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2009年11月 3日 (火)
概算要求〈2〉 抽出学テ 重くなる地方教委の責任
再提出された2010年度文部科学省概算要求で、全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)が40%の抽出調査に切り替えられることが確定的になった。悉皆(しっかい)調査の見直しはかねて本社が主張してきたことであり、細部については異論がないわけではないが、まずは見直しを歓迎したい。地方教育委員会には、全国学テの位置付けが変わったことと、自らの責任が重くなったことを自覚的にとらえ、学力向上のための積極的な対応策を講じることが期待される。
これまでの社説の繰り返しになるが、全国学テはそもそも義務教育費国庫負担制度維持の方便として、学校レベルでの教育の結果にまで国が検証の責任を負おうとして導入されたものである。しかし抽出調査への切り替えにより、そうした目的は果たせなくなる。
詳細は予算成立後の新しい実施要領を待たなければならないが、抽出は学級単位になる見込みであるから、市区町村のみならず学校単位の比較は当然できなくなる。概算要求では抽出対象外でも学校の設置者(市区町村や学校法人など)が希望すれば利用できるようにするとしているが、あくまで問題の提供に限ったことであり、国はその採点や集計に関与しない。40%という抽出率により、せいぜい都道府県間のデータ比較ができるのみだ。
もちろん、国が全国的な義務教育の改善を図るための資料にするという、全国学テの第一義的な目的は変わらない。国は抽出結果を詳細に検証することにより、教職員定数改善をはじめとする条件整備に向けて、大いに活用してもらいたい。
さて、その上での地方教委や学校の役割である。
都道府県教委にとっては、これまで通り他県との比較から自県の強みと弱みが明らかになる。しかし、悉皆調査のような市町村別のデータは存在しなくなるから、責任を各市町村教委に押し付けることはできない。自らの責任で、実態把握とその改善のための支援策を講じる努力が、今まで以上に必要である。
市町村教委や学校も、抽出対象から外れたからといって無関心ではいられまい。少なくとも出題された問題から学習指導要領が求める「学力」のメッセージを読み取ろうと努力し、それを具体的な授業改善に生かす姿勢は、引き続き不可欠だ。これまではそうした姿勢が悉皆方式により半強制的に要請されてきたのだが、今後はすべて自らの責任になる。
市区町村教委の責任の果たし方の一つとして、「希望利用方式」も積極的に検討されてよい。もちろん、採点は教委か学校が独自に行わなければならなくなる。本社は有料方式などとの併用で国が採点に関与しても構わないのではないかと考えるが、すべて設置者に任せることも一つの方策であろう。教育結果の検証と改善の責任が市区町村や学校にあることが、より鮮明になるからである。
蛇足ながら付け加えれば、抽出調査への切り替えによって市区町村間・学校間や児童・生徒間の競争意識を期待することはできなくなるし、一部教委を苦しめてきた情報開示請求も無意味になる。いずれも学テの制度設計では想定外だったことであり、そうした問題の解決につながる点でも今回の見直しは歓迎されてよい。希望利用方式を選択すれば、概算要求資料によると調査実施責任者は「設置者」だとされるから依然として開示請求の対象にはなろうが、それも含めて責任を負う覚悟も必要だ。
その上で、文科省は2011年度以降の調査について、学年や教科の拡大を積極的に検討してほしい。そもそも最終学年の国語と算数・数学に限った現在の出題は便宜的に設定されたものであり、国語や算数・数学の基礎・基本が他教科の学力とどう関連するかを探るのも、重要な課題であろう。概算要求上は500万円余りと会議費程度の計上ではあるが、大学等や都道府県教委との連携など、さまざまな手段があるのではないか。
悉皆から抽出に切り替える意味は、単なる国のテストの見直しにとどまらない。教育の結果については、国ではなく、当事者である設置者や学校が直接責任を負う。国は、教育の当事者が責任を果たすための支援に徹する。それこそが、民主党が掲げる「教育の責任の明確化」(政策集)に合致するものになろう。
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2009年11月 3日 (火) 社説 | 固定リンク
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