まさに我が国において、例えば(公財)麻薬・覚せい剤乱防止センターが主導して展開してきた活動の原点が、ここにあります。だからまた、我々が(一社) 国際麻薬情報フォーラムを設立した理由もそこにあります。正確な事実と検証されたデータに基づいて、情報を発信するために。
私が麻薬・覚せい剤乱用防止センター理事長に選任されてすぐ後、その広報誌の巻頭随想に寄稿しました。「岐路に立つとき」と題し、記憶しておかなければならないことがあるとして、次の旨のことを特記しました。
かつて、薬物乱用防止の標語は、不幸にして薬物乱用を始めてしまった者たちへ向けてのものばかりであったところ、初めて、薬物に手を染めていない方々を対象にする標語が創られました。それこそが薬物乱用は「ダメ。ゼッタイ。」だったのです。
お母さんが子どもに、「ダメよ。そんなことをしては」といい、子どもがそれに応えるといった、愛情のこもった親子の会話のように、と創始者たちが考えた記録が残っています。「覚せい剤やめますか。それとも人間やめますか。」といった昔の標語の延長ではなく、全く新しい発想からでした。
「ダメ。ゼッタイ。」という標語は、記録に残っているとおり、依存者に対しての呼びかけではなくて、始めていない者たちへの呼びかけであったという事実は、記憶しておく必要があります。