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2023年05月03日

学習者にchatGPTで書いていないことを証明してもらう方法

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冒険家の皆さん、今日もラクダに揺られて灼熱の砂漠を横断していますか?

本日ご紹介したいのは、学習者にChatGPTで書いていないことを証明してもらう方法です。これを話題にする理由は、普通の学校で、まさにChatGPTで書いてきたような宿題の提出が非常に増えてきたというのがあちこちで聞こえるようになってきたからです。この数カ月前には考えられていなかったような問題があちこちで起きているというのが現状だと思います。

僕は基本的にはChatGPTで書いても全然いいと思っています。あるいは、ChatGPTが知らないような自分の固有の体験に基づく意見や、自分の固有の体験に基づいて一つの客観的な事実について考えるなど、そういうことが僕は大事だと思っています。今の時代の人工知能を用いた作文などの課題としては、そういうものが求められていると思います。

しかし、そうは言っても、まだ4月で、そういう準備ができていないまま新しい年度が始まってしまい、それでこの1年は今まで通りにやるしかないという先生や学校もたくさんいらっしゃるのではないかと思います。そういう場合に、学校の方針としてChatGPTは禁止だというところもあるかもしれません。

あるいは課題の内容によっては、やはりChatGPTで書いたら意味がないような場合もたくさんあるので、それは今の時代となっては課題の方が間違っていると僕は思いますが、それを変えられない状況もあると思います。そういう場合に学習者の皆さんに、これはChatGPTで書いていないということを証明してもらう簡単な方法がありますので、それをご紹介したいと思います。実は、このことは僕のブログでも10年以上前から言っているのですが、要するに「変更履歴」というものです。これを使うことで、「学習者の方が自発的に私はChatGPTで書いていないですよ、この変更履歴を確認してもらったらわかりますよ」という風に言うこともできます。

あるいは、学校の方針としてchatGPTが禁止されているために皆さんが「chatGPTで書いてはいけません」と言わなければならない状況もあるかもしれません。そういう状況で先生が宿題を出す際には、たとえばGoogle Classroomを使用している場合、Googleドキュメントとの親和性も高いため、Googleドキュメントで書いてもらうことが多いと思いますが、宿題を出す際に課題の内容として「最初から同じGoogleドキュメントで書いてください」と指示をし、そしてそれだけではなく、「提出された後で変更履歴の確認もします」と説明して、「別のところ(chatGPTとかDeepLとか)で書いてからコピペをした場合、変更履歴ですぐにわかりますので、そういうことはしないでください」ということを課題の指示として記載しておくと良いのではないかと思います。少なくともそうすれば、外部で書いてきてただGoogleドキュメントにコピペしただけのものか、あるいは白紙の状態から書いていたかどうかもわかります。

それでは、提出されたGoogleドキュメントでどのように変更履歴を確認すれば良いかというと、キーボードのショートカットではCtrlキー+Alrキー+Shiftキー+Hです。HはおそらくバージョンヒストリーのHの頭文字でしょう。私はGoogleドキュメントを英語のインターフェースで使っていますが、「File」メニューの中に「version history」というのがあります。そこを見ると同じように変更履歴を見ることができます。ご自分で白紙から作成した文書ファイルを開いてみると、誰でも簡単に確認できますが、1分、2分という単位で履歴が残っています。例えば、午前8時37分に書いたバージョンと8時38分に書いたバージョンのように、分単位で履歴が残っています。ですので、そのドキュメントを作成した人が、どのようにその文章を作っていたかというのも本当に一目で見ることができます。

さらに、文章の書き方などを指示したいあるいは指導したい場合は、バージョンに名前をつけることもできます。最初にブレインストームを行うときから、ずっと同じファイルで作業を行うといいでしょう。ブレインストームでは文でなく単語などで考えることが多いですが、それらは日本語である必要はなく、学習者の母語や英語などの媒介語でも構いません。そして、ブレインストームが終了した段階で、そのバージョンに名前を付けることができます。例えば、「ブレインストーム終了」といった名前をつけることができます。

なお、これはファイルに別名をつけて保存するのではなく、同じファイルのバージョンに名前を付けるだけです。これも、「file」メニューから「version history」のところで行うことができます。そして、ブレインストームが終わった後に自分で文章を書いて、それを第1稿として、そのバージョンに名前を付けます。

第1稿が終わったら、ペアワークの相手や同じクラスの他の学習者に見てもらい、その後に修正を行い、それを第2稿として、同じファイルのまま別の名前でバージョンに名前を付けます。たとえば「第2稿」というバージョン名を付けた後、提出前にタイプミスなどの修正を行い、「最終版」として名前を付けて、学習管理システムやGoogleドキュメントなどに提出するといった方法が良いと考えられます。

例えばブレインストームは今日までで、第1稿は明日まで、ペアで誰かの同級生に見てもらうのがあさって、そして同級生に見てもらった後の修正がしあさって、そして最後に最終版を出すのがその翌日などと、それぞれに締め切りをつけるのもいいと思います。それもGoogleドキュメントの場合は、それぞれの段階で提出していなくても、先生が学習者の進捗状況を見ることができますから、締め切りを一つ一つのバージョンに設定しておくと、ちゃんと学習者の時間管理などの方も支援することができるようになるのではないかと思います。

さて、今日ご紹介した問題は宿題にChatGPTで書いたらしいのが出てきて、困っているということです。ただ、そういう問題は実は評価に対する考え方に問題があるから、こういうことが起きている可能性もあります。つまり、文書を作成する過程を評価するのか、あるいはその成果物だけを評価すればいいのかということです。成果物だけを評価するのであれば、ChatGPTを使ってもいいと思います。

ただし、その場合はChatGPTを使ったらみんな同じようなものになってしまうので、「成果物だけを評価しますよ」と言うのであれば、評価基準として必ず「自分の固有の体験に基づく考えを入れなければいけない」というようにしておくといいと思います。ChatGPTの時代では、まさに他の人とは違って、僕はこう思うんだということが問われる時代になっていますので、こういう評価は本当に必要だと思います。

逆に言うと、自分の固有の体験に基づく考えなど、そういったものが必要ないもの(例えば、日本の首都は東京であるというような一般論)、そういう一般論は、もう人工知能に任せてしまえばいい時代です。あるいはグーグル検索に任せてしまえばいい。そういう時代なので、そういうものを成果物として書かせる時代ではもうないと思います。ですので、基本的には僕はそのChatGPTを使って何か作文やレポートを書くというのはそれほど反対はしていませんが、最初にも言いましたように、今年の新しい年度が始まってしまって、それで今年いっぱいは今までのコースデザインでやらなければいけないという状況も多いようです。そういう人向けに今日は、この「変更履歴」を使って変更履歴の確認を行い、学習者の皆さんがChatGPTではなく、自分の指やキーボードで作文を書くようなレポートを書く方法をご紹介しました。

そして冒険は続く。

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【参考資料】
この記事の音声版
https://spotifyanchor-web.app.link/e/mNSZpjWxuzb

むらログ: レポートのコピペ問題は「編集履歴」で一発解決! http://mongolia.seesaa.net/article/275033229.html

むらログ: プロセスも評価する作文コンテスト http://mongolia.seesaa.net/article/EssayContest.html

むらログ: DeepLにどう向き合うか http://mongolia.seesaa.net/article/490777563.html


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