ユーザのメリットを見直してみた
ここ1年ほど、様々な方と仮想ネットワークについて議論を重ねてきた。いつも決まって話題になるのは、ユーザのメリットは何があるのかと言う点。 よく言われるのは、柔軟性だ。確かに、仮想のネットワークのレイヤに、L2やL3を自由に組み上げられるその仕組みは柔軟性が高く、物理ネットワークで苦労してきた人には外し難いメリットの一つなのかもしれない。 見方を変えると、これは仮想ネットワークで複雑な構成が組める、と言うことを意味するわけだが、本当にそれがメリットなのだろうか。
アプリケーションエンジニアが作るネットワークこそ究極の姿になる
私が仮想ネットワークに期待するのは、プレイヤーが変わることによる、「思いもつかないユースケースの発生」だ。つまり、かつて物理ネットワークを触ってきた人ではない人が、仮想ネットワークから触り始めることによって、何が起こるのかに興味がある。
アプリケーションエンジニアと呼ばれる人々の中には、物理ネットワークの変更操作まではできない人がそれなりにいる。そうなると、彼らはそれが出来る他の専門の人へ作業をお願いすることになる。組織としても、ここで役割が大きく分かれているため、コミュニケーションのオーバヘッドが大きい。これがプロジェクトの持つスピードを損ねる要因になったりもする。
仮想ネットワークは、物理ネットワークを隠蔽し、本来自分が欲しかったネットワークを仮想のレイヤへ、自由に構築できるものである。アプリケーションエンジニアのような人々にも、ネットワークのコントロール権限を与えるものだ。物理ネットワーク専門の人へ作業を依頼せずとも、おおよそのことはこの仮想レイヤで賄えるようになる。
シンプルなネットワークへのパラダイムが起こる
そしてパラダイムはここから起こる。物理ネットワークの世界で、職人芸を見せてきたエンジニアの方々であれば、軽々しく賛同いただけないような構成を、アプリケーションエンジニアは試し始めるのだ。「ヒャッハー」「ネットワークちょろいぜー」って言いながら、ネットワークを我流で組み始める。時はまさに世紀末だ。そして仮想の世界は、ソフトウェアの力が全てである。Try & Errorが圧倒的にやりやすい世界であるので、アプリケーションエンジニア達は、あっという間にベストプラクティスを作り上げることになるだろう。そして、そのベストプラクティスは、物理ネットワークのエンジニア達が想像もしなかったような、一種原理主義的で、極端に合理的な結論として姿を見せる。
その結論が今何なのか具体的に述べられないが、間違いないのは、複雑なものではなく、シンプルなものだ、と言うことだ。何でもできるようにと議論が重ねられ、複雑になったXMLやSOAPは世界を制しなかった。結局程々に大体のことができ、シンプルなJSONやRESTが主流になった。仮想ネットワークを使い倒して行くと、想像もできないほどシンプルで合理的なものがベストプラクティスとして生き残る。
僕には、それが生み出せるポテンシャルこそ仮想ネットワークの真価だと思える。
The virtual network simplifies our network.
仮想ネットワークは、複雑なネットワークを作り出すためのものではない。仮想ネットワークは、複雑な物理ネットワークを意識することなく、究極にまで削ぎ落とされたシンプルなネットワークをオーバレイするものだ。
僕はそう信じている。
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