クレジット
翻訳責任者: Tetsu1 Tetsu1
翻訳年: 2024
著作権者: Logarithmika Logarithmika
原題: Misdirection
作成年: 2020
初訳時参照リビジョン: 26
元記事リンク: https://scp-wiki.wikidot.com/scp-5317
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空想科学部門通達
最近の進展により、SCP-5317の調査と研究は空想科学部門に移管されました。以下の文書は異常領域部門による最新リビジョンに対応しており、更新版の準備ができるまで参考として維持されます。
— ピエール・メナール、空想科学部門 部門長
特別収容プロトコル: SCP-5317の収容・研究任務に割り当てられた職員は、反ミーム効果を中和するため定期的にクラスW記憶補強剤が投与されます。SCP-5317の周囲には、直径15kmの除外区域が設定されます。ソーシャルメディア及び公共メディアによるSCP-5317を含む可能性のあるアタカマ砂漠の画像は検閲されます。SCP-5317は部分的に自己収容状態にあり、したがってこれ以上の方策は必要ありません。
重要通知: メナール博士の命令により、SCP-5317への更なる遠征は予定されていません。
説明: SCP-5317はチリ、アタカマ砂漠に位置する塔で、最も近い人口密集地であるコピアポから約60km離れています。SCP-5317の直接的な観察には軽度の認識災害効果があり、観察者は、そこにいるべきでなく、最上階に到達すると「何か恐ろしいことが起こる」と確信します。更に反ミーム効果が存在し、視線を外すとSCP-5317の記憶が全て消去されます。
SCP-5317は7階層からなり、非常に多様で時代の無作為な建築様式を呈しています。ある階から次の階へと繋がる各階段の入口は複数の機構(異常なものも非異常なものも含む)により封印されていたようですが、これらの封印のほとんどは過去のある時点で破壊されているようです。この理由は不明です。
既知の要注意団体と関連があると思われる複数の物体がSCP-5317への遠征中に発見されています。これらの物体の年代には一貫性がなく、これらの要注意団体と、この区域の現在または以前の居住者との繋がりは確認されていません。
補遺5317-1: 遠征ログ
初期有人遠征ビデオログ転写
日付: 2007年01月23日
遠征人員: D-11424、探査スペシャリスト
ミッション指示者: ロックハート博士、異常領域部門、南アメリカ支部
[D-11424はヘルメットに取り付けられたカメラの電源を付けてそれに向かい、嘲るようなジェスチャーで挨拶してからヘルメットをかぶる。]
D-11424: ほんとにこれは例の芸術家気取りの変人どもがあんたらにちょっかいかけるために暖めてきた計画じゃあないのか? 要は、情報提供者はそいつらから抜けてきたやつじゃないのか?
ロックハート: 信じてください、これはまだ検討中の可能性なのです。とはいえちょっかいをかけるだけにしては大掛かりすぎるように見えますが。それに[編集済]も彼らに疑いをかけるような理由を提示していません。
D-11424: ま、もし俺がここで死んで死体がおかしなダダイストプロジェクトの一部になるようなことがあったら、その脳たりんどもにこういうジョークは全くもってクールじゃなかった、って伝えといてくれるか?
ロックハート: [わずかに笑って] 記録しました。
[SCP-5317が取り付けられたカメラの視界に入る。この塔の外観はほぼ真っ黒に見え、棘のような彫刻を除いて装飾は存在しない。]
D-11424: クソ、こいつはマジで不吉に見える。マジでここにいない方がいいって感じがする。ホントに中に何があるか知る必要なんてあんのか、博士?
ロックハート: 残念ながら。11424、記憶補強剤を飲んでください。見逃すものがあってほしくないのです。
[D-11424はクラスW記憶補強剤を摂取し、塔の入口に進む。扉は重い鈍器によって破壊されているように見える]
D-11424: ドアに着いた。この辺のドアはまるで…… 巨大な甲虫か何かでできてるみたいだ。キチン質、で合ってたかな? なんか反吐が出そうだ。それに、誰か前にここに来たみたいだ。甲虫が大っ嫌いな誰か…… 何だこりゃ?
[D-11424は部分的に焼けた筆記ノートを拾い上げ、その筆跡は[編集済]と一致している。D-11424はページをめくり、カメラは付近の地図のスケッチと、ヒガンバナに似た花を拘束する黒く棘のついた蔓のようなものの絵を一瞬映す。絵の下には"ひきかえせTURN BACK]"という文字が見える。
SCP-5317の外で発見された絵のデジタル復元。
D-11424: 博士、本当のマジであいつらが馬鹿にしてきてるわけじゃないのか? 今すぐ引き返した方がいいと思う、俺は例のアーティストどものことは全く信用してないんだ。きっと俺の血をインクか何かにでもしたいんだろ。
ロックハート: 扉の付近で異常活動の兆候はないので、恐らく入っても完全に安全でしょう。
D-11424: "恐らく"?
ロックハート: 恐らく。どうか、中に入ってください。何か問題があれば回収します。
D-11424: [ため息をついてから建物に入る] うぅ、こりゃひでぇ。完全に触手みてぇな…… 肉質で、腐ってるので埋まってる。全部死んでる、っぽいけど、賭けてみようとは思わん。ドアを壊したやつは甲虫と同じくらいイカのファンみてぇだ。サンプルを採ろうか?
ロックハート: そうしてください。他に興味深いものがないかも確認してください。我々より前にここに入った者の書き込みなどの痕跡、このアノマリーの理解に役立ちそうなものなど。
[D-11424は触手を拾い上げてサンプルを回収し、ポケットに入れる。後の分析で、DNAは人の基準に一致し、触手には未知の形態の麻痺毒が含まれていることが判明した。全ての組織サンプルは100%の細胞死を示した。]
D-11424: こいつらはこれ以上中に人が入らないように作られたんだと思う。これ以上面白そうなものは何も…… ほら。どうかこれで切り上げてもう止めだって言ってくれ— 何言ってんだ俺、なこと言うわけねぇよな、博士。
[D-11424が小さな光沢のある物体を蹴ると、チリチリと音が鳴る。D-11424はそれを拾う]
D-11424: これは…… 歯か? なるほどね、ここは肉マニアにとってのディスコみたいな場所ってことか。当然機械野郎どもがここに来て大騒ぎを静めてくれるんだろうな。
この時点で、D-11424との通信は一時的に失われました。数分後、カメラ映像は再開しましたが、鮮明度は低下していました。これは部屋の組成が原因と思われます。
D-11424: [わずかに歪んで] … えるか? 博士、いるか?
[ビデオ映像には、通信の質低下の原因と思われる金属のプレートで覆われた部屋が映っている。金属は深刻に腐食しており、大量の機械式オートマトンと思われるものの残骸が見える。]
ロックハート: 聞こえています、11424。数分ほど通信が失われていたようです。侵害されていないことの証明のために認証パスフレーズをお願いできますか? それと、今何が見えていますか?
D-11424: [無関係な情報は編集済]。今は、全体が金属頭に建てられたっぽい部屋にいる。触手の部屋からトンズラこかずに自分からそれをぶっ壊す唯一の人種だ。でもそれなら何でここにこれを造った? まるであいつらが…… サーキック野郎どもが何かしら正しかったことに気付いて、自分がめちゃくちゃにしたもんを直そうと何かかき集めたみたいだ。 [D-11424は一瞬沈黙し、部屋を見回す] あれは指令室みたいなもんか? 多分、部屋の装飾にリサイクルされる前はこの辺のロボットは全部ここでコントロールされてたんだ。
[カメラは部屋の隅の酷く損傷した機械に焦点を当てる。D-11424の装備の自動センサーが大きなビープ音を鳴らす。]
ロックハート: 11424、何をするにせよ、その機械には近づかないでください。センサーは何かしらのバイオハザード、恐らくSCP-217があると知らせています。あなたが帰還したら、念のため隔離しなければならないかもしれません。
D-11424: おや。そうか。クソ。 [沈黙] まあ、もし俺がもうやられちまってんなら、次の階に行っても失うものは何もなさそうだ。それがあんたの言おうとしてたことだろ、違うか?
ロックハート: [深いため息] 進んでください、11424。
SCP-5317の3階で発見された星座の画像。
D-11424: ワオ、この階は展望台みてぇだ。ホントに星が見える。ロボット中毒の狂信者はこんなの作りそうにないな。
ロックハート: 実は、信じがたいかもしれませんが、壊れた神の教会との関係はここ数年で大きく改善しました。 [沈黙] 意味のある視覚映像を受信できていません。この階の探索時は夜間強化モードをオンにしてもらえると助かるのですが。
[D-11424のシルエットがカメラを調整しているのが見える。強化モードが起動すると、床、壁、天井に複数の星系が描かれているのが見え、その中には既知の星座と一致するものもある。数歩歩いた後、D-11424は特定の星座を見ると顔をしかめ、カメラが揺れる。]
D-11424: んだよ!
ロックハート: 大丈夫ですか、11424? どうしましたか?
D-11424: 誰かが俺の脳を…… 押し込んだように感じた。またあそこを見る気はないけど、あんたならこれが何かわかるんじゃないか、博士?
[D-11424は壁の一点にカメラを向け、そこには未知の星座の一つがある。一瞬焦点が合っていない映像が映った後、ビデオ映像に組み込まれたSCRAMBLEフィルターによって自動的に検閲される。星座の上から暗赤色の物質で文字が書かれている。]
ロックハート: おぉ。おーぅ。SCRAMBLEフィルターが強力なミーム殺害エージェントとしてマークしました。誰がそれを破壊したにせよ、恐らくこのおかげであなたの命は無事でした、11424。文字を調べられるようカメラを近付けてもらえますか? それと、SCRAMBLEゴーグルを着けるのもいいと思います。他にも周りにミーメティックハザードがあるかもしれませんし、そう何回もあなたの運に賭けることはできません。
D-11424: 俺は奇妙なファシスト組織で働いてて、そこの仕事じゃあ週一くらいのペースで触手オウムモンスターから逃げなきゃならねぇ。"運"なんて言葉俺は使わねぇよ、博士。まあこれは認めるよ。俺がここで出会った奴の半分は最終的にオウムの餌になっちまった。Dクラスに限った話でもない。 [D-11424は少し沈黙して装備を調整し、図像に近付く] 俺からしたらチンプンカンプンだが、博士。
ロックハート: オルトサン。つまるところ"引き返せ"と書いてあります。ならば、これは血で書かれているのでしょうか。周りに他に文字は見えますか?
D-11424: 今この瞬間はこの血文字の方があんたよりも信頼できると考えたい気分だが…… でもあんたらのいう"契約終了"の概念は多分どこかの機動部隊か何かにハントすることも含むんだよな、なら…… [D-11424はこの階を歩き回り、ビデオ映像は壁のいくつかの部分をミーム殺害エージェントとマークする。それらは全て様々なオルトサンのメッセージにより検閲されている] 当ててみようか。こいつらはどれも"立ち去れ"かそれっぽいこと書いてあるだろ?
ロックハート: それで正しいでしょう。SCRAMBLE装置がなければ、検閲されていたとしても、これだけのミーム殺害エージェントを一度に浴びては誰も生きられないでしょう。次の階へ進んだ方が良さそうですかね? 映像には既に階段へのドアが映っています。これも壊れているようですが…… 4階に行けるでしょう。
D-11424: わかった。おい博士、場違いなものがある。これは…… 紙?
[カメラ映像は床を向き、大量の紙が散らばっているのが見える。いくつかの紙は基本的な折り紙の形状に折り畳まれているようであり、そのほとんどは焦げているか、鋭利な道具で切られている。]
ロックハート: 折り紙でできた守護者は第二ハイトス教会の聖地によく見られます。しかしわかりません、サーキックとの共通点は何でしょうか? あるいはメカニトとの? ここまでの労力がかかっていなかったら、あなたの"財団を混乱させるための芸術展"説に完全に同意するでしょう。
D-11424: 罠かもしれないのか?
ロックハート: 罠かもしれません。探査を中止できるか上司に確認してみます。これはもはや機動部隊の仕事になりかけています。
D-11424: やっとかよ。
この時点で、ロックハート博士がSCP-5317主任研究員のラトーレ博士に連絡を取るためにD-11424は待機させられました。D-11424のこれまでの現場経験、装備の適切性を理由に、ミッションを終了する提案は却下されました。
D-11424: ふいーっ、少なくとも半分は上っただろ。これ教会みたいに見えないか、博士?
[D-11424の装備は次の階に入った際にアキヴァ放射の急増を検出する。床は大理石でできており、カトリック大聖堂に類似した外見の建築様式となっていて、壁と床にはキリスト教、イスラム教、ユダヤ教に関連する木製の図像が存在する。聖水と思われる小さな噴水のついた柱が、境界線イニシアチブの考案した悪魔祓いの儀式で用いられるのと似た配置で並んでいる。]
ロックハート: あなたは信心深かったりしますか、11424? あなたが部屋に入ったとき、アキヴァ放射、つまり"信仰"の急増を検出しました。
D-11424: それは個人的な質問じゃなくて、俺がセンサーに干渉してるわけじゃないって確認したいってことでいいかな。改めて言うが、もし神がいるなら多分サイト-77かどっかが箱に捕まえてんだろ、知らんけど。そうじゃなくても、多分そうしようとはしただろうな。
ロックハート: 弁護しておくと、神を箱に閉じ込めておく方が、戦術核で撃ち落とすよりは恐らく安全でしょう。とはいえそれは私のクリアランスを超えており、恐らくSCP-001資料か何かでしょう。
[カメラは部屋の中央にある、巨大な壊れた十字架のようなものに焦点を当てる。D-11424は調査のために近付く]
D-11424: 全部焼き払われてるみたいだな。これはその…… 一般的なクリスチャンのイメージとは違うな? ありゃセミか?
ロックハート: そこが砂漠の中心であることを差し引いても、間違いなくこの土地原産のものではないでしょう。セミを無視すれば、明らかに境界線イニシアチブ流の侵入者対策に見えますが、下の階と同様全て壊されています。このセミたちもそれに何か関係があるのかもしれません。サンプルを採ってください。
D-11424: 採った。今んとこの有力説はどんなだ? "アート釣りカス"案? それとも"何が何だかさっぱりわかりません"案?
ロックハート: それ以外の返答ができたらよかったんですけど。もし注目すべきものが残っていないようでしたら、ラトーレ博士の指示に従い次の部屋に進むことを提案します。
D-11424: あぁ了解、第五階ね。何が見つかるかよーくわかってるぞ。これは楽しくなるな。
ロックハート: 敢えていうなれば、そのような口調は不要です。さて、ちょっと待ってください。別の研究部門から遠征についてメッセージを受け取りました。一瞬で終わります。
SCP-5317の5階の床タイルの一部。
ロックハート: SCRAMBLE装置がまだ機能していることを確認してください。危険なミーム画像があると予想されます。
D-11424: 見ての通り、完璧に俺の皮肉通りになったな。どう見てもあのイカれ共はこの階にいようとしてた、こんな機会をスルーするわけにゃいかなかったからな。
ロックハート: 結構です、11424。何が見えているか報告してください、お願いします。
D-11424: 見ての通り、この階は数字の五にご執心な他のイカれ共が持ってそうなのと同じ美的センスでできてる。柱が5つ、それぞれ目みたいな彫刻がされてる。部屋の真ん中を見てる。それとこのタイルは…… 床の装飾が綺麗なのは認めるけどな。それでも、あのメナールの野郎がラトーレに俺を出すよう説得してくれるのを待ってられないんだが。俺はここにいるべきじゃないって確信してる。
D-11424: ところで、変な名前じゃないか? "ピエール・メナール"。まるでそいつはボ……
[雑音によりD-11424の発言の最後が遮られる。カメラが床に沿ってパンすると、D-11424の説明した5本の柱が見える。床はペンローズ・タイルに酷似した非周期的なタイル貼りとなっている。柱や壁にはヒトデ、手、5回対称のフラクタルを模した意匠が施してある。]
D-11424: この階で対抗策はまだある程度は効いてるように思う。ただこの若干…… 圧力…… が脳内に…… クモがそこを這ってるみたいな。俺の脳内に、5本足のクモが。部屋の真ん中に近付くとひどくなる。
ロックハート: この防護も弱くなっているようです。中央には行けますか? あまりひどくなるようでしたら、ミッションを中止しますので安心してください。
[D-11424はうなり声を上げて返し、部屋の中央に向かって歩く。部屋の中央の上方には次の階へ続く開口部があり、これが唯一の入口のようである。そこから1本のロープがぶら下がっている。]
D-11424: そら、中央だ。見た限り死んでないから、第五のトラップも壊されてるみたいだ。登ってみ— 何だこれ? お前らの記号があるぞ、矢が3本あるやつ。どれ……
[カメラはロープの下端にパンする。ポラロイド写真が貼り付けられており、SCP財団の記章の描かれたピンが付いている。写真は結婚式を写している; 大部分は黒煙のようなものによって遮られているが、新郎と新婦ははっきりと見える。D-11424は写真かピンを取り外そうとするが、失敗する。]
D-11424: 外せねぇな。写真に写ってる写真で満足してもらえるだろ。言っとくと、この圧迫感はこれを見てる間ちょっと軽減する。こいつらは財団の奴らか?
ロックハート: それに関する情報はありません。少なくとも見覚えはないですね。では、次の階へ進…
[電話の音が聞こえる。ロックハート博士が応答すると通信が中断する。]
ロックハート: D-11424、メナール博士が空想科学部門を代表して探査の最終段階に加わるとの連絡を受けました。彼らはSCP-5317について何か関心があるようです。
メナール: 遮って申し訳ありませんが、現在の仮説の確認のために観察が必要なのです。ロックハート博士の指示に従い、次の階に進んでください。
この時点で、ストレージメディアの障害によりビデオログの一部(約5分に相当)が失われました。D-11424が6階に到達した後に、ビデオは再開しました。
D-11424: … "物語パターン"って意味か? 高校の英語の授業で話してた物語とかフィクションとか何かの話みてぇだな。辺鄙なとこにある不気味な尖った塔とは何の関係もねぇけど。
メナール: もっと込み入った話なのです。私たちは毎日、思い出とか、日記とか、更には銀行取引明細書とかでも自分自身に話をします。小説の領域に限られていると思われるメタフィクションのアノマリーも、このような代理を立てて現実に影響を及ぼせます。この世界がフィクションか何かというわけではありませんがね。何が見えますか?
D-11424: まだ蛇の図柄がいっぱい。それと本、めっちゃ焼けてるけど— もはやどれ一つ何の価値もなさそうだ。こいつを見てみよう…… 読める単語はただ、えー、奇跡術? 収容儀式? でもこれじゃ何にもならなさそうだ。別に俺が…… 自然発火したりはしてない。ただ、ここにデカいドアがある。開けてみるか?
メナール: いえ。それは推奨しません。
ロックハート: 11424、ドアに近付いて、ただし開けはしないでください。SCP-5317の性質を断定するにはもっと情報が必要です。
[D-11424は携帯型カント計数機を持って扉に近付く。計測の結果、扉のヒューム値は基準値より1400%高いことが示された。理論上は、基準値のヒトはいかなる有意な方法でもそれに相互作用することはできない。扉は未特定の黒色の物質でできており、表面には棘や蔓のような彫刻が施されている。文字らしきものが扉に書かれているが、前述の彫刻により意図的に隠されているようで判読不可能。]
D-11424: あのアナーティストにそもそも何でこんなところに来ようとしたか訊いたか? ここにこんなものがあるなんて知ってたのか?
メナール: ロックハート博士、アナーティストが財団に寝返ったというのも全体奇妙な話ではありませんか? コンサルタントとして雇う前に[編集済]は調査したんですか? 最新のアートプロジェクトを?
ロックハート: それについてはかなりオープンですよ、実際。"収容のアート"。それで、どうお考えで……?
メナール: その人はSCP-5317を調査したかったんです。これは…… 物語の収容です。物語の手掛かりはすべてそこにあります。この扉の裏に何があるのかは、意図的に、決して我々が知ることはないのです。そしてそれはそのままであらねばなりません。すぐに引き返すべきです。扉の裏にある物語が語られることはあってはなりません。
更なる遠征を派遣する、あるいは7階へのアクセスを試みる計画はありません。
古き物語、多くの者に忘れられし。
肉の神の一欠片、
MEKHANEに仕える二千のオートマタ、
第三ハイトスを食い止める守護者たち、
四つの福音により集められし者たち、
第五に殉ずる星々を見つめる目、
そして六本指の蛇が如き手、
赤きローブの王を封印せんがために皆集められ、
花嫁を引き離し、永久に独り衰えさせる。
彼の信者らは散り、彼の子らは先立ち、
それでも彼は嗤い、封印は破られ、
破られ、
破られ、
破られ、
破られ、
そしてまた破られた。
帰還と、勝利を確信し、彼は宣言した。
"緋色の王の七人の花嫁、七本の槍、七つの門!"
だが黒棘の淑女は賢く、
王を彼自身の物語に封印し、
彼の解放の印は彼の死の印となり、
そうして、手遅れになって、彼は気付いた
七は決して彼のものなどではなかったことに。