• TOP
  • ニュース
  • 土星の衛星ミマスの地下に海、最新研究で判明、別名デス・スター

土星の衛星ミマスの地下に海、最新研究で判明、別名デス・スター

地下全体に質量のほぼ半分に及ぶ大量の水、「正直なところ、本当に驚きました」

NASAの土星探査機カッシーニが、土星の衛星ミマスにフライバイし最接近してとらえた画像。巨大なハーシェル・クレーターがあるミマスは、映画『スター・ウォーズ』の宇宙要塞「デス・スター」に似ている。このミマスの地下全体に海がある証拠が示された。(PHOTOGRAPH BY NASA/JPL-CALTECH/SPACE SCIENCE INSTITUTE)
[画像のクリックで拡大表示]

土星の衛星ミマスの地下全体に海がある証拠が発表され、天文学者たちを驚かせている。2004年から2017年にかけて土星探査機カッシーニが行った調査を新たに分析したところ、軌道周回中の「秤動(ひょうどう)」と呼ばれる揺れが、地殻の下が液体の海で占められているためであることが示された。論文 は2月7日付けで学術誌「ネイチャー」に発表された。

地下海の存在はすでにいくつかの太陽系の天体でも確認されているが、ミマスもそのメンバーに加わることになる。また、生命が存在する可能性も浮上した。

「正直なところ、本当に驚きました」と、論文の筆頭著者であり、フランスのパリ天文台で土星の衛星のダイナミクスを研究する天文学者、バレリー・レイニー氏は話している。

地下海が存在する見込みは薄かった

ミマスには巨大な衝突クレーターがあり、外見が映画『スター・ウォーズ』の宇宙要塞に似ていることから「デス・スター」とも呼ばれてきた。このクレーターは、地球にあてはめるとカナダよりも広い。土星には多くの衛星(最新のデータでは146個)があり、ミマスもそのひとつだが、軌道を周回中に激しく横揺れする点が風変わりだ。

このような秤動が生じる要因として2つの仮説が考えられる。ひとつは、空気が抜けたラグビーボールのような形の大きく引き伸ばされたコアがあるという説。もうひとつは、全球規模の海があるという説だ。

2014年に、ミマスに地下海がある可能性を初めて示唆した論文が学術誌「サイエンス」に発表された。レイニー氏も、この研究チームの一員だった。(参考記事:2014年の記事「土星衛星ミマス、地下に水の海か」 )

しかし、この説はほとんど受け入れられなかった。というのも、同じく土星の衛星であるエンケラドスは地下海から宇宙に水蒸気を噴出しているが、ミマスの地表には、地下海の存在を裏づける形跡が何もなかったからだ。(参考記事:「土星の衛星エンケラドスからリンをついに検出、生命に必須の元素」 )

だが、最新の論文では、秤動がミマスの軌道をどのように変化させているかを詳細に研究し、ミマスにはたしかに地下海が存在することを明らかにした。

ミマスの地下海は土星を周回中に生じる潮汐作用による熱の影響で凍結しない、と研究者たちは説明している。

また、地下海の水が大量であることも示唆された。ミマスは比較的小さな衛星だが、レイニー氏によれば、地下海はミマスの質量のほぼ半分を占めている。

「たくさんの人がこの研究結果に注目して、『驚いた、本当に全球規模の地下海があるんだ』と言うでしょう」とレイニー氏は話している。

次ページ:「多くの天体に液体の水がありそうです」

ここから先は、「ナショナル ジオグラフィック日本版」の
会員*のみ、ご利用いただけます。

会員* はログイン

*会員:年間購読、電子版月ぎめ、
日経読者割引サービスをご利用中の方、ならびにWeb無料会員になります。

おすすめ関連書籍

2023年10月号

発見の新しい時代/月へ再び、その先へ/原始の宇宙へ/生命を異星の海に探す

ナショジオはNASAとのパートナーシップにより、アルテミス計画のミッションを記録し、伝えていくことになりました。10月号はその第1弾。アポロ以来となる21世紀の月面着陸ミッションのほか、新発見が期待されるジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡、木星や土星の衛星に生命が存在する可能性、特製付録もついたナショジオの宇宙特別号をお楽しみください!

特別定価:1,340円(税込)

ナショナルジオグラフィック日本版サイト

広告をスキップ

[フレーム]

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /