ぼくらの「値段」は、
資本主義のルールでこう決められている
教養として知っておきたい『資本論』のエッセンス
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価格の相場を決めるのは「価値」、
そこから価格を上下させるのが「使用価値」
「商品の値段は『価値』で決まるなんて、あり得ない! 『使用価値』(相手が感じるメリット)の方が重要だ!」
会社で「お客様へのメリットを考えろ!」と言われ続けてきたぼくらには、『資本論』の「価値が値段を決める」というロジックはにわかに信じられません。
おっしゃる通り、「使用価値」は重要です。そして、使用価値が価格に何も影響を及ぼさないかというと、そうではありません。経済学的に言うと、「使用価値」は、需要・供給の法則を通じて、商品の値段に影響を与えます。
使用価値が高いものは、より多くのお客さんがほしがります。需要が大きいわけです。「もっと高くてもほしい!」と考えているため、結果的に値段が相場よりも高くなるのです。
反対に、使用価値が低いものは、「もっと安くないと買わない」と言われてしまい、安くなっているのです。しかし、いくら使用価値が高くても、紙コップが10万円を超えることはまずありません。反対に、いくら使用価値が低くても、ジェット機が100万円より安くなることも考えられません。
それは、価値が値段の基準をつくっており、この種のものは、だいたいこれくらいの値段だよな、という相場をつくっているからなのです。個別の商品の値段は、その相場を基準にして、値段が決まっています。相場をつくるのはあくまでも「価値」、そして、その基準から値段を上下させるのが「使用価値」です。
ここは強調しても強調しすぎることはありません。もちろん、「使用価値」がなければ、商品になりません。買ってもらえません。だから使用価値(商品のメリット)を追求するのは当然ですし、必要不可欠です。
しかし、それは商品の一側面でしかありません。使用価値があれば(お客様にメリットがあれば)、問題なく会社が黒字になるかというと、そうではないのです。
使用価値があれば、お客さんは買ってくれるでしょう。しかし、「高値で」とは限りません。お伝えしたように、商品の値段は「価値」が基準になって決まっているというのが経済の原則です。ですから、それをつくるのに労力がかかっていない(大した労力がかからない)と思われるような商品は、高い値が付かないのです。(第4回に続く)
※(注記)この記事は、書籍『超入門 資本論』の原稿を一部加筆・修正して掲載しています。
著者プロフィール
木暮太一(こぐれ・たいち)
経済入門書作家、経済ジャーナリスト。ベストセラー『カイジ「命より重い!」お金の話』『僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?』『新版 今までで一番やさしい経済の教科書』など著書多数。慶應義塾大学経済学部を卒業後、富士フイルム、サイバーエージェント、リクルートを経て独立。学生時代から難しいことを簡単に説明することに定評があり、大学時代に自主制作した経済学の解説本「T . K論」が学内で爆発的にヒット。現在も経済学部の必読書としてロングセラーに。相手の目線に立った話し方・伝え方が、「実務経験者ならでは」と各方面から高評を博し、現在では、企業・大学・団体向けに多くの講演活動を行っている。
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