知っておきたいエネルギーの基礎用語 〜CO2を集めて埋めて役立てる「CCUS」

北海道・苫小牧市でおこなわれているCCS実証実験の様子

北海道・苫小牧市のCCS実証実験

いま、二酸化炭素(CO2)を削減する方法として注目されているのが、排出されたCO2を集めて地中に貯留してしまおうというアイデアです。さらに、集めたCO2を何かに役立てることができれば一挙両得です。今回はそんな画期的な取り組みである「CCS」と「CCUS」について見てみましょう。

「CCS」「CCUS」とは?

地球温暖化の原因のひとつとなるといわれる二酸化炭素(CO2)。その削減は、世界的にも重要な課題となっています。

石油や石炭など「化石燃料」と呼ばれる燃料をエネルギーとして使う火力発電では、このCO2が多く排出されてしまいます。とはいえ、天候に左右されず、すぐに発電できる火力発電は、エネルギーの安定的な供給をおこなうため必要な電源(電気をつくる方法)です。そこで、火力発電のCO2排出量をおさえる(低炭素化)ため、さまざまな取り組みがなされています。「CCS」「CCUS」はその取り組みのひとつです。

「CCS」とは、「Carbon dioxide Capture and Storage」の略で、日本語では「二酸化炭素回収・貯留」技術と呼ばれます。発電所や化学工場などから排出されたCO2を、ほかの気体から分離して集め、地中深くに貯留・圧入するというものです。

いっぽう「CCUS」は、「Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage」の略で、分離・貯留したCO2を利用しようというものです。たとえば米国では、CO2を古い油田に注入することで、油田に残った原油を圧力で押し出しつつ、CO2を地中に貯留するというCCUSがおこなわれており、全体ではCO2削減が実現できるほか、石油の増産にもつながるとして、ビジネスになっています。

CCSの流れ
CO2排出源から回収、貯留するまでの流れを示しています。

国際エネルギー機関(IEA)の報告書では、パリ協定で長期目標となった「2°C目標」(気温の上昇を2°Cより低く保つこと、 「今さら聞けない『パリ協定』」 参照)を達成するため、2060年までのCO2削減量の合計のうち14%をCCSが担うこと が期待されています。

「CCS」「CCUS」実現のための課題

経済産業省では、このCCSおよびCCUSに使われる技術の開発を支援しており、2020年頃に、技術の実用化を目指しています。

課題は、CO2を他の気体から分離させて回収する時にかかるコストです。分離・回収の方法は、CO2を吸収する液体を使って化学的に分離する方法、特殊な膜を使ってCO2だけを分離させる方法などがあり、コストも含めた実用的な技術の確立に向けて、研究が進められています。

経済産業省が開発を支援した固体吸収材を使って、これまでの技術の半分以下のコストでCO2を分離・回収することを目指すべく、関西電力の舞鶴発電所で実証試験をおこなうことが決まりました。

また、CCSを進めるにあたっては、十分な量のCO2を貯留するための地層を見つけることが必要です。このため経済産業省では、平成26年度より、環境省と共同で、CO2の貯留に適した地層の調査事業をおこなっています。

CCUSにおけるCO2の利用先についても、研究が進められています。化学原料の生産に使われることが考えられているほか、ユニークなところでは、太陽光エネルギーをつかってCO2を燃料に変換する藻を育て、バイオ燃料として利用しようという研究もおこなわれています。

日本ですすめられている実験

日本では、2012年から、北海道・苫小牧でCCSの大規模な実証実験がおこなわれています。2016年度からは、港内の海底の下にCO2を高い圧力で貯留する作業を開始しました。製油所から供給されたガスの中からCO2とそれ以外の気体を分離し、海底の深くに掘った井戸に、年10万トン規模のCO2を3年間埋めこむ計画です。終了後は2年間、CO2が漏れ出さないようにモニタリングする予定です。

また、国際連携も進んでいます。2015年には、日米共同でCCSの共同研究開発を促進するため、協力文書がかわされました。2017年10月には、協力範囲をCCUSに広げることで合意。ビジネスベースでも協力を進めることが約束されています。

こうした取り組みを通じて、CCSとCCUSの技術を確立し、CO2排出量削減に役立てていくことが期待されています。

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