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アメリカはなぜイスラエルを偏愛するのか- 超大国に力を振るうユダヤ・ロビー
佐藤唯行:著,ダイヤモンド社( 2006
読後感:☆
【世界を裏で支配するという「ユダヤ陰謀論」。
そして、ユダヤ人団体が主張する「控えめなユダヤ論」。
真実は、その間にこそ、存在する―。
ユダヤ・ロビーと彼らに同調する人びとが、中東の孤児だったイスラエルを支えるため、アメリカの政策をいかにして傾けていったのか。
F・D・ルーズベルトからオバマまで、各政権の内情を分析しながら、ユダヤ系パワーの深奥に迫ってゆく。】
第1章 最強のユダヤ・ロビー 第2章 ユダヤを思いやる米国議会 第3章 イスラエル=キリスト教右派同盟の誕生 第4章 ユダヤ人議員の実力 第5章 ユダヤ・マネーの仕組み 第6章 大統領とユダヤ人社会1—F.D.ルーズベルトからジョンソン 第7章 大統領とユダヤ人社会2—ニクソンからオバマ
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出自を異にする人たちによる、移民国家の米国内において、ユダヤの影響力が抜きん出ているように見える。実際、そうでなければ何故、米国政府がイスラエルを擁護し続けるのかが分からない。
中道派のユダヤというのもいるようだが、やはりイスラエルを約束の地と認識する正統派ユダヤは、持てる財力をイスラエルを支援する為に投入するのである。
当初、脆弱だったAIPACが急成長できたのは次の四つの能力を磨いてきたことによる。第一は「議員が必要とする情報の提供者となる」ことであった。AIPAC職員の多くは、実は高度な情報分析者として、専門分野の調査活動に従事しているのだ。彼らは、議員たちが国会での答弁の際に必要とする中東情勢から最新のミサイル技術にいたる幅広い争点に関する詳細な情報を入念に調べあげ、その要旨を議員たちが必要とする日時までに提供してきた。これこそ、議員たちの判断に対して彼らが影響力を行使できる秘訣なのである。(p16,第1章 最強のユダヤ・ロビー)
アメリカには内陸部に住む保守的な人々を中心として、諸外国への経済援助に消極的な人々が数多く住んでいる。世論調査によれば、国民の七五パーセントがアメリカ政府は海外援助にあまりに予算を使いすぎていると答えている。それにも拘らず、連邦議会内の親イスラエル派議員たちは、イスラエル政府が要求する金額をほぼ一〇〇パーセント満たす援助法案をこれまで一貫して可決し続けてきたのである。(p36,第2章 ユダヤを思いやる米国議会)
75%が批判的にも拘らず、それを上回る影響力を持つ2%の民。知力、財力、それらを総合したうえでの政治力。それに宗教的信念によるユダヤ以外の支援も加わる。強い訳だ。
そうして米国にとってのイスラエルは、他の国とは位置づけが違ってくることになる。
例えば、アメリカ政府から諸外国へ支給される援助金は、その流れを米国際開発局の職員たちが用心深く監視できるように、年四分割して与えられている。ところが、イスラエルだけは各会計年度の初めに一括して援助金を受給できるのだ。これらの援助金のうち、当面、使用しない分は米連邦準備銀行へ直接預金され、年利八パーセントの利子を稼ぐことが許されている。イスラエルはこの「特権」を与えられた唯一の国なのである。(p38,同)
なんというか、この本読んでいてまず思ったのは、いつか日本にとって朝鮮半島が、米国にとってのイスラエルと同じ位置づけになってしまうのではないかということであった。考えただけで恐ろしいんだが。
外国人の献金が禁じられているにも拘らず、実際には、それが起きているという事実があるわけだ。額は勿論、ユダヤとは比べものにならないとしても、既に道筋はできてると思われてならない。内外の親朝鮮勢力が結託して、半島を特別扱いしだすなんてことになったら、たまらんな。
ユダヤ・ロビーがその目的を遂げることができた原因を追求すれば、彼らと手を結ぶ強力な同盟者の存在が浮びあがってくるのである。その同盟者とは、膨大な数(一説に七〇〇〇万人)のキリスト教右派の信徒たちであり、同時に海を超えたイスラエルの右派政党である。(p56,第3章 イスラエル=キリスト教右派同盟の誕生)
第16代イスラエル首相のイェフード・オルメルトが"アメリカ国内で恒久的な募金活動を行なうために設立した「イェフード・オルメルト財団」の代表が、実はユダヤ・ロビーAIPACの財務責任者でもある"(p57,同)
外国の議員が、自国の支援の為に募金活動をしに来るというのだ。イスラエル以外でこんなことやっているところはあるのだろうか?
それにしても、総人口の2%弱にすぎないユダヤが、全米上位100の大富豪の内、32人も占めるのだそうである(本書刊行時で)。 そして、この経済力がイスラエルを守る為に、献金として使われている。
これらの献金はほとんど全て国政選挙に投入される。州や自治体の選挙には投入されないのである。州や自治体を押さえたとしても、州や自治体はアメリカ・ユダヤ人にとり最優先の政治目標であるイスラエルの安全保障のために何ら実行的手だてを講じることができないからである。ここに「ユダヤ・マネー」投入戦術の特色がある。つまり、持てる金を様々なレベルの選挙に分散して使うのではなく自分たちにとって最も重要な大統領選挙と連邦議員選挙に集中して資金を投入するのである。これが重点特化の戦術なのである。(p114,第5章 ユダヤ・マネーの仕組み)
選挙には金がかかる。TV・CMの放送枠を確保するためにも、ユダヤの経済力の持つ魅力に抗えなくなってしまうようだ。草の根の市民運動で、ユダヤ・マネーに勝てるだけの献金をするのは難しいのだろうか。
草の根の運動の場合、市民一人ひとりの利害はなかなか一致することがないという面もあるからだろうか。その点、宗教的信念による結びつきは強いといえる。
ならば、同じセム系一神教のムスリム社会はどうなのか。選挙に於いて、なんらかの影響力を及ぼしているのだろうか。
アラブ産油国の王族たちが握る莫大なオイル・マネーの恩恵は、在米アラブ系のもとには届かないのである。封建的意識の強い王族たちにとり、アメリカ国内で暮らすアラブ系の政治的地位向上など、そもそも念頭にないからである。(p74,第3章 イスラエル=キリスト教右派同盟の誕生)
頭脳で稼ぐユダヤと、天然資源の恩恵に浴しているだけの富豪では、金の使い方が違うようである。多分、こういうことだから堕落したムスリム富豪に、ビンラディンのような男の怒りが向けられていくのではないか。
「テロリスト・ハンター」を読む限りでは、在米ムスリムの団結は、過激派の集会になりがちという印象が強い。政治力はユダヤの方が上のようだ。
ちなみに、このユダヤ・ロビーの意に反する態度を示した場合どうなるのか。カーターや父ブッシュは、イスラエルに批判的な姿勢を見せたために、痛い目をみたようだ。
一九九二年選挙におけるブッシュの敗北は、その後の大統領たちに忘れがたい教訓を与えたと言われる。それは中東和平仲介役としてイスラエル政府に圧力をかければ、選挙で高い代償を支払わされるという教訓であった。(p171,第7章 大統領とユダヤ人社会II)
父ブッシュは、冷戦の勝利と湾岸戦争における勝利で、強気であったようだが結果は敗北だった。ユダヤの票がクリントンに向かったのが大きかったという。
しかし、2%弱の人口のユダヤが、例え政治献金によって議員の政策に影響を及ぼすことができたとしても、選挙は有権者の投票なわけだから、ユダヤ票以外の動きが重要になってくるはずだ。ユダヤの影響が強い候補者を避けて投票するということもできるはずなのに、そういう候補者が当選してしまうというのは、やはり耶蘇教右派の勢力が多いということになるのだろう。
この手の連中には、キリストの再臨の為には、世界最終戦争が起きなければならないとマジで考えている者もいるらしいから恐ろしい。
ただし、ユダヤ・ロビーが決して万能ではないことも分かってはいる。米国の国益に反する事に関しては、さすがに受け入れられない。例えば、イスラエルが自国製の戦闘機をシナに売るといった場合である。
だから、そのときは逆にユダヤ・ロビーはイスラエルを説得する立場となる。米国の支援抜きでイスラエルの存続はありえないと分かっているからだろうか。
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この本、著者の指摘したいことが結びに完結にまとまっているので、はっきり云ってそこだけ読めば充分だと思う。
それとこの著者、獨協大学教授という肩書きで専門はユダヤ人史とのことだが、本書に関しては、自分の足で集めた情報でなく公表されている資料(新聞・雑誌・書籍等)を論拠としているだけのように見受けられる。処々、「〜と言われている」という表現があり、調査が足らんのじゃないかとの疑念も起きる。
云ってみれば、田中宇みたいな感じか。その点に不満が残る。
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