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【氷の下の資源争奪戦に明け暮れる石油メジャー、水と農地を買い漁るウォール街のハゲタカ、「雪」を売り歩くイスラエルベンチャー、治水テクノロジーを「沈む島国」に売り込むオランダ天候支配で一攫千金を目論む科学者たち......。日本人だけが知らない地球温暖化ビジネスの実態とは?】
著者が取材した人物たちの思考を要約すると、
1)温暖化現象で困る国(ひと)もあれば得する国(ひと)もある。
2)気候変動は儲けの機会到来である。
3)規制して環境保護に努めるのではなく科学技術の進歩によって乗り越えるべき。
ということである。非常に楽観的であるし他人事のようでもある。
環境破壊という認識ではなく、環境の変化だと捉えているためだろう。変化に適応するものが生き残るのだという、ダーウィニズムである。
これによって起こりえる現象として、
1)環境難民が増大する。
海面上昇や旱魃の影響で土地に住めなくなったひとびとは、当然よそに移住せねばならなくなる。だが、そのひとびとをどこが引き受けるのか。
2)新たに発見された(採掘可能となった)資源争奪の争いが起こる
氷に覆われた北極海が溶けるとどうなるか。海底に眠る石油などの資源争奪戦につながっていくのが人類の性。
凍結した海に船をだせるとなると、その航路を自由に使いたい国々との間で、領土問題が起きることにもなる。
気候変動の恩恵を受けることになった土地のひとびとは、国家からの独立を求める動きもでると考えられる。
3)飲料水争奪戦
これがいちばん気がかりである。1と2は、強欲な連中を呆れて見物していても構わないが、飲み水の取り合いとなると、万人の問題であり静観していられない。だが、予測されているところでは今世紀中にも、淡水が石油以上の価値を持つ資源になりそうなのだ。
砂漠の国イスラエルは、自慢の淡水化技術を海外に売り出し中らしいが、淡水化するにも燃料が当然必要なわけであるから、けっして夢の技術などではないのである。
飲み水に困った経験がないひとが(おそらく)多い日本人にとっても、すくなくともこの問題は他人事ではないはずである。
著者は取材をとおして知り合ったひとたちの言動を、淡々と記していくだけで自身の思想や感情を全面にはだしていない。なにを思うかは読者次第という姿勢ではあるのだが、行間から憤りは感じる。
全編とおして明るい気分では読めないのは、現実がそれだけ難問を抱えているというだけの話ではなく、どんなやっかいな事態になろうとも、ひとの投機的性向はなくならないという点にある。
その、一山当ててやろうの精神が、技術革新と発明をもたらして、人類の前に立ちはだかる暗雲を払ってくれるとよいのだが。
Newtype 2018年2月15日 (木) 15時51分 書籍・雑誌:△しろさんかく | 固定リンク
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