潜入ジャーナリストが追った、バイデン大統領の「つらすぎる過去」とは

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バイデンアイオワ州で演説するバイデン、2019年12月 Photo by Masuo Yokota

2020年のアメリカ大統領選で勝利し、第46代大統領に就任したジョー・バイデンの「人となり」とは?子ども時代は吃音に苦しみ、交通事故で妻子を亡くした過去があった。
(注記)本稿は、横田増生『「トランプ信者」潜入一年』(小学館)の一部を抜粋・再編集したものです。敬称略、年齢や肩書は、取材当時のまま。参考文献については、書籍の最後に一覧で表記してあります。

>>連載初回『米国の民主主義は私の目の前で死んだ...議会襲撃事件を潜入ジャーナリストが渾身ルポ』から読む

吃音を克服した男

バイデンは1942年11月20日、4人兄弟姉妹の長男として、ペンシルベニア州スクラントンに生まれる。家族はアイルランド系カトリック教徒で、父親は中古車のセールスマンという中流家庭だった。

不況で父親が職を失うと一家はデラウェア州に引っ越している。

子ども時代、バイデンを苦しめたのが吃音だった。まだ、吃音が学習障害の1つではなく、低能の表れとみなされていた時代の話だ。しかし、両親、特に母親は、バイデンの能力を信じ、吃音をからかう教師がいると、自ら学校に乗り込んでいき、「息子をバカにすると許さない」と強く抗議した。

中学生になると、バイデンは独力で吃音を克服する。繰り返し詩を朗読し、鏡の前で顔をゆがめることなく話す訓練をした。

バイデンはCNNの取材にこう答えている。

「学生になってどもりながら、どうやって女の子をダンスに誘うことができるんだい。周りには、バカにするヤツらがたくさんいるというのに。そうやって、私は闘うことを学んだ」

カトリック系の高校に進むと、バイデンはアメリカンフットボール部に入り活躍する。

部活の友達と夕食をとるためレストランに行ったとき、黒人の友達も1人交じっていた。レストランは、黒人には食事を提供できない、と言った。僕が店を出れば済むよ、と言う黒人の友達を引きとめ、バイデンは「いや座っていよう。君に食事を出さないということは、僕ら全員に食事を出さないということだよ」と。公民権法が施行される以前のことで、まだ黒人が「ニグロ」と呼ばれていた時代のことだった。

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