世界に「裏側」はない
2013年10月24日 up
カーニバル。底抜けに明るいブラジル人
筆者は今、サンパウロ市に住む。北海道在住の皆さんから見ると地球のほぼ反対側だ。しかし、日本ではブラジルを「地球の裏側」と言う人が多い。地球は丸く、裏も表もない。つい、口にするこの「裏側」はどんな思いから来るのか。
かつて、日本海側は裏日本と表記されていた。中学校時代に習った社会科の教科書にあり、暗い印象を抱いたのを覚えている。そのほか、思い起こすのは裏口入学、裏街道、裏金...。裏町、裏声、裏山ならまだ情緒があるが、どうも感心しない。
ブラジル人に地球の「裏側」のイメージはない
9月、日本の通信社が配信したニュースによると、集団的自衛権が認められた時の自衛隊の活動について、日本政府の某高官が2人も「地球の裏側...」発言をしている。
また、当地の各県人会創立記念式典であいさつする要人の中に、「地球の裏側がこのように発展しているとは知りませんでした」と日本語でやってしまう。こんな祝辞を何度聞いたことか。褒めたつもりでも「裏」の一語で台無しだ。聞いている人は少なからず不快感を覚える。細心の注意を払っていただきたい。
逆に、ブラジル人は日本を指してどう表現するのか。一般にはContrario(aの上にアクセント)かOutro ladoを使う。この2つの単語は「反対」、「向こう」や「他の」の意味。やはり、「裏側」は相手国に対して不適切な言葉であろう。
根拠のない確信だが、日本人は無意識に「自国が世界の中心」と勝手に思い込んでいるのではないか。こうした考えは日本文化の思いやり、心配り、気遣いの精神に反する。先進国を自認するなら地球儀的な発想で相手国の位置を理解し、立体的に諸国をとらえる姿勢を持ってほしい。
安倍首相は就任後、精力的に世界各国を訪問している。国民も同じ気持ちで世界観を持つべきだ。国同士の間に「裏表」はない。すべて「表」だ。
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タグ:ブラジル,サンパウロ
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- 3 コメント
3 - Comments
かなやより:
2013 年 10 月 24 日 13:59:03
言葉遣いの在り方を改めて考えさせられました。「心配り」「気遣い」というのは大切なキーワードですね。
大浦智子より:
2013 年 10 月 25 日 17:54:59
全く同感、おもてなし精神が台無しな発言ですよね。でも日本の人々に悪意はないと思います。
小さな島でも大陸にいるように錯覚してしまうのはやむを得ず、確かに科学的物質文明は世界トップクラス。近所のマデイラ島ルーツの男性には、事あるごとに「日本は島だよね島だよね。大きな島が4つ、小さな島を合わせれば100個くらいの島があるんだよね」と言われます。島、島、島、島...と言われることに最初は違和感と心外さを感じたものでしたが、日本は本当に極東の小さな島なんですよねぇ。マデイラ島ルーツの男性に全く悪意はなく、むしろ、同じ小さな島に縁ある者として親近感を持たれていると思うようになりました。
島を出て異文化の中で異文化の人と交流して、初めて日本が世界の一つの点である土地であることを自覚し、そんな土地に自分のルーツがあることを、私自身も気づかされました。
石田より:
2013 年 10 月 28 日 21:22:42
もともと「内日本」「外日本」と呼ばれていたのが、地理学者の矢津昌永が1895年に発表した「中学日本地誌」に最初に「裏日本」という言葉が登場したそうです。(wikipediaより)
それも、首都東京を玄関口(表)と見立てたらその反対側は「裏」というだけの地理的な意味合いしか持っていませんでした。
ところが、1960年くらいから「裏」という言葉のネガティブイメージが増え、「裏日本」も蔑称だとなったようです。「裏社会」みたいな。
個人的には全然蔑視的イメージは無い言葉なのですが。
表→日当たり良い→乾燥しやすい→太平洋側の気候
裏→日当たり悪い→湿り気多い→雪が多い→日本海側の気候
てな感じで結構覚えやすかったです。
言った方がどう思っていても、言われた方がいやな気持ちになるのなら、あえて言うこともありません。
無くても困りませんし。
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