ラグビー日本代表、アイルランドを制した精緻なスクラムが生まれた理由
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前半30分を過ぎたころ、日本の快挙が現実のものとしてチラつき始めた。
まだアイルランドにリードを奪われていたが、日本の執拗なタックルを受けて、アイルランドは奔放さを失いつつあった。思い通りの攻撃が封じられ、無骨に突進する戦法に変えたが、それはむしろ日本の仕掛けた罠にはまったかのようで、通常なら多少強引にでも力で蹴散らすアイルランドの猛者たちが日本選手の強固な壁にことごとく屈した。打開策を失ったアイルランドは、後半になるとすっかり自信を失い、機能不全となった。
初戦の両チームの戦いぶりを見て、相当な大差も覚悟していた。日本代表はロシアを相手に勝ちはしたが本来のプランどおりには戦えなかった。一方、スコットランドに圧勝したアイルランドは恐ろしいほどの強さを感じさせ、開いた口がふさがらないほどだった。
ところが、日本代表は見事にあの驚異的な強さを誇るアイルランドの両翼をへし折ってしまった。
「絶対やってはいけない」プレーを
アイルランド選手に選択させた日本の"圧力"
残りワンプレーの途中で、日本はアイルランドにボールを奪われた。自陣のゴールライン前、トライまでは最も遠い位置。だが、地道につながれ、1トライ1ゴールを決められたら同点になる。最後の最後でアイルランドの底力を多くのファンが恐れた次の瞬間、ラグビーの常識では「絶対にやってはいけない」とされるプレーをアイルランド選手が選択したのだ。
ボールを手にしたスタンドオフのジョーイ・カーベリー選手は、慌てた様子でタッチにボールを蹴りだした。試合途中ならよくある光景だが、80分経過のホーンが鳴った後、ボールを蹴り出せば試合が終わる。負けているチームは決して選択しないはずの結末で日本の劇的勝利が決まった。
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