまで、消えた支流が約64キロにわたって地図に描き出された。
そのうち今も残っている水域は、アブシールのピラミッド近くにあるバハル・エル・リベイニ運河と呼ばれる小さな場所だけだ。しかし、この支流はかつて、場所によっては川幅が約700メートル、深さ25メートルにも及んだという。論文では、アラビア語でピラミッドを指す言葉にちなみ、この支流を「アフラマト支流」と呼んでいる。
衛星画像を読み解く
エジプトで育ったゴネイム氏がはじめてアフラマト支流の痕跡に気づいたのは約2年前、可視光や目には見えない波長の光で撮影したマルチスペクトル衛星画像を見たときのことだった。さらに、衛星レーダーのデータから抽出したデジタル標高モデルを詳しく調べ、この一帯の地形の標高や異常な点を割り出した。
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