コロナ下の指導者の条件とは?日本で目立つ「謝り下手」の政治家たち

連載セミナー「コロナ下のリーダー群像」第1回 コロナ前後で一変した世界とその指導者たち

会員限定
記事をクリップ
URLをコピー
記事を印刷
Xでシェア
Facebookでシェア
はてなブックマークでシェア
LINEでシェア
noteでシェア

時代を象徴する一枚の写真

後世の歴史家が2010年代後半の国際情勢を描くとき、この写真を使う誘惑からは逃れがたいだろう。眼光鋭く何かを迫っているドイツのアンゲラ・メルケル首相。憤然と見返す米国のドナルド・トランプ大統領。そして、その中間に腕組みをして立つ日本の安倍晋三首相が写っている。

ああ身を乗り出すドイツのメルケル首相(左)と詰め寄られる米トランプ大統領(右) Photo:Handout/gettyimages

この写真は、18年6月にカナダで行われたG7シャルルボワサミットの光景である。価値観を共有するはずの西側社会の首脳間に亀裂が入り、収拾不能である様子が伝わってくる。

写真左端で、うなだれ気味なのが米国のシェルパ(首脳補佐官)を務めたラリー・クドロー経済担当補佐官だ。心労のせいか、このサミット直後に胃潰瘍で倒れている。その横に隠れているのは、英国のテリーザ・メイ首相とフランスのエマニュエル・マクロン大統領だ。写真右奥には、どこか放心したような表情で米国のジョン・ボルトン国家安全保障担当補佐官が立っている。彼は離任後、『ジョン・ボルトン回顧録〜トランプ大統領との453日』を出版した。当時の米国は、このサミットの直後にシンガポールで北朝鮮の金正恩委員長との初会談を控えていて、トランプ大統領はそちらに気をとられていたと暴露している。

このG7サミットの光景はわずか3年前のことだが、コロナ禍を経ると遠い昔のことのように感じられる。これから約1年後の19年7月、メイ首相はEU離脱の行き詰まりから首相を辞任した。また、安倍首相は20年8月に体調不良を理由に長期政権を終え、トランプ大統領も同年11月の大統領選挙に敗れた。そして、メルケル首相は21年9月の総選挙後に政界から引退する。残るはマクロン大統領だが、22年5月の選挙を乗り越えられるだろうか。写真に写っている10年代の主要国リーダーのほとんどが入れ替わり、つくづく「コロナ前の世界は遠くなりにけり」ということを実感する。

今年のG7サミットは、6月に英国のコーンワルで開催された。約5年ぶりに「トランプ抜き」で行われたこともあり、首脳間の活発な議論やシェルパたちの準備作業、そしてその成果物としての分厚い共同声明文が公表された。欧米間の信頼も少しずつ元に戻りつつある。ただし、コロナ禍における政策運営の困難さを思えば、この写真のころの政治家はまだ恵まれていたのかもしれない。

あなたにおすすめ

特集

アクセスランキング

  • 最新
  • 昨日
  • 週間
  • 会員

最新記事

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /