小池 真理子:著
「律子 慕情」 集英社,1998
☆☆
オレが12年前に、買うか買わないか迷っていた本。
なぜ、この本に惹かれていたのか。
それは、当時勤めていた職場に、"律子"さんという人がいたからである。
その人は、オレより二回りも年上だったのだが、なぜか惚れてしまった。
オレの熟女好きは筋金入りか。orz
そんなわけで、同じ名前の主人公がでているこの本に、惹かれるものがあったのだ。
でも、結局は買わなかったが。
照れくさくてね。
12年後になって、BOOK OFFの105円の棚にあったのを見つけたとき、なんとも言えない懐かしい気持ちになったので、買った。
舞台は昭和。東京五輪の辺りからはじまる、一人の少女の物語。
律子には不思議な力があった。死者が見えるのだ。
否、死者の"気持ち"が見える、と言ったほうがいいのかも。
その人が、生前恋焦がれていた人のもとに現れる。その時の情景が良い。
霊とはいっても、おどろおどろしい描かれ方はしていない。
本当にその人のことを想っていたのだということが感じられる、"優しさ"が伝わってくる。
彼らは、自分の死を"受け入れている"から、そこに"恨み"や、"無念"といったもの、暗いものがない。
著者の小池真理子が、あとがきに書いている。
これは律子さんの持っている特殊な能力をテーマにした物語ではない。死というものがどこかで現世とつながっていて、その連鎖する時間の果てしない流れの中で、人は悲しんだり、悩んだり、迷ったりしながらも、恋をし、愛し、夢を見続ける、そして、それぞれの命を育みつつ、自らもまた死に向かって静かに泳いでいるのだ・・・・・・そんなことを書いてみたかった。(p252)
優しさが溢れている物語。オレは、特に、二話目の「猫橋」と、三話目の「花車」が好き。
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