小泉改革の痛み、「竹中プラン」でりそな銀行が国有化へ、勢いを失った"家電王国"【ダイヤモンド111周年〜平成前期 4】

記事をクリップ
URLをコピー
記事を印刷
Xでシェア
Facebookでシェア
はてなブックマークでシェア
LINEでシェア
noteでシェア

【91】2003年
銀行を震撼させた「竹中プラン」
りそな銀行が実質国有化へ

2002年9月、公的資金注入を頑強に拒んだ柳澤伯夫・元金融相が更迭され、小泉純一郎政権で起用された経済学者の竹中平蔵が金融相(経済財政相兼務)に就任した。

竹中は就任から1カ月後に「金融再生プログラム」(竹中プラン)を発表する。主要行の不良債権比率を05年3月までに半減させることが眼目で、「不良債権処理を加速させる。競争力の弱い企業には退場してもらい、大銀行といえどもつぶれないとは限らない」「自己資本不足に陥った銀行には公的資金再投入や国有化も辞さない」などと発言し、銀行界を震撼させた。

特に「国有化」というキーワードに大手銀行は激しく反発した。それに対して竹中は、03年1月25日号のインタビューで「(銀行国有化の可能性は)想定していないし、そもそも国有化の意味がよく分からない」と批判を煙に巻くような回答をしつつも、改革への強い意志を表明している。

2003年1月25日号「竹中平蔵・金融相兼経済財政相 不良債権処理にメドをつけ金融の将来像を議論したい」2003年1月25日号「竹中平蔵・金融相兼経済財政相 不良債権処理にメドをつけ金融の将来像を議論したい」
PDFダウンロードページはこちら(有料会員限定)
『――銀行国有化の可能性は。
想定していないし、そもそも国有化の意味がよく分からない。破綻して、一時国有化するという意味であれば、主要行のなかに破綻しそうなところはない。公的資金注入が国有化というのなら、今でもすでに入っている。「国有化」を口にする方がたに対しては、もっと責任ある議論をしてほしい。
――不良債権処理を厳格化するとデフレを加速させるという声は根強い。
そういう議論からは一日も早く卒業しなければならない。治療の瞬間に痛みがあるからといって、放置するのが日本経済のためにいいのか。昨年9月まで、政府は不良債権処理が遅れているという非難を受けていた。ところが、再生プログラムの作成に着手すると、今度は不良債権処理を加速させるべきではないという意見が強くなる。これでは、改革は前に進まない。
今回、政府は不良債権処理と表裏一体の関係にある「産業再生」のため、新たに機構を設置する。補正予算編成や先行減税など施策を総動員して取り組んでいくつもりである。
――金融再生プログラム後の金融のあるべき姿をどう考えるか。
再生プログラムは、いわば宿題の積み残し。宿題を終えるにはあと2年半かかるが、この3月には一定の方向性を出し、4月以降は、金融の未来像がどうあるべきかということを、大きな政策テーマとして掲げていきたい。
10年前には世界の銀行のトップテンに日本の銀行がいくつか顔を出していたが、(不良債権処理という)宿題に汲々とする間に大差がつき、今ではトップファイブに一行残るかどうかも怪しい。
その意味でも3月期決算には注目している。決算は単に数字を示すだけのものではない。その数字に基づいてどのような経営を行うかという意思表示の場でもある。将来のあるべき姿を描く戦略と、それを構築するガバナンス能力が本当に銀行にあるのか。その点が決算では厳しく問われる』

竹中が「注目している」と語った03年3月期の銀行決算。大和銀行とあさひ銀行の経営統合で"弱者連合"と評されていたりそな銀行が巨額赤字を計上し、5月に2兆円規模の公的資金注入が決まる。実質国有化だった。

"りそなショック"は、他の銀行に不良債権処理を加速させ、財務の健全化を促す強力なメッセージとなった。05年には経営危機にあったUFJグループが三菱東京フィナンシャル・グループ傘下に入り、3メガバンク体制に集約された。大手銀行は大規模増資を行って自己資本比率を改善させるとともに、不良債権処理を加速。不良債権残高は02年3月期の268兆円から04月3期には136兆円へと着実に減少した。大きすぎてつぶせない"ゾンビ企業"と呼ばれ、先送りの象徴だったダイエーをはじめ、カネボウ、大京、兼松、熊谷組など過剰債務企業の処理にも軒並みメドをつけたのである。

