神戸大学大学院国際文化学研究科|神戸大学大学院国際文化学研究科 国際文化学部 神戸大学大学院国際文化学研究科
Graduate School of Intercultural Studies, Kobe University
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言語コミュニケーション

最終更新日: 2025年10月15日

グローバル文化専攻・言語情報コミュニケーション系
言語コミュニケーションコース

「ことば」は概念やメッセージを相手に伝える単なるコミュニケーションの手段であるだけではなく、人間の認知・思考・習慣とも密接に関わる文化そのものともいえます。本コースでは言語構造や言語慣用に関する比較・対照分析を基に、外国人に対する有効な日本語教授法の探求、第二言語習得における言語的・文化的分析と方法論の開発、多種多様なレトリックの比較分析などを進め、グローバリゼーションの進展の中で今や不可欠になりつつある異文化間コミュニケーション上の諸問題の解決に積極的に取り組んでいます。基礎から応用に至る、言語コミュニケーションに関わる様々な講義・演習を通して、実践的応用能力あるいは教育・研究能力を持つ人材の養成を目指しています。

進路実績

(前期課程) 日本経済大学講師、北洋大学国際文化学部講師、大阪府立高等学校(英語教員)、国際交流基金ニューデリー日本文化センター、(株)資生堂、(株)シャープ、アップ教育企画、日本放送協会、JR西日本関連会社、特許事務所、ほか

(後期課程) 天津外国語大学教授、中国電子科技大学准教授、関西学院大学准教授、上海大学准教授、東京大学特任講師、東海東京証券、ほか

在籍学生数

(前期課程) 16名
(後期課程) 6名

論文テーマ例

(前期課程)
バイリンガリズム
日・仏語のフィラー
カタカナ表記語と社会言語学
説得とレトリック
マンガのオノマトペ翻訳
日本語教育の社会的側面
日本語の接続詞

(後期課程)
第二言語の形態統語の習得
複合動詞
日中同形漢語
フィクションのレトリック
物語論
自由間接話法と文体論
日本語教育の歴史
日本語のモダリティ表現
格助詞「に」「で」「を」の習得における訂正フィードバックの効果

所属教員の紹介

石田 雄樹 准教授 言語慣用類型論特殊講義ほか
フランス文学を中心に、言語学や物語論の理論に基づいた、文学作品の語りの特徴や構造の分析を主に行っています。また、自己同一性、幸福、翻訳、異文化理解といった思想・文化的問題を「語り」という側面から研究しています。私は「私」をどのように語るのか、自己語りの幸福とは何かといった問題に特に関心があります。

王 海涛 助教 日本語教育内容論特殊講義ほか
私の研究分野は日本語学と認知言語学です。具体的には、コーパスに基づいたアプローチなどの実証的な方法で多義語の意味構造を研究しています。最近では、人工知能(AI)と言語モデルの発展に伴い、日本語の特性に適した語彙空間モデルを用いて語彙の意味構造の研究を進めています。

川上 尚恵 准教授 日本語教育応用論特殊講義ほか
中国や日本国内を対象とした日本語教育史研究を主に行っています。学習/教育に関わる人々の実践や日本語教育の枠組みを史的な観点から分析することで、日本語教育の社会的意義や役割、あり方を問いたいと思っています。日本語教育の実践分野に関する研究も視野に入れており、特にノンネイティブの日本語教師養成について関心があります。

小松原 哲太 講師 レトリカル・コミュニケーション論特殊講義ほか
言葉の意味を効果的に表現するレトリックを、意味論、文法論、語用論を中心とした言語学の立場から研究しています。意味を理解し、ときに誤解する、私たち言語使用者の柔軟な解釈を重視する、認知言語学の理論を背景として、具体的な用例の収集、記述、分析にもとづく、言語のコミュニケーション機能の探求を行っています。

齊藤 美穂 准教授 日本語教育方法論特殊講義ほか
私の研究の主な関心領域は、方言を含む現代日本語文法の分析と、外国にルーツを持つ子どもたちへの第二言語としての日本語教育です。近年は特に、子どもたちのアカデミックな言語習得を支援することに関心を持っています。

田中 順子 教授 第二言語習得論特殊講義ほか
第二言語習得(SLA)プロセスにおけるアウトプットとフィードバックの役割や、個人差(言語学習適性など)がSLA に及ぼす影響について研究をしています。また、第一言語(L1)には存在しない第二言語(L2)概念が、どのような過程で正しく(あるいは誤って)区分されてL2 形態にマッピングされるのかに関心があります。SLAのみならず、教室内での外国語学習やマルチリンガル環境下での言語習得とその問題点も扱います。

南 佑亮 准教授 比較・対照言語論特殊講義ほか
言語記号は人間の認知能力とコミュニケーション上の目的によって動機づけられていると考える認知・機能言語学の立場から、英語と日本語の様々な文法構文について研究しています。特に、あまり注目されてこなかった現象に光を当て、その分析を通して話者の言語知識のあり方を少しずつ解明していくことに力を入れています。

[画像:所属学生からのメッセージ]


大北 まきさん
(博士前期課程2年)
京都大学文学部卒業
研究テーマ:「接続表現「がてら」の使用実態とその意味・用法について」

大学卒業後は一般企業で会社員として働いていましたが、言語や日本語への興味が薄れることはなく、日本語教師に転職
し、それから10 年余り、日本語学校で日々の指導に情熱を注いできました。この仕事を続ける中では留学生から鋭い質問を受けることも多く、もっと良い授業ができるように、もっと分かりやすい文法説明ができるようにと勉強していくうちに、より高度な学びを求める気持ちが強くなりました。当初は本研究科の科目等履修生として日本語教育や第二言語習得に関する講義を受講していましたが、そこでの新たな知的刺激の体験が自身の仕事に大きな意味をもたらすことを感じ、さらには日本語教育に貢献できるような文法研究に取り組んでみたいという思いが芽生え、正規生として大学院へ進学することを決意しました。
仕事と学業を両立できるのか不安を抱きつつ入学したものの、ここでは、自身の研究に対して指導教員からきめ細やかな指導と相談の機会を頻繁にいただけるので、それに支えられながら修士論文の完成に向けて取り組むことができています。また、集団指導ではコース内の専門分野の異なる先生方から多角的な視点で助言をいただくことができるとともに、自分とは全く異なるテーマの研究をしている他の学生の発表を聞くことで、日頃の自分にはない発見を得て、視野が広がります。私は授業の前後の時間には院生研究室で勉強をすることが多いのですが、国籍も年齢も様々な先輩や同級生に新たな刺激を受け、互いに励まし合える環境があることも、前向きに大学院生活を送れる要因となっています。
さらに、本研究科には日本語教師養成のための科目も多数設置されていることから、私自身の日々の教育実践に役立つ実用的な学びが多くある点も魅力の一つです。このように恵まれた環境の中で、自分の大好きな仕事に活かせる研究に取り組めることに、日々感謝しています。

FERREIRA ANDRADE Samara Mabelli さん(博士後期課程 2 年)
神戸大学国際文化学研究科博士前期課程卒業
研究テーマ:「現代小説における比喩表現の翻訳‐吉本ばなな著『TUGUMI』の葡英語訳を例に‐」

ことばには、我々が通常気にかけない不思議な力が宿っています。これは、目にも見えず、耳にも聞こえない、心身を巡る神秘性としか言いようがないものかもしれません。文字通りだけで我々が知覚することは言い尽くせません。一人の人が実感することを表現するには、ことばを巧みに操作することによって奥深くに潜んでいる多層的な意味を浮き彫りにすることが必要です。このように、文字の壁の向こうにある何らかの意図が表現され、「心を映す鏡」のように心から心へのコミュニケーションが成立します。印象的なイメージを想起させ、想像を掻き立たせたり、感情を刺激したり、説得を受け入れさせたりするための巧妙な言語操作は、古代ギリシャに遡る修辞技法というものです。これは、多岐に渡るコミュニケーションの場で現れ、新たなレンズを通して物事を見せることを可能にする重要な技術です。ただし、それらの表現は、我々が成長する中で積み重ねていく経験及び育まれる価値観や世界観に基づき、一人一人が持つ社会文化背景知識に依拠するため、必ずしも普遍的であるとは限りません。そこで翻訳者は、両方の文化に関する豊かな知識を持つ仲介者として、起点文化の行間に内在する「心」を解釈し、目標文化にとって同様の効果を再現するための工夫を凝らし、オリジナルの声を再構築します。
「ことばの不思議な力」への好奇心は、私の研究のエンジンをかけ、言語コミュニケーションコースは、学際的な研究への資源を提供して燃料を注いでくれます。翻訳研究、レトリック、比較・対照言語学、物語論などの言語を多文化的に扱う学問を、世界の隅々から来た学生と共にグローバルな観点から学び、視野を広げる機会に恵まれた素晴らしい環境が整っています。また、留学生として自分のニーズに応える指導、支え合う先輩や後輩、柔軟な考え方を持ち、新規性を歓迎する方々と出会う場所を見つけたと感じます。皆さんも是非私達と一緒に、ここで研究への道を歩みましょう。

[画像:修了学生からのメッセージ]


韋 恩琦さん
(2023 年度博士後期課程修了)
研究テーマ:「JSL 学習者による場所を表す格助詞「に」、「で」、「を」の学習における訂正フィードバックの効果に関する研究」
現在、追手門学院大学共通教育機構専任講師

私は中国の大学で日本語を専門として 2 年間勉強をしました。その後、大学三年生の時に日本の大学に留学したことをきっかけに来日しました。日本に来てからは、教科書で習った日本語と日本語母語話者が実際に使用している日本語との差に気づき、 博士前期課程では三者会話場面における中国人日本語学習者と日本語母語話者の会話の仕組みについて研究しました。しかしその後、日本に長年滞在している人や、日本語能力試験 N1 級に合格した上級レベルの学習者でも、日本語の格助詞などの習得困難項目を母語話者と同様には使いこなせないという問題を新たに認識しました。そこで、 博士後期課程ではどのようなフィードバックを学習者に与えれば、より効果的に第二言語を習得できるのかについて研究しました。
言語コミュニケーションコースでは、第二言語習得(SLA)、翻訳理論、対照言語学、認知言語学など多種多様な言語学に関する専門知識を、 一流の先生方の下で学べる環境が整っています。また、 学術的な知識だけでなく、自立的な思考力、さらに社会人としての心構えと「人間力」 についても学習できます。 言語学を探究したい人にとって、 最高の場所であると私は思います。
私は在学中、 専門分野の学習だけでなく、 在日外国人児童への支援活動及び、トロント大学と神戸大学が企画した英語プログラムへの参加、さらには指導教員からもティーチングアシスタント(TA)やリサーチアシスタント(RA)といった貴重な機会をいただきました。これらのお仕事に従事することを通じて、自身の弱みや不足点を少しずつ改善しつつ、人間の基礎力、批判的な思考力と総合的な学習力も身につけられたように思います。
最後に、 改めて研究科の先生方には感謝の気持ちを表したいと思います。国際文化学研究科はまるで自分のもう一つの 「Family」 のような存在です。 皆さんもぜひ私たちの「Family」 の一員になってください!

朱 藹琳さん(2020 年度博士後期課程修了)
広東工業大学日本語学科卒業、 神戸大学大学院国際文化学研究科博士前期課程・博士後期課程修了
研究テーマ:「コミュニケーション摩擦場面から見た通訳者の倫理-中国の日系企業における社内通訳者を中心に-」
現在、 愛知大学現代中国学部嘱託助教

私は大学卒業後、 中国の日系企業に翻訳・通訳者として入社し仕事をしてきました。そこで翻訳・通訳の現場における異文化間コミュニケーションの問題に直面し、その解決策を探る中でトランスレーション・スタディーズに出会いました。翻訳研究という学問は幅広くて包容力があり、 言語学や異文化間コミュニケーション論は勿論、社会学や文化人類学など様々な分野の理論も取り入れ、様々な切り口から実際の翻訳・通訳行為を解明しようとしています。このような学問をさらに追究したいと思い、在学中、私は言語コミュニケーションコースをはじめ、他コースの授業を履修して分野をわたって知識を学び、博士論文では通訳者の倫理に重点を置いて研究しました。授業で先生方の話を聴きながら他の院生たちと議論を交わし、多様な視点を得ながら学ぶことができました。
また、博士論文に対しても指導演習や報告などを通して、指導教員をはじめ、コース内・研究科内の先生方からきめ細かなご指導をいただきました。留学生活や進路などプライベートの悩みに関する相談も親切に乗っていただき、大変お世話になりました。博士前期課程において日本語教師養成サブコースを履修したことで、教育学、第二言語習得論などの内容や、他コースの方々と意見をシェアしたり、 模擬授業をしたりする経験は、 現在の仕事にも大いに役立ちます。さらに、授業のみならず、院生研究室でも交流の機会がたくさんあり、各自の言語や文化などについて話し、「カルチャーショック」を受けることも大きな楽しみです。
このように、国際文化学研究科・言語コミュニケーションコースで過ごした楽しくて充実な5 年間は私にとって大切な思い出です。皆さんもぜひここで、多様な文化や多様な観点とぶつかりながら、好きなことを研究して頑張ってください。

[画像:qa]


言語コミュニケーションコースの授業の特徴としてどのようなことが挙げられますか?

本コースの教員は、留学生に対する日本語教育や日本人に対する外国語教育について豊富な経験をもっています。多様な言語的、文化的背景をもつ学生の興味関心にもとづいて、言語とコミュニケーションの問題を多角的に論じる授業を行っています。

本コースではどのようにして修士論文や博士論文のテーマが決められているのでしょうか?

本コースでは、入学してきた学生の問題意識や関心・興味を第一に考えています。したがって院生は、指導教員と相談しながら自らテーマを決めることになります。

指導教員にしか論文指導をしてもらえないのでしょうか?

例えば前期課程では1 年次後期から2 年次後期にかけて、計3 回程度コースの教員・院生の前で修士論文・修了研究レポートの中間発表をする機会を設けています。つまり、修士論文・修了研究レポートの作成をコース全体でサポートする体制をとっています。

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