海洋調査船「かいよう」
海洋調査船「かいよう」は2016年2月に退役となりました。
「かいよう」1985年に建造され、深海飽和潜水実験「ニューシートピア計画」における海中作業実験船として、1990年まで精度のたかい水中作業を支えてきました。現在は海洋調査船として、主に海底下深部構造探査に従事しています。
ミッション
- 深海調査曳航システム「ディープ・トウ」の潜航支援
- 海底下深部の構造探査
- 海底地形調査
特徴
- 半没水型双胴船
- SWATH(スワス)型と呼ばれる半没水型双胴船です。そのため、波の影響を受けにくく、船上作業を安全かつ効率的に行うことができます。さらに作業スペースを十分に確保でき、より多くの観測実験機器を搭載することができます。
- 自動船位保持装置(DPS Dynamic Positioning System)
- 波や風、潮流によって船体が移動すると、GPSや音響トランスポンダからの情報をもとに、自動的に自船の位置を定点に保つことができます。0.3〜0.5ノットでの曳航が必要な「ディープ・トウ」や海水温度や塩分測定の機器・CTDの展開、水深6,000mの海水あるいは水深各層ごとの海水採取などにDPSは威力を発揮します。
- 「海底地震計屈折法システム」を搭載
- エアガンで人工地震波を起こし、プレート内部の各地層で屈折・反射した波を海底地震計でとらえて地下構造を解析する「海底地震計屈折法システム」を搭載しています。得られたデータを解析することで、海底下数十kmまでの地殻構造を詳細に把握することが可能です。
- ニューシートピア計画
- 1985年に始まった潜水実験です。1988年にはダイバーによる300mの潜水実験に成功し、1990年の最終潜水実験までに潜水技術の開発と、水深300mもの厳しい条件下における海中作業技術・潜水システムを確立し、「環境圧潜水」というジャンルに大きな貢献を果たしました。
主要目
全長 |
61.5m |
幅 |
28.0m |
深さ |
10.6m |
喫水 |
6.3m |
国際総トン数 |
3,350トン |
航海速力 |
約13ノット |
航続距離 |
約6,200マイル |
定員 |
60名(乗組員29名、研究者等31名) |
主発電機関 |
ディーゼル機関 1,250k×ばつ4基 |
主推進機関 |
誘導電動機 860k×ばつ4基 |
主推進方式 |
×ばつ2軸 |
研究者のための設備
半没水型双胴船であるため、波浪による船体の動揺が格段に小さいため、船上作業を効率よく、安全に実施できるとともに甲板面積が広く、作業スペースを十分にとることができ、より多くの実験観測機器を搭載することができます。 また、船上で得られたデータの分析等に必要な実験室等を4室(第1〜第4ラボラトリー)有しています。
主な経歴
2016年2月 |
退役 |
2009年6月 |
深海において水平300kmの長距離音響通信に成功 |
2008年2月 |
護衛艦「あたご」と漁船「清徳丸」衝突事故海域調査を実施 |
2002年2月 |
「ハイパードルフィン」陸揚(「なつしま」に艤装) |
2000年2-4月 |
「ハイパードルフィン」搭載工事実施 |
1999年5-7月 |
「かいれい」とともに南海トラフにおいて巨大な海山を発見 |
1999年3-5月 |
MCSシステム搭載工事実施 |
1997年6月 |
海上気象通報優良船として気象庁長官から表彰を受ける |
1993年8月 |
北海道南西沖地震の震源域調査を実施 |
1992年3月 |
高知県室戸沖にて「滋賀丸」を探索 |
1990年7月 |
ニューシートピア計画300m最終潜水実験を実施 |
1989年3月 |
ニューシートピア計画フェーズII 200m潜水実験を実施 |
1987年12月 |
日仏共同STARMER計画で北フィジー海盆リフト系調査においてディープ・トウにより熱水活動を発見 |
1985年11月 |
相模湾にて日航ジャンボ機尾翼調査を実施 |
1985年10月 |
海中作業実験ニューシートピア計画実海域試験を実施 |
1985年 |
竣工 |