A(H1N1)pdm09:流行株はHA遺伝子系統樹上のクレード6B.1(共通アミノ酸置換:S84N, S162N, I216T)内のS74R, I164T, I295V群に属していた(図1)。さらにS183Pを含むいくつかの群、T120A群、L161I, I404M群など複数の集団を形成した。NAタンパク質にH275Y置換を有するオセルタミビル耐性株は散発的に検出されているが、耐性株の流行は確認されていない。
A(H3N2):最近の流行株のほとんどはHA遺伝子系統樹上のサブクレード3C.2a(L3I, N144S, F159Y, K160T, Q311H, D489N、代表株:A/Hong Kong/4801/2014)に属している(図2)。3C.2a内にはサブクレード3C.2a1(N171K, I406V, G484E、代表株:A/Singapore/INFIMH-16-0019/2016)、3C.2a2(T131K, R142K, R261Q)、3C.2a3(N121K, S144K)、3C.2a4(N31S, D53N, R142G, S144R, N171K, I192T, Q197H)が形成されている。3C.2a1はさらに、3C.2a1a(N121K, G479E, T135K, N122D)、3C.2a1b(N121K, K92R, H311Q)に分岐し、3C.2a1b内には3C.2a1b+135K(E62G, R142G, T135K)および3C.2a1b+135N(T135N)が、3C.2a2内にはA212T群が形成されており、遺伝子的に多様化が進んでいる。
B (ビクトリア系統):流行株はHA遺伝子系統樹上のクレード1A(共通アミノ酸置換N75L、N165K, S172P、代表株:B/Brisbane/60/2008、B/Texas/02/2013)内の、N129D, I117V, V146Iを有する集団に属していた(図3)。その中で複数の群が形成されており、遺伝子的には多様化が進んでいる。クレード1Aの中で、抗原性変異を示すサブクレード1A.1[共通アミノ酸置換I180V, R498Kおよび2アミノ酸欠損(162, 163)、代表株:A/Maryland/15/2016]に属するウイルスの数が増えており、今後の流行が注目される。
B (山形系統):流行株はHA遺伝子系統樹上のクレード3(共通アミノ酸置換S150I, N165Y, N202S, S229D)内でB/Phuket/3073/2013株を代表とする群(共通アミノ酸置換N116K, K298E, E312K)内のL172Q, M251V群に属した(図4)。また、共通アミノ酸を持たない集団も多く形成されており、遺伝子的に多様化が進んでいる。