経済学者ハイエクの慧眼に学ぶ、デジタル通貨の意外な役割とは?

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オーストリアの経済学者フリードリヒ・ハイエク1974年にノーベル経済学賞を受賞したオーストリアの経済学者、フリードリヒ・ハイエク Photo:Laurent MAOUS/gettyimages

「もっと安価な貨幣をもっと大量にという圧力はつねに存在している政治的力であり(略)金融当局はそれに抵抗することがまったくできなかった」「政府が提供する貨幣を使い続けるほか選択肢がないという状況においては、政府がさらに信頼するに値する存在になるという望みはまったくない」

これはフリードリヒ・ハイエクが1974年にノーベル経済学賞を受賞した翌年に著した『通貨の選択』(『貨幣論集』収録)における記述である。45年も前の論考だが、現在の世界経済への示唆を感じた人も多いのではないか。

ハイエクはこうも言っている。「貨幣というものは、たしかに政治家やあるいは経済学者の偶然のご都合主義に委ねるにはあまりに危険な道具なのである」。政府が貨幣発行権を独占するシステムは、本質的に通貨の堕落を招いてしまうと彼は懸念した。

現在のトルコでまさにその問題が噴出している。同国の中央銀行はレジェップ・タイップ・エルドアン大統領の指示通りに動いてきたが、ついに破綻し始めている。紙幣流通残高は7月に前年同月比プラス76%を記録した。不安を感じて銀行預金を現金に変える国民が急増したためだ。トルコリラ札を抱え続けていては危険だと考える人も多く、それでドルや金を買う動きが強まっている。

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