【鉄鋼業界決断の時】(02) 「仕事が無くなる」

20210429 03
「再就職先を探してほしい」――。『日本製鉄』と取引する千葉県成田市の鋼材加工会社。社長の下には先月5日以降、東日本製鉄所鹿島地区(茨城県鹿嶋市)の従業員の訪問が絶えない。鹿島地区は旧『住友金属工業』の基幹拠点。この加工会社を含め、近隣の取引先で働く住金出身者は多い。日鉄は高炉休止後も他の製鉄所への配置転換で雇用を維持する方針。ただ、地元を離れられない従業員は、早くも新たな勤め先探しにOBを頼る。住金が製鉄所を開いた1960年代以降、鹿嶋市は城下町そのものだった。人口6万7000人の内、関係会社を合わせて1万人が日鉄関連の仕事に就く。「日本製鉄がくしゃみをすれば、市民は風邪を引く」。日鉄が大規模な設備の統廃合を発表した先月5日。市長の錦織孝一の漏らした一言が両者の関係を物語る。「町づくりを一からやり直さなければならない」(錦織)程に追い込まれた。

「固定資産税を減免します」――。広島県での高炉休止が明るみに出た昨年2月以降、茨城県が日鉄に存続を求め続けた。接触した回数は、事務レベルを含めると20回近い。水素製鉄の開発に50億円と「類のない規模」(茨城県知事の大井川和彦)の補助金を用意した。それでも日鉄の決断は覆らなかった。大井川は「受け入れ難い。かなりショックだ」と肩を落とす。設備保守等でも多くの雇用を生む製鉄所。地元にとって、その合理化の影響は大きい。日鉄の瀬戸内製鉄所呉地区((注記)右上画像)がある広島県呉市もそうだ。呉地区は2023年9月末の閉鎖と、今年9月の高炉休止が決まっている。「従業員を守る自信がなかった」。呉地区で配管保守を手掛ける『武田組』(呉市)の社長、江上道は1年前を振り返る。閉鎖発表の直後に辞めると伝えた若手2人を「もう仕事が無くなる」と見送るしかなかった。当時、呉地区で働いていた人は、協力会社も含め約3300人。既に県外への転職等で300人程度がそれまでの仕事を辞めたとみられる。江上も「解散や廃業を決めた会社も多い」と周囲を見渡す。2月、広島労働局が呉地区の従業員を集めた就職説明会。想定の約2倍の97社が参加を申し込んだ。「日鉄従業員への求人意欲は高い」。『ハローワーク呉』の所長、田辺克也は声を弾ませた。それでも、3300人全員の新たな働き先があるわけではない。企業城下町の再生に向けた解は見えない。 《敬称略》


キャプチャ 2021年4月6日付掲載

テーマ : 経済ニュース
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  • 2021年04月29日(02:22:17) :
  • 経済 :
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