【鉄鋼業界決断の時】(03) 「中国に振り回される」

20210429 04
「2021年の粗鋼生産量2020年より減るだろう」――。今年1月下旬、中国の工業情報化省が開いた記者会見で、運行監測協調局長の黄利斌は自ら減産の可能性に触れた。新型コロナウイルス下でも増産を続けてきた同国が生産抑制に言及するのは異例だ。広東省に人影も疎らな製鉄所がある。現地の鉄鋼最大手『宝武鋼鉄集団』と『JFEスチール』の合弁会社の拠点だ。AIを活用し、鋼材をほぼ自動で生産。JFEのノウハウも使い、自動車部品等に使う特殊鋼を次々に生み出す。"量から質へ"。中国勢は鉄鋼業の近代化に躍起だ。背景にあるのは、「緩い環境対策や過剰生産を放置すれば国際社会から取り残される」との危機感だ。中国の粗鋼生産は昨年までの20年間で8倍強に増加。溢れ出す鋼材による市況悪化に、世界の鉄鋼各社は悩まされ続けた。

中国政府は設備を廃棄し、鉄屑を使う違法な"地条鋼"も一掃。「改革は進んだ」と訴える。ただ、額面通りに受け止める人は少ない。上海から広州にかけた沿岸部には、2019年以降に稼働した新鋭の製鉄所が並ぶ。「新しい設備は従来のものよりも生産能力が高い」とJFE社長の北野嘉久は警戒する。コロナ禍を克服し、逸早く経済が回復した中国。好機とみるや一気に増産する姿勢は、今も変わっていない。煽りを受けるのが日本だ。中国の鉄鋼増産で原料の鉄鉱石需要が急増。日本の調達価格は9年半ぶりの高水準に達した。『日本製鉄』等は建築用鋼材等を値上げせざるを得ない。ただ、日本国内の建材需要は低迷。問屋は鋼材の仕入れ値が上がっても、売値に思うように転嫁できない。問屋大手『中央鋼材』(東京都中央区)社長の後藤信三は、「国内景気とは関係なく中国に振り回される」と嘆く。「2021年はグローバル化の元年。欧米企業の買収も検討する」。宝武鋼鉄集団の董事長である陳徳栄は高らかに宣言した。宝武は2016年に当時5位の宝鋼集団と11位の『武漢鋼鉄集団』が合併して発足。国内再編を主導してきた同社が外に目を向け始めたのは、内需の頭打ちを見越してのこと。インフラ投資を支えとする需要は、2023年前後から下げに転じるとの予測もある。旺盛な内需と再編で力を蓄えた中国企業。世界市場への攻勢を強めた時、日本勢は勝てるのか。構造改革が途上のままでは心もとない。 《敬称略》


キャプチャ 2021年4月7日付掲載

テーマ : 経済ニュース
ジャンル : ニュース

  • 2021年04月29日(03:23:34) :
  • 経済 :
このページのトップへ
« 前の記事 ホーム 次の記事 »
このページのトップへ
轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索


RSS链接
链接

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /