SAFの導入拡大をめざして、官民で取り組む開発と制度づくり

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持続可能な航空燃料「SAF(Sustainable Aviation Fuel)」。これまで「エネこれ」では、SAFの基礎知識(「飛行機もグリーンな乗り物に!持続可能なジェット燃料『SAF』とは?」参照)や、国内外の企業の動向(「SAF製造に向けて国内外の企業がいよいよ本格始動」参照)をご紹介してきました。今回は、SAFの導入を拡大するにあたって残されている課題を解決していくために、官民でどのような取り組みがおこなわれているかについてご紹介します。

SAFの導入促進に向けた官民協議会を設立

世界的に需要が増す中でSAFの導入を推進していくためには、官民をあげて取り組む必要があります。日本では、これまでの化石エネルギー(石炭や石油など)中心の産業構造・社会構造からCO2を排出しないクリーンエネルギー中心に転換する「GX(グリーン・トランスフォーメーション)」を実現するため、2023年2月に「GX基本方針」がさだめられました(「『GX実現』に向けた日本のエネルギー政策(前編)安定供給を前提に脱炭素を進める」参照)。「GX基本方針」では、SAFの使用量に関する目標もかかげられており、2030年時点で「本邦エアラインによる燃料使用量の10%をSAFに置き換える」という目標が設定されています。

この目標を達成するためには、国際競争力のある国産SAFの開発・製造を推進するとともに、将来的なサプライチェーンの構築に向けた、供給側となるSAF元売り事業者と、利用側となる航空会社の連携が大切です。

そこで、SAFの導入にまつわる技術的・経済的な課題を官民で共有し、議論しながら一体となって取り組みを進める場として、2022年4月に「SAF官民協議会」を経済産業省と国土交通省の共同で設立しました。また、SAFの導入課題は多岐にわたるため、協議会の下にワーキンググループを設置し、国産SAFの製造・供給、および流通について専門的な議論をする場としています。

SAFに関する会議体と構成員
SAFに関する会議体「SAF官民協議会」「製造・供給WG」「流通WG」について、構成員やテーマを記載しています。

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SAFの利用・供給拡大のために必要なこととは?

国産SAFの利用・供給拡大には、どんな方策が必要なのでしょうか?

まず供給側においては、必要なSAFを製造する能力や原料のサプライチェーンを確保し、国際競争力のある価格でSAFを安定供給できる体制をつくることが求められます。一方で需要側においては、SAFを安定的に調達できる環境を整備する必要があります。

しかし、市場が未成熟な段階で企業が大きな初期投資をすることはむずかしいことから、必要量を確保するための大胆な先行投資をサポートする方策と、中期的な規制・制度によって需給を創出する方策の2つが進められています。

先行投資への支援策

まず、SAFの技術開発・実証および認証取得を支えるため、「グリーンイノベーション基金」(「カーボンニュートラルに向けた産業政策"グリーン成長戦略"とは?」参照)を使って、SAFの製造技術開発の支援がおこなわれています。また、「GX経済移行債」(「『GX実現』に向けた日本のエネルギー政策(後編)脱炭素も経済成長も実現する方策とは」参照)を活用し、大規模なSAF製造のための設備投資支援を実施します。GX経済移行債を活用した支援は、約3,400億円規模となります。

さらに、「戦略分野国内生産促進税制」(GXなど、中長期的な経済成長をけん引する戦略分野のうち、特に生産段階でのコストが高いなどの理由で投資判断がむずかしい分野に対しておこなわれる税額控除措置)により、SAFの国内生産・販売量に応じた1リットルあたり30円の税制控除を予定しています。

「戦略分野国内生産促進税制」における、GX分野ごとの税額控除額
電気自動車等(EV・FCV、軽EV・PHEV)、グリーンスチール、グリーンケミカル、SAFの税額控除額について表形式で記載しています。

(注)競争力強化が見込まれる後半年度には、控除額を段階的に引き下げる(生産・販売開始時から8年目に75%、9年目に50%、10年目に25%に低減)

安定的な原料確保に向けたサプライチェーンの構築支援としては、日本のエアラインへのSAF供給につながるよう、海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)などによる原料・製造・輸送インフラの整備に取り組みます。

需給を創り出すための規制・制度

SAFの供給量については、「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律」、通称「エネルギー供給構造高度化法(高度化法)」において、2030年の目標量を「2019年度に日本国内で生産・供給されたジェット燃料の温室効果ガス(GHG)排出量の5%相当量以上」と設定する予定です。

