2025年、「放射性廃棄物」の処分プロセスはどうなっている?(前編)

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原子力発電の利用についてはさまざまな意見があるものの、 原子力発電により発生した「放射性廃棄物」(メディアなどでは、いわゆる"核のゴミ"と呼ばれることもあります )をどのように処分するか?ということは、私たち全員が考えるべき問題です。放射能レベルの高い「高レベル放射性廃棄物」の処分については、日本は世界各国と同じく「地層処分」という処分方法を採用しており、処分地を選定するためのプロセスが丁寧に進められています。日本における放射性廃棄物の処分プロセスは、今どうなっているのでしょう?2025年の現状をご紹介しましょう。

「地層処分」とは?放射性廃棄物の処分方法をおさらい

原子力発電により発生した使用済燃料は、廃棄物の減容化(容積を減らすこと)・有害度の低減・資源の有効利用のため、その中から再処理工場で再利用できるウラン・プルトニウムが回収されます。残った廃液は、ガラスにとかし込んで「ガラス固化体」にされます。このガラス固化体を、「高レベル放射性廃棄物」といいます。

その上で、金属の入れ物や緩衝材で覆われ(人工バリア)、地下深くの安定した岩盤の300メートル以上深いところに埋められます(天然バリア)。これが「地層処分」です。

日本における発電から最終処分までの流れ(イメージ)
日本における発電から再処理工場を経て最終処分にたどり着くまでの流れを図で表しています

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これまでほかの処分方法も検討されてきたものの、この地層処分が現時点でもっとも安全で実現可能であるとして、国際的に共通の考え方となっています。

長期管理や海洋投棄など地層処分以外の処分方法も検討されてきたものの、地層処分が現時点で最も安全で実現可能であるという考え方の変化や理由を図で表しています。

ほかの処分方法も国際的に検討されてきたが、地層処分が現時点でもっとも安全で実現可能

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このように、地層処分は国際的に共通の考え方である一方で、処分地選定済みの国はフィンランド、スウェーデン、フランス、カナダ等に留まっています(「北欧の『最終処分』の取り組みから、日本が学ぶべきもの1」 参照)。日本も、ほかの多くの国と同様に、処分地となる場所を選定する途上にあります。選定するにあたっては、十分な時間をかけて、地域の理解を得ながらおこなう必要があるため、丁寧にプロセスが進められています。

日本における現在の計画では、全国で1か所の最終処分場を設置すること、また施設は地上1〜2平方キロメートル、地下6〜10平方キロメートル程度の規模を建設することが想定されています。

現在の計画での地上施設・地下施設の概要などを図で表しています

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現在、3つの自治体でおこなわれている「文献調査」とは?

佐賀県玄海町では、2024年4月15日に町議会の原子力対策特別委員会に「請願審査」が付託されることとなり、26日に町議会がこの請願を採択。これを受けて、5月1日に国から文献調査の申し入れをおこない、10日に玄海町長が「文献調査」の受け入れを表明しました。その後、6月10日から調査が開始されています。

2025年2月時点で、この文献調査をおこなっている自治体は、北海道の寿都町(すっつちょう)、神恵内村(かもえないむら)、と合わせ3か所となっています。

この「文献調査」とは、どのようなものでしょうか。最終処分の処分地選定プロセスは、大きく分けて「文献調査」「概要調査」「精密調査」の3つのステップで構成されます。調査の土台となるのは、日本全国の状況を科学的データから客観的に整理してまとめ、地図のかたちであらわした、「科学的特性マップ」です。

この科学的特性マップは、火山や断層といった"考慮すべき科学的特性"によって、日本全国を4色で塗り分けています。日本にも、「地層処分に好ましい特性を確認できる可能性が高い地下環境がひろく存在する」という見通しを共有することで、関心や理解を深めてもらうのが狙いです。

そうした中で、最終処分事業について関心を示す市町村があれば、住民同士の議論のベースとして役立てられるよう、全国規模の文献やデータと地域に即した地域固有の文献やデータが調査・分析された上で、提供されます。これが「文献調査」と呼ばれるステップです。つまり、「文献調査」は、事業について議論を深めるための対話活動の一環なのです。「文献調査」を通じてもたらされたデータを基に、市町村では、この事業やこの事業が地域にあたえる影響などについて議論を深めます。

ただし、「文献調査」は、処分場選定に直結するものではないという点をおさえておくことが重要です。もし、「文献調査」の結果、次のステップである「概要調査(ボーリング調査など)」に進むことが検討される場合には、法律に基づき、地元の意見を聴く場が設けられます。そこでの意見に反してプロセスが先に進められることはありません。

後編では、先に「文献調査」をスタートした北海道の2自治体について、現状をご紹介しましょう。

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