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日本の再エネ拡大の切り札、ペロブスカイト太陽電池とは?(後編)〜早期の社会実装を目指した取り組み

積水化学工業が開発したフィルム型ペロブスカイト太陽電池が「G7広島サミット2023」で展示されている写真です。

「G7広島サミット2023」会場にて展示されたフィルム型ペロブスカイト太陽電池
(出典)積水化学工業株式会社

2050年カーボンニュートラルの達成に向けて、再生可能エネルギー拡大の切り札として注目を集めている「ペロブスカイト太陽電池」。前編では、その特性や技術開発の状況についてご紹介しました(「日本の再エネ拡大の切り札、ペロブスカイト太陽電池とは?(前編)〜今までの太陽電池とどう違う?」参照)。今回は、海外での開発状況や日本企業の取り組み、そしてそれを後押しする政府の支援策などについて見ていきましょう。

産業化に向けた取り組みを政府も後押し

軽くて柔軟性に優れ、設置場所の大幅な拡大が期待できるペロブスカイト太陽電池は、製造工程が少なく低コスト化が見込める、主要材料であるヨウ素は日本が世界シェア第2位を占めるなど、将来性が期待できる技術です。政府も活用に向けた取り組みを後押ししており、「グリーンイノベーション(GI)基金」(令和2年度第3次補正予算にて国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構[NEDO]に造成した2兆円の基金)において、「次世代型太陽電池の開発プロジェクト」(498億円)を立ち上げ、2030年の社会実装を目指しています。

この支援を通じて、これまで複数の企業が製造技術の確立に向けた開発を進めてきました。

積水化学工業株式会社
積水化学工業が開発した、軽量で柔軟なフィルム型太陽電池の写真です。

ビルの壁面や耐荷重の小さい屋根などへの設置が可能な軽量で柔軟なフィルム型太陽電池を開発。
(出典)積水化学工業株式会社

株式会社東芝
東芝が開発したフィルム型太陽電池の写真です。

メニスカス塗布法を用いて、フィルム型の太陽電池を作製。エネルギー変換効率の向上と生産プロセスの高速化の両立を目指す。
(出典)株式会社東芝

株式会社カネカ
カネカが技術開発している建材一体型の太陽電池の写真です。

建材一体型への展開を目指し、既存のシリコン太陽電池製造技術を活用した技術開発。
(出典)株式会社カネカ

株式会社エネコートテクノロジーズ
エネコートテクノロジーズがIoT機器や建物用に開発している太陽電池の写真です。

京大発ベンチャー。IoT機器、建物用などへの展開も念頭に太陽電池を開発。
(出典)株式会社エネコートテクノロジーズ

株式会社アイシン
アイシンが開発しているペロブスカイト材料を均一に塗布するスプレー工法の写真です。

ペロブスカイト材料を均一に塗布するスプレー工法の技術を開発。
(出典)株式会社アイシン

たとえば、積水化学工業株式会社はビルの壁面や耐荷重の小さい屋根などへの設置が可能な軽量で柔軟なフィルム型太陽電池を開発。30センチ幅の製品のロールtoロール製造プロセス(複数のドラム・ロールで製品を搬送しながら印刷や塗布をおこなう方法)での連続生産が可能になり、耐久性10年相当、発電効率15%の製造に成功しています。

積水化学工業が開発しているフィルム型太陽電池の製造風景写真です。

ロールtoロールによる製造
(出典)積水化学工業株式会社

積水化学工業研究所でおこなわれた、フィルム型太陽電池の屋上試験の写真です。

積水化学工業研究所での屋上試験
(出典)積水化学工業株式会社

また、2025年に全面開業するJR西日本の「うめきた(大阪)駅」広場でのペロブスカイト太陽電池の設置や、2023年11月に公表した、世界初となる1MW(メガワット)超の高層ビル壁面への導入計画など、ユーザー企業との実証計画も複数公表しています。

内幸町一丁目街区南地区第一種市街地再開発事業完成イメージ
東京の内幸町における、世界初のフィルム型ペロブスカイト太陽電池による高層ビルでのメガソーラー発電計画のイメージ写真です。

(仮称)内幸町一丁目街区開発プロジェクト
(出典)積水化学工業株式会社

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早期の社会実装を目指して

こうした研究開発の成果が実りつつある一方で、中国、英国、ポーランドなど海外でも開発が急速に進められており、量産化に向けた動きも見られるなど、競争が激化する状況にあります。日本が世界での競争に勝ち抜くためには、2030年を待たずして社会実装を実現することが必要です。

そこで、2023年8月には産業構造審議会 グリーンイノベーションプロジェクト部会グリーン電力の普及促進等分野ワーキンググループにて、早期社会実装に向けた追加的取り組みとして、開発事業の予算を150億円積み増し、648億円とすることなどを決定しました。今後は、基盤技術の開発事業、大型化や発電コストの向上などに向けた実用化事業、量産技術なども含めた実証事業などの拡充をはかっていきます。

ペロブスカイト太陽電池の産業化を確立するためには、量産技術をできるだけ早く確立すること、生産体制を早急に整備すること、そして需要を創出することが不可欠です。

次世代太陽電池の早期社会実装に向けた今後の政策の方向性
次世代太陽電池の早期社会実装に向けた今後の政策の方向性を、表にまとめています。

(出典)内閣官房HP 分野別投資戦略参考資料(次世代再エネ)

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ペロブスカイト太陽電池を早期に社会実装することを目指し、普及拡大に向けた量産化の国内製造サプライチェーンを構築するため、政府ではGX経済移行債を活用し、生産拠点整備のためのサプライチェーン構築を支援していく方針であり、GX実行会議でとりまとめた分野別投資戦略において、「生産拠点整備のためのサプライチェーン構築支援」という内容が盛り込まれました。また、令和6年度予算案には、水電解装置、浮体式洋上風力発電設備などと合わせて、ペロブスカイト太陽電池のサプライチェーン構築に向けて、令和6年度548億円、国庫債務負担行為を含め総額4,212億円の「GXサプライチェーン構築支援事業」が計上されています。

また今後、ペロブスカイト太陽電池を世界的に普及させるためには、その性能をどう評価するかという国際標準が必要です。2023年4月におこなわれた「G7気候・エネルギー・環境大臣会合(G7札幌)」では、合意文書に「ペロブスカイト太陽電池や浮体式洋上風力発電、波力発電などの革新的技術の開発や、新技術実装のための評価方法の国際標準化を国際協調のもとで推進する」という内容が盛り込まれました。

日本は、国内での研究開発や実装を進めつつ、世界に向けた取り組みにも力を入れていきます。

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