税務職員の呆れたモラル。
「申告は四分の一でいいから、半分俺にくれ」

記事をクリップ
URLをコピー
記事を印刷
Xでシェア
Facebookでシェア
はてなブックマークでシェア
LINEでシェア
noteでシェア

税務署の調査能力なんてたかが知れている、という現地の風評があり、そもそも「まともに申告していない」ことが多い。東南アジアの輸入関税がやたらと高いのは、自国産業を保護するという目的だが、うがった見方をすると自国内での税徴収がまともに出来ないから水際でしっかり徴税しようというのも、主たる理由なのではないかと思ったりする。

日本でも昔はこんな話があった。農協職員の指導により農家の過少申告が一斉に行われた事件である。そのときの農協職員のセリフが笑える。「Cさん、そんなに大きな(正しい)金額で申告したら、まわりの人たちが迷惑でしょ」。

「徴収」のための
租税条約とは?

前述してきたのは、課税するための租税条約である。ところが、税収というのは「債権回収」してナンボのものである。債権回収すなわち「徴収」するための租税条約が、「税務行政執行共助条約」である。

なぜ、徴収が問題になるのか?国税が課税しました。納税者が税金を払わなかったので滞納となりました。ならば、国税徴収法という強権で差押えすればいいじゃないか、となるわけだが、実は差押えできるのは「国内財産」だけである。オフショア財産はアンタッチャブルとなる。

なので、日本を脱税して財産を海外にキャピタル・フライトさせれば、国税は徴収できないことになる。この条約に加盟すれば、制度の建前では締結国間で徴税事務を連携して行うことができる。日本が加盟したのは2011年と意外と遅かった。

締結国(多数国間条約)は日本を除いて60ヵ国、うち日本と二国間条約を締結していない国は21ヵ国ある。アジアでは、日本の「手の届かない国」はまだまだある。タックヘイブンでは、香港、マカオがあげられる。「お国の事情」だろうか。ちなみにシンガポールは条約締結しているが、香港との立ち位置の違いがあるのか?

BEPS(Base Erosion and Profit Shifting)
プロジェクトとは?

多国籍企業が国際的な税制の隙間や抜け穴を利用した租税回避によって、税負担を軽減している問題「税源浸食と利益移転」について、日本も参画している。二重課税の問題ではなく、「ループホール」(税法の抜け穴)を悪用した、いうならば「国際間二重非課税」の取引を防止しようというプロジェクトである。租税回避プロモーターはBEPSの動向を注意深く見ているに違いない。

国税最強部門、
「資料調査課」出身だから書けたこと

私の本業は税理士です。顧客の税務相談、税務申告の代理、税務調査の立会などを生業としています。 そんな私が、なぜ本を書くようになったのか? 拙著「税金亡命」が誕生するまでのお話をさせてください。

この「税金亡命」は日本と香港が舞台になっています。香港はアジアでトップクラスのタックスヘイブン地域です。日本居住者が、資産運用、資産回避、ときには脱税のために利用しているタックスヘイブンです。物語は租税回避から始まり、キャピタルフライト、そして脱税者自身までもフライトしてしまう「タックスエグザイル」に展開します。

仕事で香港に行くことが多く、現地のファンドハウス、プライベートバンカー、公認会計士、保険会社、日本からアウトバウンドで香港に進出した経営者などと、数多くのミーティングを重ねてきました。租税スキームのリーガルチェックも受任してきましたが、クオリティの高いものばかりではなく、なかには、ただの脱税に近い残念なものが散見されました。

本来の「租税回避スキーム」は、A国の税法で考え、B国の税法で考え、A国とB国との租税条約で考え(3か国以上に及ぶものもある)、そこにある「ループホール」を見つけて構築します。いわゆる、「国際二重非課税」となる利益移転を仕組む訳です。どこの国からも、あるいは高税率国から課税されない仕組みを作って、納税者の利益最大化を図るわけです。

小説を読まれる方は、専門家だけではありません。したがいまして、高度な租税回避スキームを作品の中で展開しても、理解どころが一般専門書になりかねません。そこに注意して出来るだけ身近にありそうな、専門家以外でも想像しやすいような材料で書き上げました。「税金亡命」は国際税務事件などの入門書として興味をもっていただけたらと思います。

「へぇ、そんなことがあるんだね」という本にしたかった。国税、富裕層(脱税者)、国税OB税理士という対立軸の中で、それぞれの思いが交錯し、グローバルな物語が描けたと思います。


【タックスヘイブンの実情に迫る衝撃作】

『税金亡命』

国税最強部門、「資料調査課」出身の著者が描く、衝撃のリアルノベル。
知られざるタックスヘイブンの真実とは?

<ストーリー概要>
日本とアジア一のタックスヘイブン、香港を舞台にした脱税事件の物語。
・脱税を取り締まる国税
・脱税に手を染める富裕層
・脱税の手引きをする国税OB税理士

この三者の攻防戦が描かれる。

事実、マルサでも手出しできない巨悪脱税事件では、国税OBが裏で糸を引いていることもある。虚々実々の駆け引きの末、最後に笑うのは誰だ!?

ハンドキャリーによるキャピタル・フライト、金融システムを活用した脱税資金の出口戦略など、オフショア利用者の「常識」が散りばめられている。

マルサでも手出しできないような、大口、悪質、海外、宗教事案を調査してきた著者だからこそ描ける圧倒的臨場感。その衝撃のストーリーとは?

ご購入はこちら!
>>>[Amazon.co.jp] [紀伊國屋書店BookWeb] [楽天ブックス]

税金亡命
税金亡命
佐藤弘幸 著
<内容紹介>

国税か、富裕層か、はたまた国税OB税理士か? 最後に笑うのは誰だ? 「日本―香港」で起きた巨額の脱税事件。国税最強部隊出身の著者が圧倒的な臨場感で描く! 知られざるタックスヘイブンの真実

amazonで購入する 紀伊國屋書店で購入する 書店で購入する

特集

あなたにおすすめ

書籍オンライン

書籍オンライン 記事ランキング

  • 最新
  • 昨日
  • 週間
  • いいね!

愛読者クラブ登録

書籍 週間ランキング

(POSデータ調べ、12/1〜12/7)

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /