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日本の再エネ拡大の切り札、ペロブスカイト太陽電池とは?(前編)〜今までの太陽電池とどう違う?

ペロブスカイト太陽電池の写真です。

(出典)国立研究開発法人産業技術総合研究所

2050年カーボンニュートラルの達成に向けて、再生可能エネルギー(再エネ)の拡大は必要不可欠です。しかし、平地面積の少ない日本では、太陽光発電の設備を設置するための物理的な適地の制約があります。そこで、再エネのさらなる導入のために、注目を集めているのが「ペロブスカイト太陽電池」です。政府も技術開発に大きく力を入れているこの次世代型の太陽電池とはどのようなものか、2回に分けてご紹介します。

太陽光発電をさらに拡大させるための有力候補

太陽電池というと、黒い大型のパネルが広い土地にずらりと並べてある光景や、住宅の屋根などに設置されている風景を思い浮かべるのではないでしょうか。これらの多くは、「シリコン系太陽電池」と呼ばれるもので、発電層がシリコンでできています。現在、もっとも普及している太陽電池で、そのシェアは95%を占めています。

シリコン系の太陽電池は、耐久性に優れ、変換効率(照射された太陽光のエネルギーを電力に変換できる割合)も高いという特徴があります。しかし、太陽電池自体の重さや屋外で耐久性を持たせるためのガラスの重みによる重量があるため、設置場所が限られており、新たに太陽電池を設置できる適地が少なくなってきているのが懸念材料でした。下のグラフが示す通り、すでに日本は、平地面積当たりの太陽光発電の導入量が主要国で1位となっており、今後どのように設置場所を確保するかが課題となっています。

平地面積あたりの太陽光設備容量
主要国の平地面積当たりの太陽光発電の導入量を棒グラフで比較しています。

(出典)外務省HP(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/index.html)、Global Forest Resources Assessment 2020(http://www.fao.org/3/ca9825en/CA9825EN.pdf)
IEA Market Report Series - Renewables2020(各国2019年度時点の発電量)、総合エネルギー統計(2020年度確報値)、FIT認定量などより資源エネルギー庁作成

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この懸念を解決する技術として、脚光を浴びているのが「ペロブスカイト太陽電池」です。薄くて、軽く、柔軟であるなど、シリコン系太陽電池にはない特性から、これまでの技術では設置が難しかった場所にも導入できるものとして期待が高まっているのです。

軽くて柔軟、主原料のヨウ素が日本で生産できる太陽電池

では、シリコン系太陽電池と異なるその性質とはどのようなものでしょうか。

「ペロブスカイト」は、次のような形態の結晶構造を指します。ペロブスカイト太陽電池は、この構造を持つ化合物を発電層として用いるもので、さまざまな特長があります。

ペロブスカイトの結晶構造と、それを用いた太陽電池のしくみを図で表しています。

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1 低コスト化が見込める
ペロブスカイト太陽電池は、材料をフィルムなどに塗布・印刷して作ることができます。製造工程が少なく、大量生産ができるため、低コスト化が見込めます。

2 軽くて柔軟
シリコン系太陽電池が重くて厚みもあるのに対し、ペロブスカイト太陽電池は小さな結晶の集合体が膜になっているため、折り曲げやゆがみに強く、軽量化が可能です。

3 主要材料は日本が世界シェア第2位
ペロブスカイト太陽電池の主な原料であるヨウ素は、日本の生産量が世界シェアの約3割を占めており、世界第2位です(第1位はチリで約6割)。そのため、サプライチェーンを他国に頼らずに安定して確保でき、経済安全保障の面でもメリットがあります。

このように、多くの利点を持つペロブスカイト太陽電池ですが、課題もあります。それは、寿命が短く耐久性が低いこと、大面積化が難しいことです。また、変換効率の向上も課題です。近年では変換効率が向上するなど、シリコン系太陽電池に対抗し得るとして有望視されていますが、今後もさらなる向上が求められています。

活用できる分野は多様で、市場の拡大も見込まれる

ペロブスカイト太陽電池は、用途や目的に応じてさまざまな市場の拡大が想定されています。

ペロブスカイト太陽電池のタイプと、それぞれの活用分野、今後の開発目標などについて、図で表しています。

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たとえば、軽量でフレキシブルなタイプは、ビルの壁面や耐荷重が小さい工場の屋根などにも設置が可能で、太陽光発電の導入量の増加が見込まれます。すでに開発に一定の進展が見られ、今後は量産化に向けた製造技術の開発を進めるとともに、サプライチェーン構築と初期需要創出がカギとなります。

屋内・小型タイプは、IoTデバイスなど比較的小型な機器類に貼ることができます。こちらも、新たな市場への展開が期待できます。

また、超高効率型は、設置面積の制限などから高いエネルギー密度が求められる分野、たとえば交通や航空などの面でも利用が期待されています。低コスト化や、高い耐久性など、量産化へのハードルはまだ高い状態ですが、将来的な市場ニーズは高いと考えられます。

近年は海外でも開発競争が激化していますが、日本は技術開発において世界最高水準に位置しており、製品化のカギを握る大型化や耐久性の分野でもリードしています。後編では、海外の開発状況や、日本企業の取り組みなどについてご紹介します。

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