その実現のために、日本のエアラインには、国際民間航空機関(ICAO)による「国際航空のためのカーボンオフセットおよび削減スキーム(CORSIA)」への参加が義務づけられています。加えて、国土交通省がさだめる「航空脱炭素化推進基本方針」にもとづいた脱炭素化推進計画を申請することが求められており、計画の中で、各社の2030年におけるSAFの利用目標量を設定するよう義務づけられています。

こうした取り組みを進めるためには、航空を利用する旅客および貨物利用者にも、SAFについての理解を深めてもらう必要があります。SAFの利用により燃料コストは一定程度増えると考えられますが、その費用は、航空サービス利用者・社が負担することも必要となるためです。SAFの利用がCO2の削減にどう貢献し、利用者にどんなメリットがあるのかを見える化することでSAFの積極利用を推進するような、規制・制度も検討されています。

SAFの利用を適正に評価するしくみづくりで、スコープ3の排出削減にも

費用負担について、航空サービス利用者の理解を得るために重要なのは、SAFの利用によってどれだけCO2の排出削減に貢献できたのか、利用者自身が把握できることです。とりわけ物流業界からは、国際的に使用されているCO2排出量のものさし「Scope3(スコープ3)」において、SAFによるCO2削減を認められるようにしてほしいという声が多くあがっています。

スコープ3とは、原材料の仕入れや製品の販売後など、事業活動のサプライチェーンにおいて間接的に排出される温室効果ガス(GHG)のこと。航空機で貨物を運ぶ際に排出されるCO2は、物流企業から見ると自社のスコープ3の対象となります。航空会社がSAFを利用することによって生まれるCO2排出削減価値を、物流企業が自社の排出削減量としてカウントできればよいのですが、そのためには計算方法や認証方法といったガイドラインの整備が必要となります。

航空機で貨物を運ぶという一連の流れの中で、SAFの利用やCO2排出量の計算・削減量の認証のタイミングをフロー図で説明しています。

(出典)第4回「SAFの導入促進に向けた官民協議会」 国土交通省資料(PDF形式:985KB)

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現在、SAF官民協議会の流通ワーキンググループでは、「SAF利用評価タスクグループ」が立ち上げられ、CO2排出・削減量の計算方法や、不正防止や第三者認証システムなどの検討がおこなわれています。

ほかにも、日本国内外の航空会社や物流企業、エネルギー関連企業などが、SAFが生み出す「環境価値」、つまりCO2排出削減量を評価する取り組みを進めています。

海外のSAFの「環境価値」評価の取り組み
リストアイコン 国際物流大手のDHL社(ドイツ):SAFを利用してCO2排出量を削減できる輸送サービス「Go Green Plus」を開始。追加料金なしで利用でき、透明性の高い証明書も発行
リストアイコン エネルギー関連企業のShell(英国):ブロックチェーン技術を用いたシステム「Avelia」を開発。SAFの環境特性を追跡し、バリューチェーン全体でSAFの需要を集約しSAFの生産・活用の効率化を図る
日本国内のSAFの「環境価値」評価の取り組み
リストアイコン 全日本空輸株式会社(ANA):産業横断的にSAFの利用を推進するパートナーシップ「SAF Flight Initiative」を立ち上げ。さまざまな業界の企業が参加し、CO2削減証明書も発行
リストアイコン 日本航空株式会社(JAL):法人向けに「JAL Corporate SAF Program」の提供を2024年4月から開始。SAFによるCO2排出量削減の環境価値を証書化して、プログラム参加企業に提供

上記ガイドラインが確立すれば、航空機を使った輸送や移動の際に排出されるCO2をSAFで削減したことが可視化できるようになり、それによって航空サービス利用者・社のSAFに対する需要が高まることも期待できます。今後の制度づくりの動きに注目です。

お問合せ先

記事内容について

資源・燃料部 燃料供給基盤整備課

スペシャルコンテンツについて

資源エネルギー庁 長官官房 総務課 調査広報室

2024年11月19日に公開した記事の一部に誤りがありました。GX経済移行債を活用した支援規模の金額が誤っておりました。また、通称「エネルギー供給構造高度化法(高度化法)」において設定予定の2030年のSAF供給目標量も誤っておりましたので修正しています。お詫びして訂正いたします。(2024年11月22日 11:30)

(注記)掲載内容は公開日時点のものであり、時間経過などにともなって状況が異なっている場合もございます。あらかじめご了承ください。

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