記事一覧

欧州戦争で株暴騰、化学・海運・造船...軍需で儲けた会社評、「渋沢に盲従」を批判、物価高騰と米騒動【ダイヤモンド111周年〜大正期 1】

2024年7月2日

111年111本 厳選記事でたどる「激動の日本経済史」記事本文PDFダウンロード

2024年7月2日

関東大震災と戦後不況、武藤山治・藤山雷太・松永安左エ門...論客経営者が続々、東京市電に民営化を進言【ダイヤモンド111周年〜大正期 2】

2024年7月9日

高橋是清が鎮めた金融恐慌、井上準之助が誌上で論じた金解禁、相次ぐテロ事件と軍国化への道【ダイヤモンド111周年〜戦前・戦中期 1】

2024年7月16日

二・二六事件の戒厳令下で編集作業、日中戦争の勃発で統制経済体制に突入、小林一三の日比谷大劇場街化計画【ダイヤモンド111周年〜戦前・戦中期 2】

2024年7月23日

戦時下の翼賛体制と言論弾圧、人造石油への期待、ロボット飛行機の荒唐無稽...空襲で休刊へ【ダイヤモンド111周年〜戦前・戦中期 3】

2024年7月30日

終戦で誓った平和と日本再生、渋沢蔵相の手腕を辛辣批判、超インフレを収束させた"劇薬"ドッジ・ライン【ダイヤモンド111周年〜戦後復興期 1】

2024年8月6日

朝鮮戦争で特需到来、日本航空の育成を誌面で主張、ホンダ、ソニー..."戦後派"企業の活躍【ダイヤモンド111周年〜戦後復興期 2】

2024年8月13日

家電三種の神器、国民車構想、為替・貿易自由化の波...「もはや戦後ではない」経済成長の始まり【ダイヤモンド111周年〜高度成長期 1】

2024年8月20日

東京五輪の前後で景気が激変、「所得倍増計画」の功罪、ケネディ米大統領暗殺の影響は?【ダイヤモンド111周年〜高度成長期 2】

2024年8月27日

サントリーと宝酒造が"2弱"のビール戦争、新日本製鉄誕生、セブン参入以前のコンビニ事情【ダイヤモンド111周年〜高度成長期 3】

2024年9月3日

1ドル360円の終わり、日本列島改造論、石油ショック、三菱も狙っていたディズニーランド誘致【ダイヤモンド111周年〜昭和後期 1】

2024年9月10日

ロッキード事件の闇、松下電器のトップ交代、深刻化する"サラ金"問題、火花散る日米経済戦争【ダイヤモンド111周年〜昭和後期 2】

2024年9月17日

「土光臨調」の行政改革と民営化への道筋、トヨタの"工販合併"、日米スパコン摩擦【ダイヤモンド111周年〜昭和後期 3】

2024年9月24日

バブルへの入り口「プラザ合意」、男女雇用機会均等法、究極のカネ余りと日本企業の"米国買い"【ダイヤモンド111周年〜昭和後期 4】

2024年10月1日

バブルの絶頂と崩壊で平成が幕開け、株価下落で証券会社に不正横行、先見えぬ"新型不況"に突入【ダイヤモンド111周年〜平成前期 1】

2024年10月8日

阪神・淡路大震災の衝撃、先送りされた住専問題、価格破壊とデフレの始まり【ダイヤモンド111周年〜平成前期 2】

2024年10月15日

山一証券の破綻、大蔵省ノーパンしゃぶしゃぶ事件、そごう倒産、ビットバレーとネット人脈【ダイヤモンド111周年〜平成前期 3】

2024年10月22日

小泉改革の痛み、「竹中プラン」でりそな銀行が国有化へ、勢いを失った"家電王国"【ダイヤモンド111周年〜平成前期 4】

2024年10月29日

増える非正規雇用、リストラ父さんと氷河期フリーター息子、ハゲタカの日本買い、忍び寄るサブプライム危機【ダイヤモンド111周年〜平成前期 5】

2024年11月5日

トヨタも大赤字のリーマンショック、民主党政権誕生、はやぶさ帰還で宇宙ブーム、そして東日本大震災【ダイヤモンド111周年〜平成後期-令和 1】

2024年11月12日

ものづくり日本を支配するアップル経済圏、日銀の異次元緩和、自治体消滅・人口減少ショック、東芝不正会計【ダイヤモンド111周年〜平成後期-令和 2】

2024年11月19日

マイナス金利という奇策、ブラック企業と働き方改革、堕ちた日産のカリスマ、「サブスク元年」で変わるビジネス【ダイヤモンド111周年〜平成後期-令和 3】

2024年11月26日

新型コロナによる"7割経済"、「脱炭素」という踏み絵、物流危機への備え、半導体と電池の地政学的争奪戦【ダイヤモンド111周年〜平成後期-令和 4】

2024年12月3日

おすすめの会員限定記事

あなたにおすすめ

特集

アクセスランキング

  • 最新
  • 昨日
  • 週間
  • 会員

最新記事

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /