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Artwork by EVA TATCHEVA

モラル・ハザード経済の危うさ

政府の介入、FRBの変容、リスク感度の低下

サマリー:破綻した金融機関の救済は、保守派からモラル・ハザード(倫理の崩壊)の危険性を指摘されたものだが、リーマン・ショック以降の一連の救済については、そのような声が聞こえてこない。世界経済には、高インフレ、歯... もっと見る止めの利かない金融システムといった暗い未来しかないのだろうか。 閉じる

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アメリカの財政危機がインフレを招く

オバマ政権とFRB(連邦準備制度理事会)は、各国政府ならびに各中央銀行と協調し、2008年秋に起きた信用収縮を早急に緩和すべく、あらゆる手を打っている。

アメリカ政府は、保証できるものはすべて保証した。中央銀行も、吸収できるものは、一文にもならない紙切れでさえ、すべて買い取った。そのうえ政府は、国内最大級の金融機関を救うために、何十億ドルにも上る血税を公的資金として注入した。すると、金融以外の主要産業もここに列をなした。

政府がこのような対応をせざるをえなかったのは、住宅ローン市場とデリバティブ市場で生じたバブルのせいであり、経済と世界金融システムがどれほど歪んでしまったかを如実に物語っている。

民間部門に介入したことで、直近の危機はおおむね回避されたとはいえ、この介入によって経済環境は一変した。これによって破滅が招かれるかどうかは、救済によってリスク許容度が増すか、あるいは崩壊によって逆に低下するか次第である。

政府による救済策の影響を真っ先に受けるのが政府の借金とその借入コストであり、これらが劇的に増加するのは火を見るより明らかである。

不況によって国庫の歳入が甚大な打撃を被っている時にあって、財務省は少なくとも1兆ドルか、それ以上を支出しなければならない。使われる血税の一部は、色をつけて納税者に還元されるといわれているが、それが本当であっても、この約束によって目の前の支払いがなくなるというわけではない。

さらに悪いことに、この想定外の支出は、財務省に年金原資を増やすよう、退職したベビーブーマーたちが訴えている時に実施される。そんな金が、いったいどこにあるというのだろうか。

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ピーター L. バーンスタイン 社長

経済関係のコンサルティング会社、ピーター L. バーンスタインの社長。主な著作にAgainst the Gods: The Remarkable Story of Risk, John Wiley & Sons, 1996.(邦訳『リスク』日本経済新聞社、1998年)がある。

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