発がんリスクを比べてみよう

放射線による発がんリスクと、他の要因による発がんリスクについて

放射線被ばくにより、傷ついたDNA(遺伝子)が正しく修復されないと、がんの原因の一つになることは放射線の人体への影響ページでも紹介しましたが、私たちが生きている上で、がんになる可能性や、そのリスクとなる要因には様々なものがあります。

東京電力福島第一原子力発電所の事故による放射線被ばくのリスクを、喫煙等のみずから選択できる他のリスクなどと、単純に比較することは必ずしも適切ではありませんが、放射線被ばくと他のリスク要因との比較は、がんになるリスクのレベルを理解するためには有効であるといえます。

一般的な発がんリスク要因が、どの程度の被ばく線量に相当するのか、シーベルト(放射線の人体への影響を示す単位)に置き換えてみましょう。

例えば、喫煙は1,000〜2,000ミリシーベルト、野菜不足でも100〜200ミリシーベルト相当に換算されます。

参考:宇宙から、そして大地から受ける自然放射線や、食物や空気中のラドンなど、自然由来の放射性物質から受ける放射線は、合計すると年間で2.1 ミリシーベルト(日本平均)

  • リスク評価の考え方
    放射線防護上は、100ミリシーベルト以下の放射線量であっても、被ばく線量に比例して発がんリスクが増加するという考え方を採用しています。
    この考え方にしたがってリスクを評価した場合、年間20ミリシーベルトを被ばくすると仮定した場合のリスクは、他の発がん要因(喫煙、肥満、野菜不足など)によるリスクと比べても低いこと、また、放射線防護措置に伴うリスク(避難によるストレス、屋外活動を避けることによる運動不足など)と比べられる程度であると評価されています。

低線量被ばくによるがん死亡率リスクはあるのですか?

広島・長崎の原爆被爆者約12万人規模の疫学調査では、原爆による放射線の被ばく線量が100ないし200ミリシーベルト(短時間1回)を超えたあたりから、被ばく線量が増えるに従ってがんで死亡するリスクが増えることが知られています。

一方、それ以下の領域では、得られたデータの統計学的解析からは放射線の被ばくによってリスクが実際に増加しているかどうか確認できません。

また、100ミリシーベルト以下の被ばく線量では、被ばくによる発がんリスクは生活環境中の他の要因による発がんの影響によって隠れてしまうほど小さいため、放射線による発がんリスクの明らかな増加を証明することは難しいということが国際的な認識となっています。

<放射線と生活習慣によってがんになるリスク>

【出典データ】国立がん研究センター

(注記)相対リスクとは、図にある生活習慣因子を持つ集団のがん発生率を因子を持たない集団の発生率で割ったものであり、因子を持たない人に比べて持っている人ががんに罹る割合が何倍高いかという数値。

(注記)この表は、成人を対象にアンケートを実施した後、10年間の追跡調査を行い、がんの発生率を調べたもの。例えば、アンケート時に「タバコを吸っている」と回答した集団では、10年間にがんに罹った人の割合が「吸っていない」と答えた集団の1.6倍であることを意味している。

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