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本は個人で保存する時代なのか 〜公立図書館と「暮しの手帖」〜
市立図書館に行ったついでに、以前から気になっていた「暮しの手帖」の索引について、レファレンス窓口で聞いてみました。
この図書館では、かつて「暮しの手帖」第1世紀(通巻1号〜100号をこう称しています)を合本製本して保存していたことを私は知っていました。
創刊号は1948年発行。
そこから全号そろっていたかはわかりませんが、第2世紀の途中からしか読んだことのなかった私は、家にない「暮しの手帖」が読めて感激し、図書館ってすごいなあと思ったものです。
第2世紀(通巻101号〜200号)は1969年発行からですから、第1世紀終了はそれより前。
私が図書館で合本を見つけたのはたぶん70年代後半〜80年代ですから、10年以上前のものが保存されていたわけです。
そんな過去があったので、当然、この図書館には「暮しの手帖」は第1世紀からそろっているものと思っていました。
私の用件は「第2世紀の索引があるかどうか知りたい」でした。
「暮しの手帖」は、かつて、ずっとバックナンバーを販売していて、それぞれの号の後ろにそれまでの号の目次がついていた記憶があるのです。
なので、100号に総目次がついていたら、昔の文具の商品テスト(ボールペンとか消しゴムとか肥後守とか)のことなどを調べたい時、該当の号をすぐに見つけることができると思い、コピーさせてほしかったのです。
ただ、最後までバックナンバー目次がついていたかは覚えていなかったので、場合によっては第二世紀の実物を何冊も出してもらうつもりでした。
ところが、パソコンで困ったようにあれこれ調べていた係の人は、やがて、「『暮しの手帖』は3年分しか保存していない」というではありませんか。
何? 3年分って。
では、あの「第1世紀」のきちんと製本したものまで廃棄してしまったっていうんですか!?
あんな貴重な資料を!!
図書館が、本を買わずに読んで済ませたいという人対象なら、新しい話題の本がそろっている方がいいに決まっています。
でも、過去のことを調べたいときには、これではどうしたらいいのかわかりません。
古文書は収集するのに、昭和の歴史は収集しないのですか?
「昔の暮し事典」のような本はいろいろ出ていますけれど、そんなものより「暮しの手帖」がとりあげていることを見ていけば、時代がはっきりわかるのに。
収蔵スペースに限りがあることは知っていますが、これは捨ててはいけない雑誌ではないですか?
後世に戦後からの昭和の歴史を伝える資料として。
元からなかったのならしかたがありませんが、確かにあったのにと思うと残念でなりません。
私の家にもずっと「暮しの手帖」がとってあったのですが、家人が無断で処分してしまい、すごく悲しかったけれど、でも図書館にあるからと思っていたのです。
甘かった。
近隣の図書館を一応調べてくれたのですが、これまた「暮しの手帖」を保存している図書館は皆無に近い状態でしたから。
ちょっとのことを調べるために、国立国会図書館や大宅壮一文庫(どちらも日曜休館。オンラインのサービスなどはある)に行かなくては用が足りないのでは、時間の自由がきかない人にはお手上げです。
図書館は家の近くにあるのですが、平日は閉館が早くてまったく使い物にならないので、辞典や資料などは自分で買うようにして、あまり利用していません。
そして、本が本棚に入りきらずに大変なことに...
この上、暮しの手帖(とりあえず第2世紀、できれば第1世紀も)を入れるスペースはないのですが(ないから処分された)、こうなると世間に存在するうちに入手しておかなくてはいけないのかと焦ります。
図書館では廃棄している雑誌も、古書店やネットオークションではかなり古いものがまとまって売られていたりします。
それらは個人の保管していたもの。
資料は、「個人の保管 → 個人の保管」 となるばかりです。
その人が資料を譲り渡す個人(や古書店)が見つからなければ、その資料は捨てられてしまいます。
図書館に寄贈しても雑誌や古い本では廃棄される運命のようですから、何としても個人で「所有」しなくてはなりません。
それもなかなか辛いところです。
たまたま今回は「暮しの手帖」でしたが、たぶんいろいろな分野で同じことが起きているように思います。
そして、気がついたら、山ほどあった情報が、新聞の縮刷版くらいしか残っていないかも。
それでいいのかなと思います。
収納スペースに限りがあるのはわかっていますから、近隣の図書館同士で力を入れるジャンルを分担し、「○しろまる○しろまる×ばつ図書館が持っている」みたいに、どこかで用が足りるようにはできないものでしょうか。
いえ、そうしているところがあると思いたいです。
図書館は、楽しみの読書を推進するだけでなく、文化の足跡を蓄積していく場所でもあるはずですから。
2009年6月22日 (月) 書籍・雑誌, 暮しの手帖 | 固定リンク
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コメント
暮らしの手帳、アイロンとか掃除機とか結構身近な製品のテストの記事が好きでした。
調べたら、雑誌所蔵に特化とニュースで話題になってる東京都多摩図書館にもないんですね...唖然。
ちょっと絵を描くときも当時はどんなものがあってどんな形が普通だったのか、何を描いては嘘になるのか、近現代ほど気を遣います。「3丁目の夕日」などの作品はマンガアシスタントさんも映画スタッフさんも大変だと思います。
暮らしの資料・民俗資料は情報収集が大変なジャンルなので、図書館などには頑張って欲しいですし、捨てたりなんてぞっとします...。
投稿: はいばら榊(絵) | 2009年6月22日 (月) 23時28分
はいばら榊(絵)さん こんばんは
コメントをありがとうございます。
ゆうべレスを書いたはずなのに...ない! 汗
ねぼけていて確認してなかったのかも。すみません。
気を取り直して...
昔の「暮しの手帖」をご存じでうれしいです。
私の覚えているアイロンの記事は、スチームアイロンのものです。
暮しの手帖が唯一合格点をつけたのは、アメリカのGEのもの。
スチームアイロンは、前側に穴をあけてスチームを出して後ろの穴なしの面で押さえていくからしわがのびるのに、国産はそれができていない、という見方に納得したものです。
この雑誌が、日本製品の質の向上に果たした役割はとても大きいと思います。
他の図書館の所蔵まで調べてくださってありがとうございます。
雑誌に強い図書館でもこうなのでは、望み薄ですね。
私は、文具の商品テストで当時の製品名などを調べたかったのですが、はいばらさんのように絵やマンガを描いたり、小説を書いたり、映画やドラマの考証をしたりするのにも、当時の生活をわかりやすく伝えてくれるものって必要なんだなあと思いました。
「筆箱調査」で、学校を舞台にした映画なども調査してみようかなあと思っていたのですけれど、その時代の「現代」を舞台にしたもの以外は、考証がしっかりしていない場合もあるわけで。
考証をしたくても資料がなくて...なんて時代がこないようにしたいものですが、個人のできることって限界があって。
とりあえず、持っている雑誌の処分はよく考えてからしたいと思いました。
投稿: けふこ | 2009年6月23日 (火) 21時39分
六十の手習いで大学院で『暮しの手帖』について研究中のものです。この雑誌がどのように読まれていたのかを知りたくて、読者の方にインタビューをしているところです。ふとしたことから、けふこさんのブログにたどり着きました。嬉しかったです。
で、もしかしたら、もうどこかで見つけられたかもしれませんが、『暮しの手帖』の創刊号から保存している公立図書館は結構あります。私は、杉並区の中央図書館を利用していました。私設の図書館になりますが、お茶の水にある、お茶の水図書館は、入館料がいくらか必要ですが、だれでも利用できます。
おせっかいなこととは思いましたが、もう一つの、暮しの手帖についてのお話も読ませていただいたお礼に、お知らせまで
投稿: yukipon | 2011年9月20日 (火) 02時24分
yukiponさん はじめまして
コメントと貴重な情報をありがとうございます。
「暮しの手帖」を置いている図書館があってうれしく思います。
その年代がどんな社会情勢で、どんなものが暮しの中で使われていたか、それが良かったのか悪かったのか、時代の空気をとても良く伝えている雑誌だと思います。
それを、研究対象に選ばれている方に記事を読んでいただけたことを、かつての「暮しの手帖」ファンとしてとても幸せに思います。
「暮しの手帖」の本体は、やはり身近に資料としてほしかったので、結局、第2世紀は全冊購入しなおしました。
第1世紀の索引は古書で購入し、第2世紀の索引は暮しの手帖社の御好意で頒布用の最後の1冊を分けていただき、何とか、自分の求めるものは手に入りました。
もしも、第1世紀の実物に当たりたくなったら、yukiponさんに教えていただいた図書館を利用したいと思います。
所蔵図書館を探している人への手掛かりにもなると思います。
ありがとうございました。
投稿: けふこ | 2011年9月20日 (火) 23時39分
大阪市なら、市立中央図書館(書庫ですが)、
愛知県なら、安城市立図書館(開架してます)にあります。
どちらも、駅近くで、地下鉄西長堀駅そば、JR安城駅徒歩数分。
最近パラパラ見ていて、昔のバックナンバーは、色々と興味深いです。検索していて、こちらのHPを見つけました。
投稿: coffee_break_to | 2019年6月19日 (水) 21時58分
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