30代・年収600万円「転職すべきか」「今の職場に残るべきか」を決めるときの大事な視点
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20万部のベストセラー、待望のマンガ版『マンガ このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法』。「転職は悪」という風潮に一石を投じ、日本人の働き方を変えた北野唯我氏が、今回は「自分にはキャリアの武器が何もない」と思っている主人公の奈美(もうすぐ30歳)の悩みに答えを出す。「やりたいことがなければダメ」「S級人材以外は有利な転職は無理」など転職の常識が次々と覆される。
今回はスピンアウト企画。本書著者の北野さんに、2023年最新の転職対策についてインタビューした。第2回目は、「GAFAM大量リストラがもたらす影響」について聞いた。(取材・構成/川代紗生)
ビッグ・テック企業の大量リストラ...
「逆GAFAM現象」がもたらす転職市場への影響は?
──ChatGPTなど、AIの発達に、次々に移り行く社会情勢......。世界はかつてないほどのハイスピードで変化し続けています。これからの仕事人生を考える上で不安になっている人も多いと思いますが、今後、キャリア構築においてポイントになりそうな要素について教えていただけますか?
北野唯我(以下、北野):最近、いくつかのメディアでもお話ししているのですが、「逆GAFAM現象」が起こると予想しています。
──逆GAFAM現象とは、何ですか?
北野:今までは、GAFAM(Google、Amazon、Facebook※(注記)現Meta、Apple、Microsoft)と呼ばれるような、ビッグ・テック企業に優秀な人材がどんどん流れていく動きがありました。ところが昨年秋頃から、GAFAMでの大量リストラが進んでいます。
──Twitterでも、イーロン・マスクが社員を大量解雇していると世界的な話題になっていますよね。
北野:最近の転職市場において私が注目しているのは、「GAFAMでこれまで働いていた超優秀な人材たちが、今後どこに流れるのか?」という点です。これまでの歴史を紐解いてみても、たとえば、2008年のリーマン・ショックでレイオフされた人たちが、新しい環境で画期的なサービスをはじめたり、起業したりと、大きな影響がありました。
もちろんリーマン・ショック時とまったく同じとは言いませんが、「逆GAFAM現象」によって何かしら、ビジネスの大きなうねりが起こるのではないかと考えています。
「2倍速で鍛えられた超優秀人材」がやってくる
──このお話を聞いてまず浮かんだ懸念が、「逆GAFAM現象」で転職市場に流れてきた超優秀な人たちに、席を取られてしまうのではないか? ということでした。たとえば、真面目にコツコツやってきた、30歳・年収600万円くらいの人が、これからさらに上を目指して転職するぞ! と考えたときに、「あれ? 思ったより自分の市場価値、下がってる!」みたいなことって、ありそうじゃないですか......?
北野:そうですよね、不安になると思います。ビッグ・テック企業で20代を過ごした人って、一般のビジネスパーソンの2倍速くらいで鍛えられていたりするので、転職先で成果を出し、のんびり働いていた人たちを追い越して一気に出世する、みたいなことも起こりうると思います。
──や、やっぱり......!
北野:ただ、今おっしゃったような、30歳・年収600万円くらいで真面目にコツコツやってきた人の市場価値が急激にガクッと下がる......みたいなことはさすがに起こりにくいかなと。
それよりも、逆GAFAM現象で転職してきた優秀な人材を、受け皿である組織側がきちんと活かせるのか? ということのほうが、懸念点になるのかな、と思っています。
──たしかに、組織内でいろいろと軋轢が生まれそうですね。「こっちの方が効率的なのでやり方変えましょう」という人と、「入ってきたばかりのくせに」と抵抗したくなる人と。
北野:とくに、伝統的な日本の大企業に入った場合、そういうカルチャーギャップは大きいでしょうね。
30代・年収600万円からのキャリアアップで持つべきは「マクロ視点」
──では、今後の転職市場についてはそれほど心配する必要はないでしょうか......?
北野:とはいえ、変化スピードの速い時代ですから、順調なステップアップを想定していた人も、ある程度キャリア戦略の見直しは必要かもしれませんね。30代で年収600万円程度は稼げるようになった。今後は、外資系企業の年収800万円くらいのポジションを狙って転職したい。そのようなプランを描いていたとしても、想定していたほどスムーズにはいかなくなるかもしれません。
──働き盛りの30代で大きなキャリアアップを目指していた世代はとくに、焦っている人も多いのではないかと思うのですが、これからどんな準備をしていったら良いでしょうか?
北野:「学び直し」をする機会だと考えるしかないと思います。外資系トップ企業で働いてきた人たちが、日本企業の常識を覆すような仕組みづくりを、これからはじめていく。今は、そのターニングポイントなのだと思います。
自分が「転職できるかどうか」というミクロの課題以前に、逆GAFAM現象というマクロ環境の変化によって、自分の会社、ひいては、自分の所属する業界全体に、文化的な変化が起こるはずです。自分自身の転職状況だけではなく、より大きな視点で、市場観察をする必要がありそうですね。
とはいえ、見方を変えれば、逆GAFAM現象が、従来の日本のビジネスモデルに新しい風を吹かせてくれる可能性も考えられます。ゼロベースで自己分析し、キャリアプランを練り直すにはいいタイミングかもしれません。自分の市場価値を測るための相棒として、『マンガ 転職の思考法』を使っていただけたらうれしいですね。
兵庫県出身。神戸大学経営学部卒。就職氷河期に博報堂へ入社し、経営企画局・経理財務局で勤務。その後、ボストンコンサルティンググループを経て、2016年、ワンキャリアに参画。子会社の代表取締役などを経て、現在、ワンキャリア取締役。テレビ番組や新聞、ビジネス誌などで「職業人生の設計」「組織戦略」の専門家としてコメントを寄せる。著書に『このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む転職の思考法』『OPENNESS 職場の「空気」が結果を決める』(以上、ダイヤモンド社)、『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版社) などがある。最新刊は『マンガ このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法』。
本書の主な内容
『転職の思考法』の主人公だった青野がメンターとして登場。
オリジナルストーリーでパワーアップしました!
「キャリアの武器がない」と思う人にこそおすすめしたいマンガ版
<あらすじ>
広告会社の総務部で働く奈美は、ある日会社が外資系企業に買収されるという憂き目に遭う。その買収先から人事担当としてやってきたのが、幼い頃に「近所のお兄ちゃん」として親しくしていた青野トオルだった! 自分には転職は無理...と思っていた奈美だったが、青野から「転職の思考法」を伝授され、考えが変わっていく。
<マンガ部分目次>
プロローグ 私には武器がない
第1章 私の市場価値(マーケット・バリュー)
第2章 転職は「裏切り」?
第3章 いいエージェント、ダメなエージェント
第4章 もう、後悔したくない
エピローグ 私たちは居場所を選べる
<解説部分目次>
いつの時代も変わらない、転職の原理原則
原則1: 転職は悪ではない
原則2: 市場価値と社内評価は一致しない
原則3: 9割の人は、S級人材ではない
あなたのマーケット・バリュー(市場価値)はいくら?
マーケットバリューの高める3つの方法
「やりたいこと」はなくてもいい
大事なのは転職よりも「転職できる」というカード
自分自身の棚卸しのやり方1 過去やってきたことを書き出す
自分自身の棚卸しのやり方2 再現性を見つける
転職するときどこに相談すべきか?(5つのチャネル)
転職エージェントのビジネスモデルを知る
いいエージェント、ダメなエージェント5ヵ条
企業は面接で何を見ているか
給料が高い会社と低い会社の違い
内定をもらってから1週間の過ごし方
もし元の会社から引き留めにあったら
退職で気をつける3つのこと
活躍する転職者、活躍できない転職者の違い
20万部のベストセラー、ついにマンガ化! 転職へのモヤモヤと罪悪感はこの1冊だけで全て解消できる! 「自分には武器がない」と思っている人にこそ読んでほしい、完全書き下ろしの「もう一つのストーリー」が誕生しました。青野がメンターとなり総務部勤務の奈美の悩みを解決に導きます。