【鉄鋼業界決断の時】(04) 温暖化対策「力示す機会」

20210429 05
「最も力を入れるのは持続可能な製鉄だ。我々の力を示す機会になる」――。2月11日に鉄鋼世界最大手、欧州の『アルセロールミタル』のCEOに就いたアディティヤ・ミタル。電話会見で地球温暖化対策を最優先に据えた。旧アルセロール等の買収で規模拡大の道を直走ったミタル。その歴史からみれば、異例の就任宣言となった。脱炭素時代に合わせて口先だけ、とも言い切れなさそうだ。「売却で約20億ドル((注記)約2000億円)の収益を改善し、株主に還元する」。その約5ヵ月前の昨年9月下旬。当時社長だったアディティヤは世界の株主を前に声明を出した。示したのは、主要事業である北米事業の構造改革。歴史ある3ヵ所の高炉一貫製鉄所等を負債を含め、33億ドルで売る。北米事業は2020年4〜6月期まで5四半期連続の営業赤字。脱炭素に欠かせない巨額の投資資金を確保する為にも、資産の整理が欠かせなかった。

同社はCO2の排出を2050年までに実質ゼロに抑える方針。その為には、インフラ整備を除いて最大400億ユーロ((注記)約5兆1000億円)の投資が必要とみる。生産コストも最大8割増える可能性がある。当然、鋼材価格の上昇に繋がりかねない。それでも、環境対応を求める取引先からの圧力は高まるばかり。「2050年までに使用する全鋼材をCO2ゼロとする」。イギリスのNGO『ザ・クライメートグループ』は昨年12月、製造時のCO2排出量が実質ゼロの鋼材の利用を促す団体『スチールゼロ』を立ち上げた。設立メンバーは、洋上風力発電の世界最大手『オーステッド』(デンマーク)や建設大手『レンドリースグループ』(オーストラリア)等有力8社。価格や性能に加え、環境対応への度合いが製品の売れ行きを左右する時代になりつつある。「需要家がCO2排出ゼロの鋼材を望めば、他社も追随せざるを得ない」。石炭の代わりに水素を使う製鉄法の開発を、欧州で逸早く始めたスウェーデンの鉄鋼大手『SSAB』。同社の水素鉄鋼プロジェクトの幹部は、数年前からこう述べていた。世界各地で脱炭素競争が激しくなる中、日本勢は存在感を高められるか。自らの変革力が試される。 《敬称略》 =おわり



川上梓・竹蓋幸広・河野真央・松田直樹・湯前宗太郎・深尾幸生・蛭田和也が担当しました。


キャプチャ 2021年4月8日付掲載

テーマ : 経済ニュース
ジャンル : ニュース

  • 2021年04月29日(04:24:40) :
  • 経済 :
このページのトップへ
« 前の記事 ホーム 次の記事 »
このページのトップへ
轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索


RSS链接
链接

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /