2023―日本が抱えているエネルギー問題(前編)

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安定供給への取り組み

エネルギーは日常生活や社会活動を維持するために欠かせないものですが、石油や天然ガスなどの資源に乏しい日本はエネルギー自給率が低く、2021年度の自給率は13.3%でした。他のOECD(経済協力開発機構)諸国とくらべても、低い水準となっています(38か国中37位)。2010年度のエネルギー自給率は20.2%でしたが、東日本大震災後に原子力発電所の稼働が停止したことなどによって大幅に下がりました。近年は原子力発電所の再稼働や再生可能エネルギー(再エネ)の導入拡大などにより、少しずつ上昇傾向にありますが、まだまだ震災前の水準には届いていません。

主要国の一次エネルギー自給率比較(2021年)
主要国の一次エネルギー自給率について、棒グラフで比較しています。

(出典)IEA「World Energy Balances 2022」の2021年推計値、日本のみ資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」の2021年度確報値
(注記)表内の順位はOECD38カ国中の順位

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我が国のエネルギー自給率
2010年度から2021年度までの日本のエネルギー自給率の推移を折れ線グラフで表しています。

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エネルギー自給率の低い日本は、海外から輸入する石油・石炭・天然ガス(LNG)などの化石燃料に大きく依存しています。1970年代に起こったオイルショックでエネルギー源の多角化が進みましたが(「【日本のエネルギー、150年の歴史4】2度のオイルショックを経て、エネルギー政策の見直しが進む」参照)、東日本大震災以降はふたたび化石燃料への依存度が高まっており、2022年度は83.5%となっています。

日本の一次エネルギー供給構成の推移
1973年度、2010年度、2022年度の日本の一次エネルギー供給構成について、それぞれ円グラフで表し、比較しています。

(出典)資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」の2022年度速報値
(注記)四捨五入の関係で、合計が100%にならない場合がある
(注記)再エネ等(水力除く地熱、風力、太陽光など)は未活用エネルギーを含む

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エネルギーを海外に依存していると、国際情勢などによっては、エネルギーを安定的に確保できないといった問題が起きる可能性があります。近年では、2022年に始まったロシアのウクライナ侵略などが、日本のエネルギー情勢に大きな影響を与えています。

日本は原油の90%以上を中東地域に依存していることから、今後も原油を安定的に確保するため、中東諸国との関係強化を進めています。LNGや石炭は、中東への依存度は低いものの、アジア・オセアニアからの輸入割合が大きくなっています。そのため、引き続き調達先の多角化や権益の獲得に取り組んでいます。また、「経済安全保障推進法」にもとづき、天然ガスを特定重要物資に指定し、民間企業の調達力を活かして、有事に備えてLNGを確保するしくみを整えるとともに、有事の際にはこの措置とあわせて、LNGを事業者間で融通しあうための枠組みにより対応していきます。

日本の化石燃料輸入先(2022年)
2022年の日本の化石燃料輸入先について、原油、天然ガス、石炭それぞれ輸入国と輸入割合を円グラフで表しています。

(出典)財務省貿易統計(海外依存度は総合エネルギー統計より、年度ベース)

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経済性とのバランス

経済活動や家計にも影響を与える電気料金は、東日本大震災以降、上昇傾向にあります。他方、電気料金を国際比較すると、日本よりも電気料金の高い国もあります。

電気料金平均単価の推移
2010年度から2022年度までの日本の電気料金平均単価について、家庭向け・産業向けそれぞれの推移を折れ線グラフで表しています。

(出典)発受電月報、各電力会社決算資料、電力取引報等をもとに資源エネルギー庁作成
原油CIF価格:輸入額に輸送料、保険料等を加えた貿易取引の価格

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電気料金の国際比較
2022年の主要国の電気料金を、家庭用・産業用それぞれについて棒グラフで比較しています。

(出典)IEA「Energy Prices and Taxes for OECD Countries 2022」をもとに資源エネルギー庁作成
(注)米国は本体価格と税額の内訳不明

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電気料金に大きな影響を与える燃料価格は、2022年に大きく上昇しました。ウクライナ情勢をめぐる地政学的な緊張の高まりが主な要因で、最近はやや落ち着きを見せていますが、2010年代後半の水準と比べると、高い水準が続いています。

過去の燃料価格の推移と現在の状況
2011年から2023年までの燃料価格について、原油・LNG・石炭それぞれの推移を折れ線グラフで表しています。

(出典)CME日経、財務省貿易統計をもとに資源エネルギー庁作成

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地球温暖化への対策

地球温暖化対策として有効と考えられているのが、温室効果ガス(GHG)の排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」です。現在、世界中でカーボンニュートラルに向けた取り組みが進められています(「『カーボンニュートラル』って何ですか?(前編)〜いつ、誰が実現するの?」参照)。

日本は、2050年までのカーボンニュートラルの実現を表明しています。日本を含め、2050年までのカーボンニュートラルを表明した国・地域は147、これらの国におけるCO2排出量は世界全体の40%(2020年実績)を占めています。また、2060年および2070年までのカーボンニュートラルを表明している国・地域を含めると、世界全体のCO2排出量の90%となります。

カーボンニュートラルを表明した国・地域
カーボンニュートラルを表明した国・地域を、達成目標年ごとに色分けし、世界地図上に示しています。

(出典)Climate Ambition Allianceへの参加国、国連への長期戦略の提出による2050年CN表明国、2021年4月の気候サミット・COP26等における2050年CN表明国等をカウントし、経済産業省作成(2023年5月時点)

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日本のGHG排出量は、東日本大震災後増加しましたが、2021年度は11.7億トンまで減少しました。排出量の84%が、発電などによって発生するエネルギー起源のCO2による排出になっています。日本は、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、2030年度には2013年度比でGHGを46%減らすとともに、さらに50%の高みを目指して挑戦を続けることとしており、今後も、削減に向けた努力を続ける必要があります。

日本の温室効果ガス排出量の推移
2010年度から2021年度までの日本の温室効果ガス排出量の推移を棒グラフで表しています。

(出典)総合エネルギー統計、日本の温室効果ガス排出量の算定結果(環境省)をもとに資源エネルギー庁作成

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カーボンニュートラルへの転換イメージ
2020年から2050年カーボンニュートラルへの転換に向けたCO2排出削減のイメージを図で表しています。

(注記)数値はエネルギー起源CO2

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なお、2021年の各国のエネルギー起源温室効果ガス排出量が世界全体の排出量に占める割合は、中国がもっとも多く32%、米国14%となっており、日本は3%となっています。気候変動対策は一国だけで実現できるものではなく、世界規模で取り組んでいく必要があります。

各国のエネルギー起源温室効果ガス排出量(2021年)
各国のエネルギー起源温室効果ガス排出量を円グラフで表しています。

(出典)IEA(2023)「GHG Emissions from Energy」

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日本では、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、2023年2月に「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定されました(「『GX実現』に向けた日本のエネルギー政策(前編)安定供給を前提に脱炭素を進める」参照)。これはエネルギー安定供給・経済成長・脱炭素を同時に実現する政策をまとめたロードマップで、徹底した省エネルギーの取り組みや、再エネ・原子力発電などのクリーンエネルギーの活用などを進めていくための政策パッケージについて具体的な方法が盛り込まれています。

カーボンニュートラルを実現するためには、考えられるあらゆる方法を実行し、技術開発などを進めていく必要があります。例えば、水素の利活用や、CO2削減に向けたCCUS/カーボンリサイクル技術の導入に向けた取り組みなどを進めています。

自然災害に対する安全性の確保

地震や台風などの自然災害が多い日本において、災害発生時にもエネルギーの安定供給や安全性を確保することはきわめて重要です。

電力については、電力事業者間が災害時に連携して復旧に当たる枠組みの整備、送配電網の強靱化、災害に強い分散型電力システムの構築などを進めています。ガスについても、災害時の連携した復旧枠組みの整備に加え、ガスの需要がひっ迫した際の大口需要家に対するガスの使用制限、緊急時に備えたLNGの確保などを進めています。

また、2050年カーボンニュートラルも見すえて、再エネの大量導入と電力インフラの強靱化を系統増強により実現する旨の具体的な計画(広域連系系統のマスタープラン)を、「電力広域的運営推進機関」が策定・公表しました(2023年3月)。北海道〜本州間で電気をより効率的に送電するための海底直流送電についても、具体的な整備計画の検討を開始しました。

地域間連系線の増強状況
電力系統の各エリアをつなぐ地域間連系線について、今後の増強状況を日本地図上に示しています。

(出典)広域系統長期方針(広域連系系統のマスタープラン)(電力広域的運営推進機関2023年3月29日策定)のうちベースシナリオより電力広域的運営推進機関作成

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原子力発電所については、引き続き安全最優先で、原子力規制委員会が新規制基準に適合すると認めた場合のみ、地元の理解を得ながら、原子力発電所の再稼働を進め、エネルギーの安定供給とカーボンニュートラルの実現の両立を目指します。新規制基準では、従来の規制基準にくらべて、事故防止のための対策が強化されるとともに、万一の際の備えやテロ対策を追加でおこなっています。

S+3Eを目指して

日本のエネルギー政策は、「S+3E」の考え方を基本方針としています。安全性(Safety)を大前提として、安定供給(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境適合(Environment)を同時に達成しようというものです。日本は資源に恵まれない国です。すべての面ですぐれたエネルギーは存在しません。エネルギー源ごとの強みが最大限に発揮され、弱みが補完されるよう、多層的なエネルギー供給構造を実現することが不可欠です。

S+3Eの図
日本のエネルギー政策の基本方針である「S+3E」の内容を図で表しています。

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「S+3E」の考え方を基本として、2030年度におけるエネルギー需給の見通し、いわゆる「エネルギーミックス」を策定しています。2030年度のGHG削減目標(2030年度に2013年度比46%減)を踏まえ、徹底した省エネルギーや非化石エネルギーの拡大など、需給両面におけるさまざまな課題を野心的に克服していく必要があります。

一次エネルギー供給/電源構成
日本の一次エネルギー供給と電源構成について、それぞれ2022年度実績と2030年度目標を棒グラフで比較しています。

(出典)資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」の2022年度速報値、2030年度におけるエネルギー需給の見通し(関連資料)
(注記)四捨五入の関係で、合計が100%にならない場合がある
(注記)再エネ等(水力除く地熱、風力、太陽光など)は未活用エネルギーを含む

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今回紹介した情報以外にも、日本のエネルギーについてさらに詳しい情報が「日本のエネルギー2023」に掲載されています。私たちの生活を支えるエネルギーのことを考えていくために、ぜひ一度ご覧ください。
日本のエネルギー2023

「2023―日本が抱えているエネルギー問題(中編・後編)」では、エネルギー問題を解決するための取り組みや、福島の復興についても解説します。

2022年版の過去記事もあります。こちらをご覧ください。
2022—日本が抱えているエネルギー問題(前編)

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長官官房 総務課 調査広報室

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