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深層学習

[ 2019年6月25日 09:00 ]

AI棋譜記録システムをデモンストレーションする(左から)鈴木大介九段、西尾明七段(撮影・我満 晴朗)
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【我満晴朗 こう見えても新人類】日本将棋連盟とリコーが共同開発した「AI棋譜記録システム」が、7月開幕の第9期リコー杯女流王座戦本戦トーナメントで実証実験されることになった。

×ばつ ×ばつ ×ばつ ×ばつ

昨年の初秋だったか。タイトル保持者の某棋士と会食した際、「棋譜って自動作成できないもんですか?」と聞いてみたら「そのうちできるでしょう」と返ってきた。想定した方法は、駒にチップを埋め込み、将棋盤と駒台をセンサー化する。駒を指す(または打つ)と同時に電波がピピっと飛んで記録係のタブレットへと情報が伝わる仕組みだ。コードレス家電が当たり前のように存在する現在にあって、それほど難しい技術は必要としないはず。ネックがあるとすれば、対局で使う全ての盤駒にチップとセンサーを埋め込む手間と費用くらいか。

なんて無責任に想像して盛り上がっていたのだが、リコーが開発したシステムはチップもセンサーも必要なく、単純に対局室のカメラから得られる画像情報ですべてを処理する方式だった。日本将棋連盟が対局用に保有している駒をあらかじめAIに認識させ、反則手や千日手などの規則を記憶させた上で作動させる。開発費などは非公開だったが、チップ埋め込みうんぬんが必要ないので経費的にもお得だろう。

この装置で模擬対局を複数回行った鈴木大介常務理事は「実際に指している感覚とほとんど変わりないですね」と明かしている。棋譜記入に加えて駒から指を離した瞬間を映像でとらえ、持ち時間を計測することも可能なので、なるほど記録係いらずだ。あとは秒読みくらいか。「それも技術的には可能です」とはリコー側の弁。

ちなみに連盟としては最終的に記録係をなくす方向で進捗(しんちょく)状況をを見守るとのことだ。年間3000前後ある全ての対局に奨励会員や若手棋士を当てるのは年々難しくなってる。対局数の増加はもとより、奨励会員の高校・大学進学率が高まったことが主な理由だ。AIが人間の仕事を奪うのではなく、人手不足をAIに補ってもらおうとするのは世の流れ、ではあるが...。

記者説明会の翌日、とある棋士数人と話す機会があった。「機械に全てを任せると杓子(しゃくし)定規になって味気ないかも」「なんだが人間性が失われてしまうね」などなど、当事者としては複雑な心境らしい。その感覚もよく分かる。若い記録係にしてもプロ同士の熱戦を一手一手記入することで得るものが多いだろうし。

個人的にはAIが暴走して棋士の指し手に難癖つける事態になるのが心配だ。「それ、悪手です」とつぶやいたり、勝手に最善手を指しちゃったり。「2001年宇宙の旅」のコンピューターHALのようにね。ちょっと怖いぞ。(専門委員)

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