感染症法に基づくバンコマイシン耐性腸球菌(Vancomycin-resistant Enterococci: VRE)感染症の届出状況、2022年

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国立感染症研究所 実地疫学研究センター
感染症疫学センター
2024年4月15日現在
(掲載日:2024年10月23日)

バンコマイシン耐性腸球菌(Vancomycin-resistant Enterococci: VRE)感染症は、1999年4月に施行された感染症法では四類全数把握対象疾患に、また、2003年11月に改正された感染症法では五類全数把握対象疾患となった。VRE感染症の届出対象は2013年3月に変更され(同年4月施行)、「バンコマイシン耐性遺伝子(vanAvanBvanC)を保有する腸球菌(VRE)による感染症」から、現行の「バンコマイシンに対して耐性を示す腸球菌(VRE)による感染症」となった。なお、届出対象は症状や所見からVRE感染症が疑われ、届出基準に規定された検査材料、検査方法によりVRE感染症と診断された患者であり、臨床症状を示さずVREを保菌しているだけの者は届出の対象外となっている(届出基準、届出票についてはhttps://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-14-01.html参照)。また、感染症法に基づく届出の基準として示されたVREの判定基準値は、病院で用いられている判定基準値と異なることがある(文末参考)。

2024年4月15日現在、2022年疫学週第1週〜第52週(2022年1月3日〜2023年1月1日)にVRE感染症と診断され、報告された症例は133例であった(図1)。2011年以降、年間の報告数は100例未満を推移していたが、2020年以降は120〜140例で推移していた。性別は男性が72例(54%)(図2)と、2021年の男性の割合(62%)より減少した。診断時年齢の中央値は80歳(四分位範囲72-88歳、範囲0-101歳)で、0歳の症例が1例あった。70歳以上の症例が103例(77%)あり、その割合は2021年に比べ増加した。届出時の死亡例は6例(5%)であった。診断名*は尿路感染症39例(29%)、菌血症27例(20%)の順に多く、診断名の内訳は2021年と同様の傾向であった(表1)。菌が分離された検体は尿50例(38%)、血液36例(27%)の順に多かった(表2)。2007年以降の、尿と血液が占める割合が高い傾向は、2022年も同様であった。菌種の記載があったのは、123例で、Enterococcus faecium 111例(83%)、Enterococcus gallinarum 4例(3%)、Enterococcus faecalis 3例(2%)、Enterococcus casseliflavus 1例(1%)の順に多く報告されていた(表3)。VREのバンコマイシン耐性遺伝子の種類については37例(28%)で記載があり、内訳はvanA遺伝子が26例(70%)、vanB遺伝子が10例(27%)、vanD遺伝子が1例(3%)だった。2022年におけるVRE感染症の報告は21都道府県よりあり、特に広島県(19例)や大阪府(18例)、静岡県(18例)が多かった。また、報告医療機関数は91施設であった。

*診断名は症状として報告された情報のうち、病名の項目を用い集計した

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