サントリーと宝酒造が"2弱"のビール戦争、新日本製鉄誕生、セブン参入以前のコンビニ事情【ダイヤモンド111周年〜高度成長期 3】

記事をクリップ
URLをコピー
記事を印刷
Xでシェア
Facebookでシェア
はてなブックマークでシェア
LINEでシェア
noteでシェア

サントリーにとってビール事業での成功は悲願だったが、大手3社の牙城は崩せず、ビール事業は長年、赤字に苦しんだ。初の黒字を達成したのは、なんと参入46年目の2008年。「ザ・プレミアム・モルツ」や「金麦」のヒットで、初の黒字化とともにサッポロを抜いて業界3位に浮上した。

一方、宝酒造については、この記事の中でも「宝がビール部門を分離するのではないかといううわさは、昨年の暮れ頃から相当根強く流れている」と書かれている。実際、既存メーカーの強固な特約店制度の前に販売網を構築できず、この記事が掲載された67年に、ついにビール事業からの撤退を決断した。

【56】1968年
揺らぐドルの信認
突然来る「ドル危機」を暗示

戦後の国際通貨体制(ブレトンウッズ体制)では戦前のような金本位制への復帰はせず、各国の通貨とドルの交換レートを固定し、さらに金1オンスを35ドルで交換することを保証することで、ドル本位制を採用した。ドルは事実上の金の代替として機能していた。

しかし、60年代に入ると、ベトナム戦争の軍事支出や海外援助、国際的な投資活動などに伴う外国へのドル流出が進み、米国の経常収支は赤字に転じる。同時に米国内では社会保障などへの支出も増加していたため、財政赤字も拡大していた。結果的に米国の金準備が減少し、国際的なドルの信認が揺らぎ始める。

特に68年は、年頭にジョンソン米大統領が「36億ドルに達した国際収支赤字を、30億ドル削減する」という特別声明を出し、世界各国に衝撃が走った。米国が30億ドルの対外通貨流出を抑えるとなると、その分、各国にとっては外貨収入の減少となるからだ。戦後、米国からの膨大なドル供給は、各国の経済発展の原動力だった。米国の「ドル防衛」策はすなわち世界経済の危機でもある。

こうした米国経済の行き詰まりが表面化するにつれ、「ドル切り下げ」への不安が国際的な経済議論の中心になった。

「ダイヤモンド」も68年2月臨時増刊号として、1冊まるごとドル危機をテーマとした「"ドル危機" 次に来るものは何か」を発行している。その中で「もしドルが切り下げられたら」という、計12の疑問に編集部が答える企画がある。たとえば「ドル切り下げや金価格引き上げは、ある日突然に行われるものだろうか」といったものだ。

IMF(国際通貨基金)協定によって、平価の一律変更は、IMF総投票件数の過半数の同意とIMFの総出資割当額の10%以上を有する加盟国(米国、英国の2カ国)の承認が得られれば可能となっている。また、米国は国内法によって、ドル切り下げを行う場合は議会の審議にかけなければならない。ということは、米国は突然、ドルを切り下げることはできないはずだ。

しかし、記事では上記の手続きを説明した上で、こう答えている。

1968年2月臨時増刊号「"ドル危機" 次に来るものは何か」1968年2月臨時増刊号「"ドル危機" 次に来るものは何か」
PDFダウンロードページはこちら(有料会員限定)
『平価切り下げは、どこの国でも突然に断行するもので、予告したり期間を置くことはありえない。混乱を招くことが必定であり、弱い者、正直者がバカをみることになりやすいからである。
そこで、アメリカは、ある日突然に金取引や為替取引を停止し、その間に右の法律改正案を議会に提出、通過させて、IMFに対し平価の一律変更の手続きをとるであろうと推測されている。
つまり、手続き、順序などを変えることにはなるが、ある日突然にドルが切り下げられるのと、まったく変わりはないわけである』

やがて訪れる、突然のドル切り下げを暗示するかのような答えである。

記事一覧

欧州戦争で株暴騰、化学・海運・造船...軍需で儲けた会社評、「渋沢に盲従」を批判、物価高騰と米騒動【ダイヤモンド111周年〜大正期 1】

2024年7月2日

111年111本 厳選記事でたどる「激動の日本経済史」記事本文PDFダウンロード

2024年7月2日

関東大震災と戦後不況、武藤山治・藤山雷太・松永安左エ門...論客経営者が続々、東京市電に民営化を進言【ダイヤモンド111周年〜大正期 2】

2024年7月9日

高橋是清が鎮めた金融恐慌、井上準之助が誌上で論じた金解禁、相次ぐテロ事件と軍国化への道【ダイヤモンド111周年〜戦前・戦中期 1】

2024年7月16日

二・二六事件の戒厳令下で編集作業、日中戦争の勃発で統制経済体制に突入、小林一三の日比谷大劇場街化計画【ダイヤモンド111周年〜戦前・戦中期 2】

2024年7月23日

戦時下の翼賛体制と言論弾圧、人造石油への期待、ロボット飛行機の荒唐無稽...空襲で休刊へ【ダイヤモンド111周年〜戦前・戦中期 3】

2024年7月30日

終戦で誓った平和と日本再生、渋沢蔵相の手腕を辛辣批判、超インフレを収束させた"劇薬"ドッジ・ライン【ダイヤモンド111周年〜戦後復興期 1】

2024年8月6日

朝鮮戦争で特需到来、日本航空の育成を誌面で主張、ホンダ、ソニー..."戦後派"企業の活躍【ダイヤモンド111周年〜戦後復興期 2】

2024年8月13日

家電三種の神器、国民車構想、為替・貿易自由化の波...「もはや戦後ではない」経済成長の始まり【ダイヤモンド111周年〜高度成長期 1】

2024年8月20日

東京五輪の前後で景気が激変、「所得倍増計画」の功罪、ケネディ米大統領暗殺の影響は?【ダイヤモンド111周年〜高度成長期 2】

2024年8月27日

サントリーと宝酒造が"2弱"のビール戦争、新日本製鉄誕生、セブン参入以前のコンビニ事情【ダイヤモンド111周年〜高度成長期 3】

2024年9月3日

1ドル360円の終わり、日本列島改造論、石油ショック、三菱も狙っていたディズニーランド誘致【ダイヤモンド111周年〜昭和後期 1】

2024年9月10日

ロッキード事件の闇、松下電器のトップ交代、深刻化する"サラ金"問題、火花散る日米経済戦争【ダイヤモンド111周年〜昭和後期 2】

2024年9月17日

「土光臨調」の行政改革と民営化への道筋、トヨタの"工販合併"、日米スパコン摩擦【ダイヤモンド111周年〜昭和後期 3】

2024年9月24日

バブルへの入り口「プラザ合意」、男女雇用機会均等法、究極のカネ余りと日本企業の"米国買い"【ダイヤモンド111周年〜昭和後期 4】

2024年10月1日

バブルの絶頂と崩壊で平成が幕開け、株価下落で証券会社に不正横行、先見えぬ"新型不況"に突入【ダイヤモンド111周年〜平成前期 1】

2024年10月8日

阪神・淡路大震災の衝撃、先送りされた住専問題、価格破壊とデフレの始まり【ダイヤモンド111周年〜平成前期 2】

2024年10月15日

山一証券の破綻、大蔵省ノーパンしゃぶしゃぶ事件、そごう倒産、ビットバレーとネット人脈【ダイヤモンド111周年〜平成前期 3】

2024年10月22日

小泉改革の痛み、「竹中プラン」でりそな銀行が国有化へ、勢いを失った"家電王国"【ダイヤモンド111周年〜平成前期 4】

2024年10月29日

増える非正規雇用、リストラ父さんと氷河期フリーター息子、ハゲタカの日本買い、忍び寄るサブプライム危機【ダイヤモンド111周年〜平成前期 5】

2024年11月5日

トヨタも大赤字のリーマンショック、民主党政権誕生、はやぶさ帰還で宇宙ブーム、そして東日本大震災【ダイヤモンド111周年〜平成後期-令和 1】

2024年11月12日

ものづくり日本を支配するアップル経済圏、日銀の異次元緩和、自治体消滅・人口減少ショック、東芝不正会計【ダイヤモンド111周年〜平成後期-令和 2】

2024年11月19日

マイナス金利という奇策、ブラック企業と働き方改革、堕ちた日産のカリスマ、「サブスク元年」で変わるビジネス【ダイヤモンド111周年〜平成後期-令和 3】

2024年11月26日

新型コロナによる"7割経済"、「脱炭素」という踏み絵、物流危機への備え、半導体と電池の地政学的争奪戦【ダイヤモンド111周年〜平成後期-令和 4】

2024年12月3日

おすすめの会員限定記事

あなたにおすすめ

特集

アクセスランキング

  • 最新
  • 昨日
  • 週間
  • 会員

最新記事

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /