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鷺宮定跡

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
9 8 7 6 5 4 3 2 1  
香 桂   金       桂 香 一
  王 銀   金 飛 銀     二
  歩 歩       角 歩 歩 三
歩     歩 歩 歩 歩     四
              歩   五
歩   歩   歩   歩     六
  歩   歩 銀 歩     歩 七
  角 玉 金 金 銀 飛     八
香 桂           桂 香 九
さんかく3八飛まで
鷺宮定跡基本図

鷺宮定跡(さぎのみやじょうせき)は将棋の戦法。昭和50年代(1975年 - 1985年)後半、プロ将棋棋士の青野照市が創案し、米長邦雄がタイトル戦で連採したことで広まった。

「鷺宮」の名称は青野と米長がともに東京都 中野区 鷺宮に住んでいたことに由来する[1]

背景

[編集 ]

対四間飛車左銀急戦の一種である。四間飛車側のしろさんかく3二銀型は居飛車急戦さんかく4五歩早仕掛けなどの手段を封じ、逆にしろさんかく4五歩からの角交換などの手段をみて銀の位置を低く備えているが、第1-1図の居飛車舟囲い急戦基本図からしろさんかく6四歩の高美濃を目指す指し方ではさんかく3五歩と仕掛ける山田定跡が有力であった。

以下しろさんかく同歩さんかく4六銀しろさんかく3六歩さんかく3五銀しろさんかく4五歩さんかく3三角成しろさんかく同銀さんかく2四歩しろさんかく同歩さんかく同銀しろさんかく同銀さんかく同飛しろさんかく3三角さんかく2一飛成しろさんかく2二飛さんかく同竜しろさんかく同角という変化で、先手がいったん角成を受けるとしろさんかく2八飛と先行され、しろさんかく3六歩の効果で桂馬が逃げられず、桂香次々取られて不利を被る。

これに対してさんかく6八金上として、そこでしろさんかく6三金またはしろさんかく7四歩ならば、前述の仕掛けを決行し、今度はしろさんかく6三金型ならばさんかく5五桂、しろさんかく7四歩型に対してはさんかく6六桂(第1-2図)と先手を取りながら角道を遮断できて飛車打ちを先行でき、先手が戦える形勢である。後手にも変化があるものの、飛車先が突破できれば、概ね先手互角以上に戦えていた。

このため、四間飛車側も飛車先突破を容易にしない指し方を工夫する。これがしろさんかく6三金またはしろさんかく7四歩に変えて、しろさんかく1四歩やしろさんかく5四歩とする指し方であり、これなら前述の順からのさんかく5五桂やさんかく6六桂が利かない。このため、今度は居飛車側が基本図のしろさんかく6四歩からすぐさんかく3五歩と仕掛ける順に戻り、途中さんかく2四歩の前にいったんさんかく7七角(もしくはさんかく8八角)と自陣角を打ってからさんかく2四歩とする順を開発した。

四間飛車側もさんかく2四歩が来る前にしろさんかく6五歩(しろさんかく6四角を用意)やしろさんかく5四角(飛車先遮断と2一の桂にひもをつける)などの工夫をしていたが、この手段の他に基本図でしろさんかく6四歩に変えて先にしろさんかく5四歩とする手段で対抗。これはさんかく7七角の際にしろさんかく5三角を用意した手であり(第1-3図)、さんかく2四歩しろさんかく同歩さんかく同銀にしろさんかく2七歩〜しろさんかく2六歩の飛車先遮断を可能にした。

これに対しても山田定跡ではしろさんかく5四歩でさんかく6八金上としろさんかく6四歩の交換を入れずさんかく9七角と覗く手段を用意し、以下さんかく8六角 - さんかく6八角 - さんかく6六銀、またはさんかく7九角 - さんかく6六銀で引き角戦法にして飛車先突破を狙う手段を編み出す。但しこれも、森安流の左辺を軽くかわす方法が編み出され、居飛車側の勝率が芳しくなくなり、また第1-4図のようにしろさんかく6四歩としろさんかく5四歩を先手陣の攻撃陣形が整う前に指してしまえばどちらも防ぐことができる。これについてはそもそも四間飛車側が先手の場合、通常の駒組進行で両方の歩が突く状態になるため、山田定跡は後手番では指すことができない。

しろさんかく持ち駒 なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1  
香 桂   金       桂 香 一
  王 銀   金 飛 銀     二
  歩 歩 歩 歩   角 歩 歩 三
歩         歩 歩     四
              歩   五
歩   歩   歩   歩     六
  歩   歩 銀 歩     歩 七
  角 玉   金 銀   飛   八
香 桂   金       桂 香 九
さんかく持ち駒 なし
第1-1図 対四間飛車急戦基本図[2]
しろさんかく持ち駒 飛銀歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1  
香 桂   金         香 一
  王 銀   金     角   二
  歩     歩       歩 三
歩   歩 歩           四
          歩       五
歩   歩 桂 歩   歩     六
  歩   歩   歩     歩 七
    玉 金 金 銀       八
香 桂           桂 香 九
さんかく持ち駒 飛角銀歩
第1-2図 さんかく6六桂まで
しろさんかく持ち駒 歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1  
香 桂   金       桂 香 一
  王 銀   金 飛       二
  歩 歩 歩 角   銀 歩 歩 三
歩       歩         四
          歩 銀 歩   五
歩   歩   歩   歩     六
  歩 角 歩   歩     歩 七
    玉   金 銀   飛   八
香 桂   金       桂 香 九
さんかく持ち駒 なし
第1-3図 しろさんかく5三角まで
しろさんかく持ち駒 なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1  
香 桂   金   金   桂 香 一
  王 銀     飛 銀     二
  歩 歩       角 歩 歩 三
歩     歩 歩 歩 歩     四
              歩   五
歩   歩   歩   歩     六
  歩   歩 銀 歩     歩 七
  角 玉   金 銀   飛   八
香 桂   金       桂 香 九
さんかく持ち駒 なし
第1-4図 しろさんかく6四歩まで

このため、後手番での対振り飛車速攻作戦は第1-5図などのように棒銀が使われていたが、第1-6図のように森安流のさんかく6七金が指されるようになって、四間飛車側の対策が進んだ。

以前はさんかく6七金ではさんかく6七銀と指し、以下しろさんかく7五銀さんかく5五歩しろさんかく同角さんかく5六銀〜さんかく6五銀と指すことが多かった。第1-7図は第1-6図から数手進んだ局面で、四間飛車側は先手でさんかく3六歩が入っているので、第1-7図以下はさんかく7六銀しろさんかく7五歩ならさんかく6五銀しろさんかく同銀さんかく同桂しろさんかく6四銀にはさんかく6一銀があり、しろさんかく6二飛であるとさんかく5二銀しろさんかく同金にはさんかく2六角の活用がある。また、第1-7図でさんかく6六角もあり、以下しろさんかく4四銀はさんかく5四銀〜さんかく6六角〜さんかく5五角の狙い、しろさんかく6五銀にはさんかく1一角成しろさんかく2二銀さんかく1二馬しろさんかく6六歩さんかく6八金しろさんかく8九馬はさんかく6五桂から飛車交換後に飛車を打ち込まれる[注 1]

また第1-5図のさんかく3六歩に代えて先手はさんかく7五同歩もあり、以下しろさんかく同銀さんかく7六歩しろさんかく8六歩さんかく7五歩しろさんかく8七歩成さんかく7六飛しろさんかく8二飛さんかく7四歩しろさんかく7二歩さんかく7五飛と、軽くさばかれる。

しろさんかく持ち駒 なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1  
香 桂           桂 香 一
    飛   金 金 王 角   二
歩       銀 歩   歩   三
  銀   歩 歩   歩   歩 四
  歩 歩             五
    歩 歩 歩 歩 歩   歩 六
歩 歩   銀       歩   七
香   飛   金 角 銀 玉   八
  桂       金   桂 香 九
さんかく持ち駒 なし
第1-5図 さんかく3六歩まで
対四間飛車棒銀変化図1
しろさんかく持ち駒 歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1  
香 桂           桂 香 一
    飛   金 金 王 角   二
歩       銀 歩   歩   三
  銀     歩   歩   歩 四
  歩   歩           五
    銀 歩 歩 歩 歩   歩 六
歩 歩   金       歩   七
香   飛     角 銀 玉   八
  桂       金   桂 香 九
さんかく持ち駒 歩
第1-6図 さんかく6七金まで
対四間飛車棒銀変化図2
しろさんかく持ち駒 銀
9 8 7 6 5 4 3 2 1  
香 桂           桂 香 一
    飛   金 金 王     二
歩       銀 歩   歩   三
    銀   歩   歩   歩 四
  歩   銀           五
        歩 歩 歩   歩 六
歩 歩 桂 金       歩   七
香   飛     角 銀 玉   八
馬         金   桂 香 九
さんかく持ち駒 歩3
第1-7図 しろさんかく7四銀まで
対四間飛車棒銀変化図3

また、しろさんかく4二銀型にして早くに動いてもさんかく4六歩を保留した状態で第1-8図のようなさんかく5七角-6八金型にされる他、第1-9図のようにしろさんかく7五歩にすぐさんかく6五歩と角交換する手順があり、先手にはさんかく8三角やさんかく6一角、しろさんかく8二飛にはさんかく7一角など、角を打ち込む隙が多くある。

しろさんかく持ち駒 なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1  
香 桂       金   桂 香 一
    飛   金 銀 王 角   二
歩         歩   歩   三
  銀   歩 歩   歩   歩 四
  歩 歩             五
    歩 歩 歩       歩 六
歩 歩   銀 角 歩 歩 歩   七
香   飛 金     銀 玉   八
  桂       金   桂 香 九
さんかく持ち駒 なし
第1-8図 さんかく6八金まで
対四間飛車棒銀変化図4
しろさんかく持ち駒 なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1  
香 桂       金   桂 香 一
    飛   金 銀 王 角   二
歩         歩   歩   三
  銀   歩 歩   歩   歩 四
  歩 歩 歩           五
    歩   歩 歩     歩 六
歩 歩 角 銀     歩 歩   七
香   飛   金   銀 玉   八
  桂       金   桂 香 九
さんかく持ち駒 なし
第1-9図 さんかく6五歩まで
対四間飛車棒銀変化図5

以上のことから、居飛車はしろさんかく3二銀-しろさんかく5四歩待機型に対して、さらに後手番でも指せる、新たな対策が必要となっていた。

概要

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この定跡の居飛車側は、左銀待機型(しろさんかく3二銀またはさんかく7八銀)に対して袖飛車からさんかく3五歩(しろさんかく7五歩)と歩の突き捨てから左銀を繰り出して角頭を狙い、角交換から有利な態勢を作って攻めるのが直接の狙いとなる。

先手・後手いずれの四間飛車に対しても使用できる。左銀を5七に構えて繰り出す5七銀左型定跡のひとつであり、先に左銀が4三に上がって角頭に備えている形での4六銀左戦法などと組み合わせて1つの定跡体系となっていて、鷺宮定跡・山田定跡・4六銀左戦法・4五歩早仕掛けは、振飛車側の待機方法によって使い分けることができる。これは先手四間飛車であればさんかく5六歩とさんかく4六歩が指せれてから居飛車側はしろさんかく4二金とするので、相手にもう1手指させることになり、さんかく3六歩やさんかく6七金であると後々しろさんかく4四桂やしろさんかく3五桂が利く山田定跡に、さんかく6七銀ならば4六銀左(しろさんかく6四銀左)戦法や4五歩(しろさんかく6五歩)もしくは3五歩(しろさんかく7五歩)早仕掛けに移行されるからである。広義に鷺宮定跡というと、このことを示している。

狭義の鷺宮定跡は、まず第1-1図もしくは第1-4図で、しろさんかく5四歩もしくはしろさんかく5二金にはさんかく6八金と指してしろさんかく6四歩とさせてから、飛車を3筋に配置して仕掛ける。以下先手はさんかく3五歩しろさんかく同歩さんかく4六銀などという手順で角頭を攻めていく。

先手のさんかく3五歩に単にしろさんかく3二飛と回り、さんかく3四歩 しろさんかく2二角 (しろさんかく5一角ならさんかく4六銀)で、手順にさんかく4六銀と出させないようにするのは、さんかく2四歩 しろさんかく同歩 さんかく2八飛と戻して、居飛車側が良くなり、以下しろさんかく3四銀なら、さんかく2四飛 しろさんかく2三歩 さんかく2八飛で後手は動きがとれず、しろさんかく3四飛ならさんかく3五歩 しろさんかく同飛 さんかく2四飛 しろさんかく3三角 さんかく2一飛成 しろさんかく3八飛成の時に、強くさんかく3七桂(さんかく3九歩でも良いが)と跳ねる。さんかく3五銀と出た形は、棒銀(2六銀)がさんかく3五歩 しろさんかく同歩 さんかく同銀と捌けたのと同じである。

第2-1図で先手さんかく3八飛と寄った次の後手の指し手は、三通り考えられる。7四歩とほおっておいて居直る手、しろさんかく4三銀と角頭を守る手、しろさんかく4五歩と角交換を挑む手がある。

しろさんかく7四歩に先手はさんかく3五歩しろさんかく同歩と突き捨ててからさんかく4六銀と出る。この4六銀で平凡にさんかく3五同飛と走るのは、しろさんかく4三銀さんかく3六飛にしろさんかく3二飛と回り、次に(1)しろさんかく4五歩の决戦と、(2)しろさんかく2二角で飛交換を迫る手段がある。

(2)しろさんかく2二角では以下さんかく4六歩にしろさんかく2二角さんかく3五歩で一局。

(1)しろさんかく4五歩には、さんかく3三角成にしろさんかく同銀はさんかく3五銀とするが、しろさんかく2七角 さんかく3七飛 しろさんかく4九角成の手順がある。しろさんかく4九角成は、次にしろさんかく3六歩 さんかく同飛 しろさんかく2七馬で、先手の飛車をいじめる狙いであるが、これにはさんかく3四歩 しろさんかく2二銀にさんかく4四銀 しろさんかく同銀 さんかく同飛 しろさんかく2二角と引かせ、さんかく1八角がしろさんかく3六歩を防ぐと同時に、さんかく5九金で馬を殺す手が残る。

しろさんかく3八歩と垂らすなら、さんかく6九金と引いて手厚く馬を取りにいくことになる。

しろさんかく4五歩 さんかく3三角成にしろさんかく同桂と取り、さんかく3五銀しろさんかく2七角さんかく3七飛しろさんかく4九角成と成るのは、さんかく3四銀と進む手があり、しろさんかく3六歩 さんかく同飛 しろさんかく2七馬 さんかく3九飛 しろさんかく2八馬 さんかく3五飛で、次のさんかく3三銀成がきびしい。

後手のしろさんかく7四歩型は、玉が広くなる反面、このような変化で桂を渡す順になると、さんかく8六桂がピッタリの攻めとなってしまう。

ゆえに後手はしろさんかく3六歩の手筋で、同飛と取らせて2八の地点にスキをつくり、角の打ち込みに期待する。

しろさんかく2八角以下の指手は、さんかく3七角 しろさんかく同角成 さんかく同桂 しろさんかく2八角である。

しろさんかく4三銀ならば第2-2図のような進行になる。

しろさんかく なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1  
香 桂   金       桂 香 一
  王 銀   金 飛 銀     二
  歩 歩       角 歩 歩 三
歩     歩 歩 歩 歩     四
              歩   五
歩   歩   歩   歩     六
  歩   歩 銀 歩     歩 七
  角 玉 金 金 銀 飛     八
香 桂           桂 香 九
さんかく なし
第2-1図 さんかく3八飛まで
しろさんかく
9 8 7 6 5 4 3 2 1  
香 桂   金       桂 香 一
  王 銀   金 飛       二
  歩 歩     銀 角 歩 歩 三
歩     歩 歩 歩       四
            歩 歩   五
歩   歩   歩 銀       六
  歩   歩   歩     歩 七
  角 玉 金 金 銀 飛     八
香 桂           桂 香 九
さんかく なし
第2-2図 さんかく4六銀まで
しろさんかく 角歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1  
香 桂   金         香 一
  王 銀   金   飛     二
  歩 歩     銀   歩 歩 三
歩     歩 歩   歩     四
          歩 銀 桂   五
歩   歩   歩         六
  歩   歩   歩     歩 七
    玉 金 金 銀 飛     八
香 桂           桂 香 九
さんかく
第2-3図 さんかく3八飛まで

第2-2図以下は、しろさんかく3二飛さんかく3五銀しろさんかく1五角。さんかく3五銀にしろさんかく5一角では、さんかく3四歩で押え込まれるので、結果しろさんかく1五角とするが、先手はすぐにさんかく1六歩と催促することがある。さんかく4八に銀がいるので、通常の右銀3八飛戦法と違ってさんかく1六歩とでき、以下しろさんかく3七歩はさんかく同銀からさんかく3六銀〜さんかく1五歩。1六歩以下の指手は、しろさんかく4八角成さんかく同金しろさんかく5九銀さんかく6八銀成しろさんかく同金さんかく3六步しろさんかく同銀さんかく4一銀。さんかく4六歩に対してしろさんかく3七歩と打っても、銀がいるためにさんかく同銀と取られ、さんかく1五歩で攻めにならない。そこでしろさんかく4八角成からさんかく5九銀は、先手は素直にさんかく5八金右と応じる。以下しろさんかく3一飛と引き、さんかく5二銀成 しろさんかく同金 さんかく2二角(さんかく4四銀でもよい)しろさんかく3二飛 さんかく3四銀成 しろさんかく2二飛 さんかく4四角で、飛取りとさんかく7一銀を見せる。

但ししろさんかく1五角さんかく1六歩しろさんかく4八角成さんかく同金にしろさんかく2七銀さんかく3七飛しろさんかく2八銀不成さんかく3六飛しろさんかく1九銀成さんかく4一角しろさんかく2九成銀もある。この手順を避けるにはしろさんかく3二飛にさんかく5七銀上であらかじめ角切りに備えておく手もある。以下しろさんかく4二角さんかく3五銀しろさんかく3四歩さんかく4六銀引しろさんかく3三桂にはさんかく3七桂とし、しろさんかく2五桂さんかく同桂しろさんかく2四歩にはさんかく2三歩で飛車を回らせないようにする。以下しろさんかく2五歩さんかく2八飛しろさんかく3五歩さんかく2五飛しろさんかく2四歩さんかく2九飛などの進行で一局となる。

こうして先手が4六銀と出た時に、すぐにしろさんかく3二飛として居飛車側にやや押え込まれる順よりも、振り飛車側が角交換を挑む手が考えられる。

さんかく3五歩と突き捨ててさんかく4六銀と出た時に、しろさんかく4五歩と突いて角交換を挑む手である。

さんかく4六銀にしろさんかく4五歩さんかく3三角成しろさんかく同桂さんかく3五銀しろさんかく2五桂さんかく3四歩しろさんかく3二飛(第2-3図)が主要な定跡である。途中先手からさんかく3三角成しろさんかく同桂と角交換してからさんかく3五銀と進める形で、桂を捌かれるのはイヤと単にさんかく3五銀と出るのは、しろさんかく8八角成 さんかく同玉 しろさんかく3二飛 さんかく3四歩 しろさんかく4九角がある。

この時、四間飛車側には、常に2七角と打つ手や、3四歩、3七歩等の手があって、居飛車側は細心の注意を払わないと大変である。

しろさんかく2五桂にさんかく3四歩しろさんかく3二飛と回るこの手でしろさんかく3二歩とうけるのは、さんかく2八飛しろさんかく2四歩さんかく同銀。以下しろさんかく3四銀さんかく3五歩しろさんかく2三歩の時さんかく3三銀成の成り捨てが好手で、しろさんかく同歩にさんかく3四歩と銀を取れば、歩成りと桂取りがあるので、後手はこの順を避けている。

後手の3二飛以下しろさんかく1一香型を突いてさんかく3三角しろさんかく1二香さんかく1五角成と指すのが主要な変化。しろさんかく3二飛以下さんかく3三角に しろさんかく2七角は さんかく2八飛 しろさんかく3六角成 さんかく2六銀の手順が知られた。

その一方でしろさんかく1二香型だった場合はさんかく3三角よりもさんかく6六角またはさんかく3六飛が有力。後手番での鷺宮定跡では振飛車がさんかく9八香型になっていることが多く、むしろしろさんかく4四角またはしろさんかく7四飛が有力となる。振飛車側のしろさんかく6四角(さんかく4六角)の反撃が有力手段であるため、できれば振飛車側がしろさんかく6四歩(さんかく4六歩)型であることが望ましい。

さんかく6六角またはさんかく7七角と自陣から遠見の角を打つのは、しろさんかく3四銀と歩を払いさんかく同銀 しろさんかく3七歩 さんかく2八飛 しろさんかく3四飛 さんかく2五飛 しろさんかく3八歩成の変化となる。

しろさんかく3二飛にさんかく3六飛と浮いている手について、以下しろさんかく2七角 さんかく2六飛 しろさんかく4九角成 さんかく2五飛 しろさんかく3四銀 さんかく同銀 しろさんかく同飛 さんかく2三飛成 しろさんかく3八飛成の変化が考えられるが、ここから、さんかく1六角 しろさんかく2七歩 さんかく2一竜 しろさんかく3四歩 さんかく3九歩もしくは しろさんかく3八飛成にすぐにさんかく3九歩と打ち、しろさんかく4八竜 さんかく同金 しろさんかく同馬 さんかく3五角の変化でも、きわどいながら先手が残っているが、この順は後手がたくさん駒を持つ分手陣が薄くなる。しろさんかく3二飛に、重い手になるがさんかく3三角と打ち込んで、後手の飛車の捌きを押えるのも、この角は質駒ともなるが、飛車で取るとさんかく同歩成が銀に当たるために、ほとんど取れない角になってはいる。途中しろさんかく2七角に変えてしろさんかく3七歩と打つのは、さんかく同桂と取り、さんかく2六銀と引けば前述の順と同じことになる。

しろさんかく3六角成さんかく2六銀となると、以下後手がしろさんかく3四銀かしろさんかく2四歩ならさんかく1一角成と香を取っておいて、次のさんかく3九香と打つ手がある。しろさんかく3七歩はさんかく同桂 しろさんかく同桂成 さんかく同銀上で、成角の行き場がなくなる。

しろさんかく
9 8 7 6 5 4 3 2 1  
香 桂   金     角 桂 香 一
  王 銀   金 飛       二
  歩 歩       銀 歩 歩 三
歩     歩 歩   歩     四
          歩   歩   五
歩   歩   歩   歩     六
  歩   歩 銀 歩     歩 七
    玉 金 金 銀 飛     八
香 桂           桂 香 九
さんかく なし
第2-4図 さんかく3一角まで
しろさんかく なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1  
香 桂   金       桂   一
  王 銀   金 飛 銀   香 二
  歩 歩 歩     角 歩 歩 三
歩       歩 歩 歩     四
              歩   五
歩   歩   歩   歩     六
  歩   歩 銀 歩     歩 七
  角 玉 金 金 銀 飛     八
香 桂           桂 香 九
さんかく なし
第2-5図 さんかく3八飛まで

また、第2-1図からしろさんかく4五歩もよく指されていた。これにはさんかく同角成にしろさんかく同銀(もしくはしろさんかく同桂にさんかく3一角又はさんかく2八飛)でさんかく3一角が多くみられ(第2-4図、飛車が動くとさんかく6四角成)、後手がしろさんかく4四角やしろさんかく6五歩とすると、先手はさんかく7七桂からさんかく3九飛-さんかく3七桂とし、居飛車側は地下鉄飛車にして陣形がほぼ崩れることなく主導権を握って有利に指すことができる。このため第2-4図で四間飛車側はしろさんかく4四銀としてしろさんかく3三角打ちを狙いつつしろさんかく5五歩さんかく同歩しろさんかく同銀と6四の歩にひもをつけてからしろさんかく4一飛を狙う指し方がある。

この他さんかく3八飛にさんかく3一角を事前に防ぐしろさんかく4一飛やしろさんかく4三金、しろさんかく6五歩などが指されていた。しろさんかく4一飛やしろさんかく4三金には今度こそさんかく3七銀と棒銀に出ると出足が早く振り飛車の陣形が整いにくく主導権を居飛車側が握れ、しろさんかく6五歩にはさんかく3五歩しろさんかく同歩さんかく同飛からさんかく3六飛-さんかく3七桂-さんかく4五歩の狙いと、素直にさんかく6六歩しろさんかく同歩さんかく同銀からさんかく6五歩と位取りにする指し方とが生じる。

なお、米長によればこの戦法はプロ棋士にとっても難解・複雑な戦法であり、(アマチュア)初段以下には勧められないものである。勝つ時は苦労し、負ける時はひどいもの。どのような変化になってもやはり玉は振り飛車側が固く、これを指しこなせたら立派な有段者、といったものであると言う[1]

『イメージと読みの将棋観2』(2010年)によると1982年の出現以降、基本図の類似局面のしろさんかく6三歩-しろさんかく1二香型(第2-5図)が2010年まで34局指されており、その戦型では先手が13勝21敗となっているという。こうして振り飛車側は、しろさんかく3二銀型四間飛車に対して先手居飛車側が5七銀左の構えをみせたばあい、しろさんかく6三歩-しろさんかく1二香型で対応していた。

同書で藤井猛は鷺宮定跡は棋書ではうまくいかないとして紹介されているとしているが、実際は後手が勝ちにくいとしている。羽生善治は結構複雑でどっちをもってもいい勝負になる、谷川浩司も山田定跡と比べ先手が変化できそうなところがあるとしている。

その後、振り飛車が後手番の場合、先手のさんかく5七銀左にしろさんかく5四歩やしろさんかく6四歩を省略し、先にしろさんかく1二香やしろさんかく1四香として待機する指し方もするが、これにはさんかく6八金を省略してさんかく3八飛という指し方がなされた(新鷺宮流)。

しろさんかく なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1  
香 桂   金       桂   一
  王 銀   金 飛 銀   香 二
  歩 歩 歩 歩   角 歩 歩 三
歩         歩 歩     四
              歩   五
歩   歩   歩   歩     六
  歩   歩 銀 歩     歩 七
  角 玉   金 銀 飛     八
香 桂   金       桂 香 九
さんかく なし
第2-6図 さんかく3八飛まで
しろさんかく なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1  
香 桂   金       桂 香 一
  王 銀   金 飛 銀     二
  歩 歩 歩 歩   角 歩   三
歩         歩 歩   歩 四
              歩   五
歩   歩   歩   歩     六
  歩   歩 銀 歩     歩 七
  角 玉   金 銀 飛     八
香 桂   金       桂 香 九
さんかく なし
第2-7図 さんかく3八飛まで

振り飛車先手ならばさんかく9八香とさんかく5六歩が入っているので振り飛車側も対処が可能であるが、しろさんかく5三歩型でしろさんかく4三銀はさんかく3五歩しろさんかく同歩さんかく4六銀以下、先手の攻めが続く。よって後手はしろさんかく4三銀を上げずにしろさんかく5四歩かしろさんかく6四歩で待機する事になる。

しろさんかく5四歩には先手はさんかく6六歩とし、以下しろさんかく6四歩(さんかく6六歩はさんかく6五歩を狙っている)さんかく3五歩しろさんかく同歩さんかく4六銀しろさんかく4五歩さんかく3五銀しろさんかく6五歩さんかく5七銀しろさんかく6六歩さんかく同銀しろさんかく3四歩さんかく同銀などの順が予想される。以降同銀にしろさんかく6六角なら さんかく同角 しろさんかく3三歩 さんかく5七金 しろさんかく6五銀 さんかく8八角 しろさんかく3四歩 さんかく6八飛 しろさんかく7六銀 さんかく2二角成 しろさんかく3三桂 さんかく7七歩、一方で同銀にしろさんかく4六歩ならば さんかく3三銀成 しろさんかく同桂 さんかく9七角 しろさんかく4七歩成 さんかく4二角成 しろさんかく5八と さんかく6二歩 しろさんかく同金上 さんかく5二馬 しろさんかく同金 さんかく5八飛 しろさんかく4七角 さんかく2八飛 しろさんかく6七銀 さんかく同玉 しろさんかく6九角成 さんかく3五角などとなる。

しろさんかく6四歩の場合は、さんかく3五歩ならばしろさんかく同歩 さんかく4六銀 しろさんかく4五歩 さんかく3三角成 しろさんかく同銀 さんかく3五銀 しろさんかく4六歩 さんかく同歩 しろさんかく2七角 さんかく3七飛 しろさんかく5四角成など。このほか、居飛車はさんかく6八金上と一手待つこともある。以下しろさんかく7四歩ならば、 さんかく3五歩 しろさんかく同歩 さんかく同飛 しろさんかく4三銀 さんかく4六歩 しろさんかく3二飛 さんかく4五歩 しろさんかく同歩 さんかく4四歩 しろさんかく2二角 さんかく3二飛成 しろさんかく同銀 さんかく3七桂 しろさんかく4六歩 さんかく5五角 しろさんかく2九飛 さんかく6六歩で、次にさんかく4三歩成 しろさんかく5五角 さんかく5二との狙いが生じる。しろさんかく7四歩に変えてしろさんかく1四歩ならば、これをさんかく1六歩と受けると、以下しろさんかく4三銀 さんかく3五歩 しろさんかく同歩 さんかく4六銀 しろさんかく4五歩 さんかく3三角成 しろさんかく同桂 さんかく3五銀 しろさんかく2五桂 さんかく3四歩 しろさんかく3二飛 さんかく3六飛 しろさんかく4九角の進行で、このとき端の付き合いがあるのでさんかく1八角がない。従ってしろさんかく1四歩ならば先手はさんかく5五歩とし、以下はしろさんかく4三銀 さんかく3五歩で、しろさんかく3二飛ならばさんかく3四歩 しろさんかく4二角 さんかく4六歩 しろさんかく3四飛 さんかく同飛 しろさんかく同銀 さんかく3二飛という進行が知られている。途中しろさんかく3二飛ではしろさんかく同歩もあり、以下はさんかく4六銀 しろさんかく4五歩 さんかく3五銀 しろさんかく3四歩 さんかく同銀 しろさんかく同銀 さんかく同飛 しろさんかく4六歩 さんかく5七銀打 しろさんかく4七歩成 さんかく同銀 しろさんかく4五銀 さんかく3五飛 しろさんかく4六歩 さんかく3八銀で、次のさんかく3七桂をみる指し方である。このさんかく3二飛があるので、最初に戻って後手しろさんかく1二香のところではしろさんかく1四歩としてさんかく3八飛(第2-7図)に、しろさんかく6四歩さんかく6八金しろさんかく1五歩と、藤井猛によって端を突き越す指し方もなされた。しろさんかく1二香の時同様にさんかく5五歩ならば以下振り飛車側はしろさんかく4三銀 さんかく3五歩 しろさんかく3二飛 さんかく3四歩 しろさんかく4二角 さんかく4六歩 しろさんかく3四飛 さんかく同飛 しろさんかく同銀 と進んだ時に、さんかく3二飛の打ち込みでは今度は飛車が狭くなっている。したがって、しろさんかく1五歩には居飛車側もさんかく3五歩しろさんかく同歩を先にしてからさんかく5五歩とし、以下しろさんかく4五歩にはさんかく3五飛で、次のさんかく3七桂の活用、しろさんかく4三銀ならばさんかく4六銀 しろさんかく4五歩 さんかく3五銀 しろさんかく3四歩 さんかく同銀 しろさんかく同銀 さんかく同飛 しろさんかく4六歩 さんかく5七銀打などと進めている。

関連項目

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脚注

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注釈

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  1. ^ 週刊将棋編『定跡外伝2』(2002年)では居飛車側が同順で難しいとしているが、『イメージと読みの将棋観』(2010年)では居飛車側先手番でしろさんかく7三歩、さんかく2一馬しろさんかく4二飛型で、トッププロのうち渡辺明は「さんかく2一馬しろさんかく4二飛の交換を入れず、単にさんかく3六銀ならさらに良し。この局面は先手が勝てないとおかしい」とし、唯一の振り飛車党の藤井猛は「(後手は)馬を作られたうえに、飛車の頭に金がいる。この構えが棒銀に対する最善の受けとは到底思えない」と疑問を呈している。

出典

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  1. ^ a b 『日本将棋用語事典』
  2. ^ 藤井 2004, p.9.

参考書籍

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居飛車
相居飛車
矢倉
相掛かり
角換わり
横歩取り
対振り飛車
舟囲い急戦
振り飛車
中飛車
四間飛車
三間飛車
向かい飛車
その他
囲い
居飛車
相居飛車
対振り飛車
振り飛車
対居飛車
相振り飛車
その他
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